「通常価格9,800円のところ、今だけ4,980円」という二重価格表示はEC、LP、店頭POPでよく使われる価格訴求ですが、実際に9,800円で販売したことがあるだけでは、「通常価格9,800円」と表示できません。
過去の自社販売価格を「通常価格」として比較対照価格にする場合、その9,800円が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえることが必要です。
消費者庁は、その判断の一般的な目安として、セール開始時点からさかのぼる8週間、販売期間の過半、通算2週間、直近2週間という基準を示しています。
この記事では、いわゆる「8週間ルール」を中心に、9,800円を通常価格として使えるケース、使えないケース、新商品の販売期間が8週間未満の場合まで広告制作の実務担当者向けにまとめていきます。
「通常価格9,800円→4,980円」は、9,800円の販売実績が条件
同一商品を9,800円で最近相当期間にわたって販売していた実績がある場合、「通常価格9,800円のところ4,980円」という二重価格表示は可能です。
反対に、9,800円で適正期間販売した実績がないのに、
「通常価格9,800円
↓
特別価格4,980円」
と表示するのはNGです。
景品表示法では、商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際より著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示を規制しています。
二重価格表示についても、実際と異なる比較対照価格や、内容があいまいな比較対照価格を使うと不当表示に該当するおそれがあるため注意が必要です。
ここで確認するのは「9,800円という価格設定が社内に存在するか」ではありません。実際の販売活動で、その価格がどのように使われていたかです。
二重価格表示全体の判断方法は「二重価格表示とは?景品表示法違反になりやすい通常価格・セール価格・割引率の注意点」でもまとめています。
8週間ルールは「8週間売ればOK」という意味ではない
実務でよく使われる「8週間ルール」は、単純に「8週間経過すれば通常価格として使える」というルールではありません。
消費者庁の表示に関するQ&Aでは、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえる一般的な目安として、次の条件が示されています。
- 二重価格表示を始める時点からさかのぼった8週間を確認する
- その価格で販売していた期間が、商品の販売期間の過半を占めている
- その価格で販売した期間が通算2週間以上ある
- その価格で最後に販売した日から2週間以上経過していない
つまり、セール開始前8週間のうち、9,800円で販売していた期間がごく一部しかない場合、「当店通常価格9,800円」とは扱えません。
価格表示ガイドラインでも、8週間の販売期間のうち9,800円相当の価格で販売したのが当初2週間だけで、その後6週間は低い価格だったようなケースは、不当表示に該当するおそれのある例として示されています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
制作現場で「8週間ルールをクリアしています」と言われたときは、何をもってクリアとしているのかまで確認する必要があります。
「商品を発売してから8週間経った」という意味なのか、「9,800円で8週間売った」という意味なのか、それとも過去8週間の販売履歴を確認したという意味なのか。同じ「8週間」という言葉でもそれぞれ内容が違ってきます。
価格表だけでなく、販売開始日と価格変更履歴まで確認すると判断しやすいでしょう。
事例1:8週間のうち5週間を9,800円で販売していても使えない場合がある


たとえば、単品販売の美容液を次の価格で販売していたとします。
- 1~5週目:9,800円
- 6~8週目:7,980円
- 現在のセール価格:4,980円
このとき、9,800円で販売していた期間は、直近8週間のうち5週間です。
つまり、販売期間の過半を占めており、通算2週間以上という条件も満たしています。
しかし、これだけで9,800円を「最近相当期間にわたって販売されていた価格」として使えるわけではありません。
もう一つ確認する必要があるのが、最後に9,800円で販売したのはいつかです。
このケースでは、9,800円で販売した後、3週間にわたって7,980円で販売しています。そのため、現在4,980円のセールを開始する時点では、9,800円で最後に販売した日から2週間以上経過しています。
したがって、このケースでは、9,800円を「最近相当期間にわたって販売されていた価格」として比較対照価格に使用することはできません。
つまり、
「直近8週間の過半で販売していた」だけでは足りず、「最後にその価格で販売したのはいつか」も確認する必要があります。
二重価格表示を確認するときは、価格履歴を時系列で並べたうえで、
「その価格でどのくらいの期間販売していたか」
+
「最後にその価格で販売したのはいつか」
の2点をセットで確認することが重要です。
化粧品LPを薬機法の観点から確認するポイントは「化粧品LPの薬機法チェック|ファーストビュー・CTA・口コミ・Before/Afterの注意点」で解説しています。
事例2:9,800円で2週間、4,980円で6週間売った後に「49%OFF」はNG


たとえば、家庭用美顔器を次の価格で販売していたとします。
- 1~2週目:9,800円
- 3~8週目:4,980円
- 現在:4,980円
この状態で、
「通常価格9,800円から約49%OFF!」
と表示するケースを考えてみます。
