スイッチOTCの広告を作っていると、「もともと医療用で使われていた成分なのだから、『処方薬と同じ』と訴求したい」という話が出てきます。
結論から言うと、OTC広告で単に「処方薬と同じ」とだけ表現するのは避ける必要があります。 一方、「医療用医薬品と同じ有効成分配合」「医療用成分を配合しました」といった表現は、対象となるOTC医薬品が所定の条件を満たしていれば使えます。
ポイントは、「医療用との関係を説明すること」と「医療用と同じ効果・性能だと伝えること」を分けることです。
OTC広告で「処方薬と同じ」がNGになる理由
最も直接的に関係するのは薬機法と医薬品等適正広告基準です。
薬機法第66条では、医薬品の効能、効果、性能等について虚偽・誇大な広告を禁止しています。さらに医薬品等適正広告基準では、効能効果や安全性を保証するような表現、他社製品との不適切な比較広告などが制限されています。
そのため、「医療用と同じ有効成分」という事実から、
「だから処方薬と同じように効く」
「病院の薬と同じ効果」
「処方薬と同じ強さ」
まで話を広げることはできません。
日本一般用医薬品連合会の通知でも、医療用医薬品との関係を説明する場合、あくまで有効成分を配合している事実を超える意味を誤認させないこと、効能効果等の保証表現に抵触しないことが求められています。
景品表示法も別の判断軸です。「処方薬と同じ」という表示によって商品の品質・内容を実際より著しく優良に見せれば、優良誤認表示の問題になります。薬機法上の表現範囲に収めることと、表示全体が実態を超えて優位性を示していないことの両方を確認します。
事例1|「処方薬と同じ効き目をドラッグストアで」は使えない

たとえば、スイッチOTCのLPで、
「処方薬と同じ効き目を、ドラッグストアで。」
と大きく表示したとします。
この表現は避ける必要があります。「処方薬と同じ効き目」とすると、有効成分が同じという事実を超えて、医療用医薬品と効果まで同等であると受け取られるおそれがあります。広告では、OTCとして承認された効能効果・用法用量の範囲を基準に表現します。
訴求を残すのであれば、条件を満たす製品について「医療用医薬品と同じ有効成分○○を配合」と、同じ対象を有効成分へ限定します。そのうえで、商品の効能効果はOTCとして承認された範囲を別に伝えます。
なお、医療用医薬品と有効成分が同じでも、OTCとして広告できる効能効果・用法用量はOTC側の承認内容から確認します。添付文書と広告表現の読み分けは「添付文書に書いてあれば広告で使える?医薬品広告で効能効果・用法用量・使用上の注意を読む方法」でまとめています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
制作現場では「法律上言えるか」だけでなく、「その表現が媒体でどう受け取られるか」まで企画段階で見ておく必要があります。江良公宏のメルマガでも、「正しいこと」と「通ること」は違い、媒体や文脈まで含めて設計する必要があると説明しています。
特に「医療用」という言葉は強い訴求になります。だからこそ、LP完成後に削るのではなく、企画時点で「何を同じと訴求するのか」を決めておくべきです。後工程で薬事チェックを入れると、ストーリー自体の作り直しにつながります。
事例2|複数成分のOTCで、一成分だけを見て「医療用と同じ」と言う


仮に、A・B・Cという3つの有効成分を含むOTC医薬品があり、そのうちAだけが医療用医薬品と同じだったとします。
この商品について、医療用医薬品と同じ配合剤であるかのように「医療用医薬品と同じ有効成分配合」と訴求するのはNGです。
現行の公開資料では、複数の有効成分を含むOTC医薬品について、医療用医薬品側に同一の有効成分の組み合わせによる配合剤が存在しない場合、この表現は認められないと整理されています。消費者が「医療用にも同じ組み合わせの薬がある」と誤認するためです。
広告制作前に、単に「成分名が医療用にあるか」ではなく、単剤か配合剤か、組み合わせまで一致しているかを確認します。
また、ECでは「医療用成分配合」というコピーだけでなく、商品名、画像、レビュー、注意表示を組み合わせたページ全体で、医療用医薬品と同等の効果を暗示していないか確認します。
事例3|同じ有効成分でも分量が違うのに「同成分・同量配合」


