「医師がおすすめ」「薬剤師推奨」「専門家監修」。医薬品は専門性の高い商材だけに、こうした肩書で信頼感を出したくなります。しかし、一般向けのOTC医薬品広告で、医師や薬剤師が特定の商品を推薦していると受け取られる表現は使えません。事実として推薦を受けていても同じです。直接の判断軸は、薬機法第66条第2項と医薬品等適正広告基準の「医薬関係者等の推せん」です。一方、「監修」という文字だけで直ちにNGになるわけではありません。監修対象と広告全体の見せ方を分けて考えます。
医師・薬剤師推薦が薬機法上NGになる理由
医薬品等適正広告基準第4の10は、医薬関係者、病院、診療所、薬局などが、医薬品等を指定、公認、推薦、指導、選用している等の広告を禁止しています。
ここで重要なのは、「本当に推薦しているか」だけを見ていない点です。解説でも、医薬関係者による推薦広告は一般消費者の認識に与える影響が大きいため、原則として事実であっても不適当とされています。
さらに薬機法第66条第2項は、医師に限らず「その他の者」が効能・効果等を保証したと誤解されるおそれのある広告も対象にします。
そのため、大学教授、研究者、○○専門家などを登場させる場合も、「医師ではないから大丈夫」とはなりません。専門家の肩書を使って、商品の効き目や安全性を保証する構成にはできません。
事例1|OTC鎮痛薬で「現役医師もおすすめ」は使えない

たとえば、OTC鎮痛薬のLPで、白衣姿の医師とともに、
「頭痛にはこれ。現役医師もおすすめ」
と掲載するケースです。
この表現はNGです。
承認された効能効果の範囲内で「頭痛に」と表現できる医薬品であっても、「医師が特定商品を推薦している」という別の規制がかかります。
「医師本人から推薦コメントをもらった」
「広告出演について正式に契約している」
という事実があっても解決しません。むしろ、医薬品等適正広告基準の解説では、推薦が事実でも原則として不適当という整理です。
修正するときは、医師の肩書を「専門家も注目」などへ弱めるだけではなく、推薦構造そのものを外します。訴求は、承認された効能効果、剤形、服用回数、携帯性など、確認できる商品事実へ戻します。
医師推薦と購入者レビューは別の規制ですが、どちらも第三者の評価を使って商品効果を裏付ける構造になり得ます。口コミ・体験談の判断は「医薬品広告で口コミ・レビューは使える? 」でまとめています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
「医師推奨」の4文字だけを消して、医師の写真やコメントを残しても解決しないことがあります。
白衣、肩書、吹き出し、商品写真、CTAが並べば、「この医師がこの薬を選んでいる」という印象は残ります。
見るべきなのはNGワードではありません。誰の権威を使って、何を消費者へ伝えている広告なのか。ここまで分解すると、修正すべき場所が見えてきます。
事例2|「医師100人中92%が推奨」は調査が事実でもNG


仮に医師100人へアンケートを行い、92人が「このOTC医薬品をすすめたい」と回答したとします。
それでも、
「医師92%推奨」
という広告はNGです。
「きちんと調査をしたから表示できる」という景品表示法上の根拠論だけでは解決しません。医薬品等適正広告基準では、医薬関係者による推薦広告そのものが規制対象だからです。
一方、景品表示法では「医師の○%が推奨」といった高評価%表示について、調査対象者が適切に選定されているか、調査が公平な方法で実施されているか、表示内容と調査結果が適切に対応しているかなどを確認する必要があります。
つまり、薬機法では「医薬品を医師が推薦している広告であること」、景品表示法では「その割合表示に合理的根拠があるか」という別々の判断軸があります。
なお、「○%が推奨」「○%が評価」といった割合表示では、誰に何を聞き、どの回答を集計したのかが表示と一致しているかを確認します。
事例3|「薬剤師監修」は監修対象を商品推薦から切り離せるか