結論からいうとこの場合、9,800円を「最近相当期間にわたって販売されていた価格」として「通常価格」と表示することはできません。そのため、その9,800円を基準にした「約49%OFF」という表示もできません。
理由は、9,800円で販売していた期間が短いためです。
過去8週間の価格履歴を見ると、9,800円で販売していたのは最初の2週間だけです。その後の6週間は4,980円で販売しているため、9,800円での販売期間は過去8週間の過半を占めていません。
消費者庁の価格表示ガイドラインでも、過去8週間のうち、比較対照価格で販売していたのが当初の2週間だけで、その後6週間は低い価格で販売していたケースが、不当表示となるおそれのある例として示されています。
ここで注意したいのが、割引率の表示も同じだということです。
「約49%OFF」は、9,800円から4,980円まで値下げしたものとして算出した割引率です。したがって、9,800円を過去の販売価格に基づく「通常価格」として使用できないのであれば、その9,800円を基準にした「約49%OFF」という割引率も表示できません。
つまり、このケースでは、
9,800円を過去の販売価格に基づく「通常価格」として使えない
↓
その9,800円を基準にした「約49%OFF」も使えない
と考えます。
そのため、過去の9,800円との比較やそれを基準にした割引率を表示せず、現在の販売価格である「4,980円」のみを表示する方法が考えられます。
なお、美容機器の「たるみ改善」「脂肪分解」「小顔」などの表現については「美容機器広告で「たるみ改善」「脂肪分解」「小顔」は使える?医療機器該当性と薬機法上の注意点 」でまとめています
事例3:発売3週間の商品は、8週間待たないと「通常価格」と比較できない?


「8週間ルール」と聞くと、
「新商品は発売後8週間経たないと、通常価格と比較したセール表示はできないのですか?」
という疑問が出てきます。
結論からいうと、8週間待たなければならないわけではありません。
消費者庁の価格表示ガイドラインでは、商品自体の販売期間が8週間未満の場合、その販売期間を対象に「最近相当期間にわたって販売されていた価格」に当たるかを検討するとされています。
そのうえで、比較対照価格で販売していた期間が販売期間の過半を占めていること、通算2週間以上あることなどを確認します。
たとえば、新発売のヘアドライヤーを、
- 発売後1~2週目:19,800円
- 発売後3週目:14,800円
で販売するケースを考えてみます。
この商品の場合は、発売からまだ3週間しか経っていません。
ただし、発売から8週間経っていないからといって、それだけで二重価格表示ができないわけではありません。
商品の販売期間が8週間未満の場合は、実際に販売していた期間を基準に、19,800円で販売していた期間や販売状況などを確認します。
ここで注意したいのが、販売開始時点からセールを予定していた場合です。
たとえば、販売開始前から、
「最初の2週間だけ19,800円で販売し、3週目から14,800円に値下げして『通常価格19,800円→14,800円』と表示する」
という販売計画を決めていたケースです。
この場合、単に「19,800円で2週間販売した」という実績だけを見て、19,800円を比較対照価格として使用できるとは判断できません。
価格表示ガイドラインでは、セール実施を決定した後に販売を開始した商品について、販売開始時点ですでにセール価格が決まっており、セール前価格が比較対照価格としての実績作りとみられるような場合には、販売期間を正確に表示していても不当表示となるおそれがあるという考え方が示されています。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
ここは「2週間売れば通常価格が作れる」と機械的に処理しないほうがいいところです。
たとえば企画段階から4,980円で売ることが決まっているのに、広告で「50%OFF」と見せるためだけに9,800円の期間を作る。この設計では、数字上の日数だけ合わせても広告の根拠として弱くなります。
根拠は後から作るのではなく、実際の販売計画の中で成立させる。この考え方は、価格表示でも効能効果の根拠でも同じです。
「通常価格」と「メーカー希望小売価格」を混同しない
二重価格表示では、比較対照価格が何を意味するのかも重要です。
「当店通常価格9,800円」は、自社・自店での過去の販売価格を示す表示です。
一方、
「メーカー希望小売価格9,800円
販売価格4,980円」
という表示なら、確認する根拠が変わります。
メーカー希望小売価格について消費者庁は、メーカーが新聞広告、カタログ、商品本体への印字などによってあらかじめ公表している価格であれば、比較対照価格として使用できるとしています。
つまり、メーカー希望小売価格を使う場合に「過去8週間、自店で9,800円で売っていたか」を確認するわけではありません。
反対に、自社が自由に設定した9,800円を「メーカー希望小売価格」と呼べば解決するものでもありません。
比較対照価格の種類を先に特定し、その価格に応じた根拠を確認する必要があります。
有利誤認を含む景品表示法の基本的な考え方を確認したい場合は「違反すると制裁?広告の制作に必須の景品表示法の基本を解説」もあわせて確認してください。
「販売していた」は購入実績が必要という意味ではない
もう一つ実務で誤解されやすいのが、「9,800円で何件売れたのか」という点です。
価格表示ガイドラインでは、「販売されていた」とは、事業者が通常の販売活動においてその商品を販売していたことをいい、実際に消費者が購入した実績まで必須とはしていません。
ただし、形式だけ整えればよいわけではありません。