医療用医薬品と有効成分は同じでも、OTC医薬品の分量が異なるケースがあります。
この場合、「医療用医薬品と同じ有効成分配合」という説明自体は、所定の条件を満たせば可能です。ただし、分量が異なることを付記しなければなりません。 逆に分量も同じであれば、消費者の誤認防止のため「同量配合」と付記できる旨が公開資料で示されています。
「同じ成分だから、ほぼ同じ薬でしょう」とコピーを先に作るのではなく、承認内容と医療用医薬品側の情報を照合してから表現を決める必要があります。
なお、塩が異なる場合など、有効成分として同一と扱われない例も示されています。
「医療用成分配合」はすべてのスイッチOTCで自由に使えるわけではない
「医療用成分配合」という言葉自体が全面的に禁止されているわけではありません。
日本一般用医薬品連合会の2025年改訂通知のQ&Aでは、申請区分(4)により承認取得した製品について、「医療用成分を配合しました」という表現は発売からの期間を問わず使用できると整理されています。 以前の運用を知っている担当者ほど、「発売後3年間だけ」という古い理解のまま審査しないことが大切です。
一方で、広告時点で対応する医療用医薬品としての使用・流通実績が確認できない製品を参照することは認められていません。
日本一般用医薬品連合会は現在、「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン2026年版」を最新版として案内しています。実案件では最新ガイドラインと対象商品の承認資料を照合してください。
実務では「医療用」を残すより、何を伝えたいのかを分解する
「処方薬と同じ」と書きたくなったとき、単なる言い換えから始めない方がうまくいきます。
本当に伝えたいのは、「医療用にも使われている有効成分なのか」「有効成分の新規性なのか」「OTCとして認められた効能効果なのか」を分けてください。
有効成分との関係を訴求するなら、医療用医薬品との成分同一性、分量、単剤・配合剤、投与経路、現在の医療用での使用状況を確認します。一方、効果を伝えるなら、医療用医薬品の添付文書や論文へ引っ張られず、OTCとして承認された効能効果を基準にします。
医療用医薬品の臨床データをOTC広告へ展開する場合は、医療用医薬品の論文・臨床試験データをOTC広告に使える?成分データと広告表現の注意点もご覧ください。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
薬機法対応は、NGワードを別の弱い言葉に変える作業ではありません。「医療用」を削る前に、なぜその言葉を使いたかったのかを確認します。新しさを伝えたいのか、成分の由来を伝えたいのか、効果を強く見せたいのか。目的が分かれば、法令上説明できる事実へ訴求を組み替えられます。
江良公宏の過去記事でも、感覚的な表現を根拠のある形へ変換すること、単にNGを出すのではなく伝わるクリエイティブへ落とし込むことを重視しています。 化粧品の事例でも、規制を確認したうえで企画自体の成立方法を探すという考え方が示されています。
まとめ
OTC広告で単に「処方薬と同じ」と表現するのはNGです。
一方、条件を満たすOTC医薬品であれば、「医療用医薬品と同じ有効成分配合」「医療用成分を配合しました」といった表現が認められる範囲があります。
ただし、確認するのは成分名だけではありません。分量、配合成分の組み合わせ、投与経路、医療用医薬品の現行性、OTCとして承認された効能効果・用法用量まで見ます。
そして最も避けたいのが、「医療用と同じ成分だから効く」というストーリーです。有効成分の同一性と、効果の同等性は別の話です。
スイッチOTCの強みを残したいのであれば、「処方薬と同じ」という大きな括りで訴求せず、何が医療用と同じなのかを事実レベルまで限定して広告することが実務上の基本になります。
OTC医薬品の広告上の表現について体系的に理解したい方は「OTC医薬品広告で注意すべき薬機法ルール|スイッチOTC・要指導医薬品・一般用医薬品の違い 」もご覧ください。
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参考情報・引用元
本記事は、以下の法令、公的機関・公式資料・業界自主基準を参考に、OTC医薬品広告における「処方薬と同じ」「医療用医薬品と同じ有効成分配合」「医療用成分を配合しました」等の表現について、OTCとしての承認内容、医療用医薬品との有効成分・分量・配合組成・投与経路の関係、効能効果等の同等性を誤認させない表示、景品表示法上の優良誤認の観点から整理しています。
個別の広告表現の適否は、対象製品の申請区分、承認された効能効果・用法用量、有効成分の同一性と分量、単剤・配合剤、投与経路、参照する医療用医薬品の使用・流通状況、広告全体の印象などにより判断が異なるため、最新の承認資料、公的資料、業界自主基準等を確認してください。
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年08月16日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日薬生発0929第4号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179262.pdf(参照日:2026年09月17日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日薬生監麻発0929第5号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf(参照日:2026年08月16日)
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html(参照日:2026年09月17日)
- 日本一般用医薬品連合会「OTC医薬品の説明に関する付記事項について(別紙の一部変更)」(令和7年9月26日、一般薬連発KOU250926号)日本一般用医薬品連合会. https://www.jfsmi.jp/pdf/20250926_3.pdf(参照日:2026年08月16日)
- 日本一般用医薬品連合会「『OTC医薬品等の適正広告ガイドライン2026年版』発刊のお知らせ」日本一般用医薬品連合会. https://www.jfsmi.jp/ad_guideline/(参照日:2026年08月16日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「一般用医薬品・要指導医薬品」PMDA. https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/otc/0002.html(参照日:2026年09月17日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「申請区分と添付すべき資料」PMDA. https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/otc/0001.html(参照日:2026年09月17日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「Q1 医師が処方するくすりと市販のくすりはどのようにちがうのですか?」PMDA. https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0025.html(参照日:2026年08月16日)
- 厚生労働省「スイッチOTC医薬品の候補となる成分及びその検討結果について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144557.html(参照日:2026年09月17日)
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134(参照日:2026年09月17日)
- 消費者庁「優良誤認とは」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation(参照日:2026年08月16日)
- 消費者庁「不実証広告規制」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation/not_demonstrated_ad(参照日:2026年09月17日)
免責事項
本記事は、法令、通知、ガイドラインその他の公的資料を、各資料の参照日時点で確認したうえで作成しています。
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