OTC医薬品のECページに「薬剤師監修」と表示し、その薬剤師が、
「この薬は効きます」
「私ならこの商品を選びます」
とコメントしているケースはNGです。
名称を「推薦」ではなく「監修」にしても、内容は実質的に商品推薦・効能保証だからです。
一方、「監修」という表示そのものを一律に禁止する規定ではありません。ただし、薬剤師が用法用量、使用上の注意などの記事情報を確認したことを示す場合でも、特定商品の推薦・選用や効能効果の保証と受け取られないよう、監修対象、コメント内容、顔写真・肩書、商品画像との位置関係などを広告全体で確認する必要があります。
これは「監修ならOK」という意味ではありません。医薬品等適正広告基準と薬機法第66条第2項から、推薦・保証に当たる広告になっていないかを見るという実務上の整理です。
商品LPでは、監修者欄の位置、顔写真、肩書、見出し、バッジ、CTAまで確認します。医薬品LPの薬機法チェックも合わせて確認しておくと判断しやすくなります。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
「監修者を入れたい」と言われたら、肩書より先に役割を決めます。
何を監修したのか。商品そのものを評価したのか、それとも記事の医学・薬学情報を確認しただけなのか。
ここを企画段階で切り分けておけば、制作後に「推薦に見えるので医師部分を全部外してください」という手戻りを減らせます。最後の広告審査より前に設計しておく論点です。
実務では「誰が・何を・どこまで言うか」を先に決める
最初に商品区分を確認します。医療用医薬品なら、一般向け広告の制限が先です。OTC医薬品なら、承認された効能効果の範囲と、医薬関係者による推薦・保証表現を別々に確認します。基本ルールは医薬品広告と薬機法で確認できます。
次に、専門家の役割を商品推薦ではなく「情報の確認」に限定できるかを検討します。
監修対象を明確にする。専門家コメントは適正使用に必要な情報にとどめる。商品選択や効能保証へつなげない。
そして、コピーだけでなく、写真、白衣、肩書、見出し、推薦風のバッジ、ランキング、CTAまで含めて広告全体を確認します。
最後に、承認書・添付文書等の確認資料、監修範囲、専門家コメントの原稿、修正理由を残しておきます。社内で同じ判断を再現できる状態を作る場合は、医薬品広告のチェック体制の作り方につなげると運用しやすくなります。
まとめ
一般向けのOTC医薬品広告で「医師推奨」「薬剤師おすすめ」は使えません。実際に推薦を受けていてもNGです。
「専門家監修」は一律NGではありません。しかし、商品を推薦・選用している、または効能効果を保証していると受け取られる見せ方なら使えません。
修正の中心は、肩書の言い換えではありません。専門家の役割を商品評価から情報監修へ切り分け、訴求を承認範囲内の効能効果や商品事実へ戻すことです。
医薬品広告の表現について体系的に理解したい方は「医薬品広告で使える表現・使えない表現|効果効能・口コミ・比較・医師推薦の注意点 」もご覧ください。
広告規制を守るだけでなく、商品の価値や訴求力を保ちながら表現を組み立てる考え方については、「![]()
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参考情報・引用元
本記事は、関連法規、厚労省の公示・公的文書、自治体の広告講習会資料、業界団体自主規格、消費者庁発表資料等を参考に、一般用医薬品(OTC)プロモーションにおける医療従事者や専門家の推奨・意見、監修表示、効果効能の保証的訴求、満足度等の数値表示について視点を整理しています。
それぞれの販促表現の適否は、専門資格の種類・関与形式、コメント内容、監修の範囲、肖像・白衣・肩書・バッジ等の視覚的効果、製品画像や購買CTAとの近接度、広告全体から受ける総合的印象等に応じ判断が分かれるため、必要に応じて最新の行政公表資料や専門的見解をご確認ください。
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年09月27日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日薬生発0929第4号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179264.pdf(参照日:2026年09月27日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日薬生監麻発0929第5号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf(参照日:2026年09月27日)
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html(参照日:2026年09月27日)
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- 厚生労働省「インターネットによる医薬品等の広告の該当性に関する質疑応答集(Q&A)について」(平成26年5月22日薬食監麻発0522第9号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0180&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年09月27日)
- 東京都保健医療局「医薬品等広告講習会 資料」東京都保健医療局. https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/iyaku/sonota/koukoku/siryou(参照日:2026年09月27日)
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- 日本一般用医薬品連合会「『OTC医薬品等の適正広告ガイドライン2026年版』発刊のお知らせと冊子のお申込み」日本一般用医薬品連合会. https://www.jfsmi.jp/ad_guideline/(参照日:2026年09月27日)
- 日本一般用医薬品連合会「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン」日本一般用医薬品連合会. https://www.jfsmi.jp/activity/advertisement/guideline.html(参照日:2026年09月27日)
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134(参照日:2026年09月27日)
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