通常とは異なる場所に商品を置いただけだったり、比較対照価格を作るためだけに一時的にその価格を設定していたとみられる場合には、「販売されていた」とは扱われません。
そのため根拠資料としては、単に売上件数を見るのではなく、商品ページ、価格変更履歴、販売期間、通常の販売状態だったことが分かる記録を残しておく必要があります。
実務では価格変更履歴を広告制作前に確認する
「通常価格9,800円→4,980円」を使いたい場合、制作会社が確認したいのは、社内の商品企画書に書かれた「定価9,800円」だけではありません。
少なくとも、
- 同一商品の販売開始日
- 9,800円で販売した期間
- 途中で設定した別価格
- 9,800円で最後に販売した日
- セール開始日
- 通常の販売状態だったことが分かる記録
まで確認します。
そして、LPの「通常価格」、打消し表示、割引率、バナーの「50%OFF」などを同じ根拠で確認します。
LP全体の価格表示については「LPの景品表示法チェック|No.1・口コミ・価格・限定表示の注意点」をご覧ください。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
法規チェックをLP完成後に行うと、「通常価格が使えないので価格訴求を全部変更してください」という大きな手戻りになることがあります。実際に、薬事上使えない訴求をLPの中心に置いた結果、全体のストーリーから作り直すことになった事例があります。これは価格表示でも構造は同じです。
「9,800円→4,980円」をファーストビューの主役にするなら、デザイン開始前に価格履歴を確認する。価格根拠もクリエイティブ企画の一部として扱ったほうが進行はスムーズです。
まとめ
「通常価格9,800円のところ4,980円」は、条件を満たせば使えます。
ただし、9,800円という価格を設定したことがあるだけでは足りません。
過去の自社販売価格を「通常価格」とするなら、一般的にはセール開始時点からさかのぼる8週間を確認し、その価格で販売した期間が販売期間の過半を占めていること、通算2週間以上販売していること、最後の販売日から2週間以上経過していないことを確認します。商品自体の販売期間が8週間未満なら、その販売期間を基準に検討します。
また、比較対照価格を作るためだけの形式的な販売実績では足りません。
実務では「8週間ルールをクリアしたか」という一言で終わらせず、いつ、いくらで、どのくらいの期間、どのような販売状態で売っていたのかを時系列で確認してください。
価格履歴と広告表現をセットで確認することが、「通常価格9,800円→4,980円」を根拠のある訴求として使うための基本です。
なお、景品表示法の価格表示については「二重価格表示とは?景品表示法違反になりやすい通常価格・セール価格・割引率の注意点」もご覧ください。
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参考情報・引用元
本記事は、以下の法令、消費者庁の公式資料・ガイドライン・Q&Aを参考に、「通常価格9,800円のところ4,980円」等の二重価格表示、過去の販売価格、いわゆる「8週間ルール」、割引率、メーカー希望小売価格および新商品の比較対照価格について整理しています。
個別の価格表示の適否は、商品の同一性、販売開始日、価格変更履歴、比較対照価格で販売していた時期・期間、販売形態、セール決定時期、比較対照価格の種類、広告全体から受ける印象などにより判断が異なるため、必要に応じて最新の公的資料や専門家への確認を行ってください。
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「景品表示法」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「表示規制の概要」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「有利誤認とは」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/advantageous_misidentification/(参照日:2026年08月31日)
- 公正取引委員会・消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方(価格表示ガイドライン)」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf(参照日:2026年08月14日)
- 消費者庁「二重価格表示」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/double_price/(参照日:2026年08月14日)
- 消費者庁「表示に関するQ&A」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/representation(参照日:2026年08月14日)
- 消費者庁「景品表示法関係ガイドライン等」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/violation/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「よくある質問コーナー(景品表示法関係)」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/(参照日:2026年08月31日)
免責事項
本記事は、法令、通知、ガイドラインその他の公的資料を、各資料の参照日時点で確認したうえで作成しています。
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