「医薬品なら効能効果が承認されているので、使用前・使用後の写真を見せてもよいのでは?」。広告制作では迷いやすいところです。
結論からいうと、医薬品広告のビフォーアフター画像は一律禁止ではありません。ただし、承認外の効能効果、効果が確実に得られること、効くまでの時間、安全性を保証する見せ方はNGです。 厚生労働省の医薬品等適正広告基準の解説でも、使用前・使用後を問わず、写真等によってこれらを想起させる表現は認められないとされています。
この記事では、主に要指導医薬品・一般用医薬品など、一般消費者向け広告を想定して判断方法を整理します。
医薬品のビフォーアフター画像は「一律NG」ではない
まず、商品区分を分けて考えます。
要指導医薬品・一般用医薬品では、ビフォーアフターという形式そのものが一律禁止されているわけではありません。見るべきなのは、画像全体から消費者が何を受け取るかです。
一方、医療用医薬品は、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告自体を行ってはならないと医薬品等適正広告基準で定められています。したがって、一般消費者向けの医療用医薬品広告については「ビフォーアフターならどこまで可能か」という問題の前に、広告対象そのものを確認する必要があります。
一般用医薬品の広告表現全体については、医薬品広告で使える表現・使えない表現もあわせて確認してください。
ビフォーアフター画像がNGになる3つの理由
効果が必ず出るように見せる画像はNG
薬機法66条は、医薬品等の効能・効果について、明示だけでなく暗示による虚偽・誇大広告も禁止しています。また、効能効果や安全性について保証したと誤解される広告も規制対象です。
医薬品等適正広告基準の解説では、図面や写真について、使用前・使用後を問わず、
「承認等外の効能効果等を想起させるもの」
「効果発現までの時間・効果持続時間の保証となるもの」
「安全性の保証表現となるもの」
は認められないと整理されています。
つまり、「Beforeでは症状がある」「Afterでは症状が完全に消えている」という写真を並べれば、文字で「必ず治ります」と書かなくても、使えばこの結果になるという保証を画像で伝えていると判断される問題があります。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
制作現場で見落としやすいのは、コピーだけ直して画像を残してしまうケースです。「治る」「改善する」を削除しても、ファーストビューで症状が消えるアニメーションを見せれば、受け手が感じる広告効果はほとんど変わりません。LP完成後に直すとストーリー自体を作り直すことになるため、画像ラフや絵コンテの段階から薬事チェックを入れる方が手戻りを減らせます。実際、私の過去の発信でも、制作後ではなくプロセスの早い段階で薬機法を組み込む重要性を扱っています。
事例1:外用薬で「30分後には痛みゼロ」と見せる


たとえば、OTCの外用薬のSNS動画で、
「使用前:膝を押さえて苦しそうな人物」
「30分後:笑顔で階段を駆け上がる人物」
「痛みゼロ!」
と見せるケースです。
この見せ方はNGです。
まず「痛みゼロ」という表現と映像が、効能効果が確実に得られることを保証しています。さらに「30分後」という表示によって、効果発現までの時間まで保証しています。
速効性について、医薬品等適正広告基準は「すぐ効く」等を原則として認めていません。一部の医薬品では、承認内容の範囲内で医学・薬学上十分に立証されている場合に例外がありますが、その場合でも、作用時間を明示・暗示する使用前・使用後表現は除外されています。
速効性を訴求したい場合は、医薬品広告で「すぐ効く」「即効」は使える?で、品目ごとの条件を先に確認します。
修正するなら、「30分後の改善結果」を見せるのではなく、承認された効能効果を正確に表示したうえで、塗布する場面や剤形、使用方法などへビジュアルの役割を移します。
事例2:水虫薬で患部が「7日後にきれいになった」と見せる


仮に、水虫薬のLPで患部写真を掲載し、
「使用前:皮むけ・赤みのある足」
「7日後:症状の見えない足」
と並べたとします。
この表現もNGです。
水虫に対する効能が承認されている医薬品だからといって、「7日でこの状態になる」という治療結果まで承認されているわけではありません。
さらに、写真によって一定程度の改善結果が確実に得られるかのように見せれば、効能効果を保証する表現につながるおそれがあります。
「※個人の感想です」「効果には個人差があります」という注釈を付けても、メイン画像から受ける印象が変わらなければ根本的な修正にはなりません。
ビフォーアフターに「7日で治りました」などの体験談を添える場合、画像だけでなく使用体験談による効果保証も別途問題になります。
事例3:「副作用の心配なく治せる」と画像で見せる


仮に、医薬品のバナーで、服用前の不安そうな人物と、服用後に安心して笑っている人物を並べ、
「副作用の心配なし」
「安心して使える」
と表示するケースです。
「副作用の心配なし」は使えません。
医薬品等適正広告基準の解説では、「副作用が少ない」「比較的安心して」「刺激が少ない」など、安全性について誤認させる表現は使用しないこととされています。効能効果だけでなく、安全性を確実なものとして保証する表現も禁止されています。
安全性表現については、医薬品広告で「副作用なし」「安全」は使える?も確認してください。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
薬機法上の判断と媒体考査は分けて考えます。法令上説明できる広告でも、媒体独自の審査基準によって掲載できないことがあります。私も過去の発信で「正しいこと」と「通ること」は別だと整理しています。
特にビフォーアフターは視覚的な訴求が強いため、法令上の限界だけでなく、出稿予定の媒体ルールまで企画時に確認しておく方が実務的です。
薬機法上OKでも景品表示法の確認は必要
ビフォーアフター画像は薬機法だけで判断しません。
景品表示法では、商品の品質や効果等について、実際より著しく優良であると一般消費者に示す表示が禁止されています。また、効果・性能を表示した場合、その表示を裏付ける合理的な根拠を求められることがあります。根拠資料は客観的に実証されたものであり、表示した効果と資料の内容が対応している必要があります。
したがって、承認効能の範囲内であっても、撮影条件、照明、角度、画像加工などによって実際以上の改善結果を見せれば、景品表示法上の問題が別に生じます。
「薬機法上、承認されている効能だから写真も自由に使える」という整理にはなりません。
実務では「結果の写真」から訴求軸を移す
ビフォーアフターが使えないとき、「変化を少し弱くする」「写真を小さくする」だけでは解決しません。
まず、本来伝えたかったことを分解します。
効果を伝えたいのであれば、承認された効能効果の範囲を確認する。速さを伝えたいのであれば、その品目で速効性表現が認められる条件を確認する。安心感を伝えたいのであれば、「安全」と保証するのではなく、用法用量や使用上の注意を正確に伝える設計へ変えます。
ビジュアルも同じです。
症状が消えた結果ではなく、「どこに使用する商品なのか」「どのように使用するのか」「どのような剤形なのか」といった商品事実へ軸を移せます。
LP全体を確認するときは、画像だけでなく、ファーストビュー、キャッチコピー、口コミ、CTAまで含めて見ます。医薬品LPの薬機法チェックも、この確認に使えます。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
ビフォーアフターを削除すると「訴求が弱くなる」と考え、ギリギリまで写真を残そうとするケースがあります。しかし、残すべきなのは写真ではなく、消費者へ伝えたかった価値です。結果保証ができないなら、承認効能、使用場面、剤形、使いやすさなどへ表現を再設計する。NGワードを消す作業ではなく、「何なら伝えられるか」まで考えることが広告制作では重要です。
まとめ
医薬品広告のビフォーアフター画像は、一律NGではありません。
ただし、承認外の効能効果を想起させる画像、効果を保証する画像、効果発現までの時間や持続時間を保証する画像、安全性を保証する画像は使えません。 使用前と使用後を並べていなくても、After画像だけで同じ内容を暗示していれば判断は変わりません。
制作時は、「ビフォーアフターという形式か」ではなく、「この画像を見た消費者は、商品の効果・速さ・安全性について何を確実な事実だと受け取るか」で確認してください。
医薬品広告の表現について体系的に理解したい方は「医薬品広告で使える表現・使えない表現|効果効能・口コミ・比較・医師推薦の注意点 」もご覧ください。
広告規制を守るだけでなく、商品の価値や訴求力を保ちながら表現を組み立てる考え方については、「![]()
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参考情報・引用元
本記事は、関連法令、厚労省の公示・公的文書、PMDA資料、業界団体自主規格、消費者庁発表資料等を参考に、医薬品プロモーションでのビフォーアフター画像、図画・写真を用いた効能の暗示、効果の保証、速効性・作用持続時間、安全性の保証表現、景品表示法が規定する優良誤認および不実証広告規制の観点から整理を試みています。
各々のプロモーション表現の妥当性は、該当商品の区分、個別の承認範囲、効能効果や用法用量、画像が表す変化の程度、時間経過の表示、コピーや補足注意事項の組み合わせ、撮影・画像補正の手法、プロモーション全体が与える総合的な印象等に応じて判断が分かれるため、必要に応じて最新の行政公布資料、承認書、専門機関への確認を行ってください。
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年09月26日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日薬生発0929第4号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179262.pdf(参照日:2026年09月26日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日薬生監麻発0929第5号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf(参照日:2026年09月26日)
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html(参照日:2026年09月26日)
- 厚生省「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日医薬監第148号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb5413&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年09月26日)
- 厚生労働省「インターネットによる医薬品等の広告の該当性に関する質疑応答集(Q&A)について」(平成26年5月22日薬食監麻発0522第9号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0180&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年09月26日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」PMDA. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcSearch/(参照日:2026年09月26日)
- 日本一般用医薬品連合会「『OTC医薬品等の適正広告ガイドライン2026年版』発刊のお知らせと冊子のお申込み」日本一般用医薬品連合会. https://www.jfsmi.jp/ad_guideline/(参照日:2026年09月26日)
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134(参照日:2026年09月26日)
- 消費者庁「表示規制の概要」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/(参照日:2026年09月26日)
- 消費者庁「優良誤認とは」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation(参照日:2026年09月26日)
- 消費者庁「不実証広告規制」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation/not_demonstrated_ad(参照日:2026年09月26日)
- 消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針―不実証広告規制に関する指針―」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_34.pdf(参照日:2026年09月26日)
- 消費者庁「表示に関するQ&A」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/representation/(参照日:2026年09月26日)
- 消費者庁「『不実証広告規制』とは?」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_160801_0001.pdf(参照日:2026年09月26日)
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