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商品提供だけでもPR表記は必要?インフルエンサー施策とステマ規制の実務判断

景品表示法とステルスマーケティング規制に関するインフォグラフィック。「商品提供だけでPR表記を決めない」という見出しとともに、インフルエンサー施策においてPR表記の必要性を判断する際に確認すべき4つの要素(誰に提供したか、投稿を依頼したか、内容を指定したか、事業者との関係性)が図示されている。下部には「報酬の有無だけでなく、実際のやり取りを確認」と記載されている。

「報酬は払っていません。商品を送っただけなので、PR表記は不要ですよね?」

インフルエンサー施策でよく出る質問ですが「商品提供だけならPR表記は不要」とは判断できません。反対に、商品を無償提供したら必ずPR表記が必要、というルールでもありません。

景品表示法のステルスマーケティング規制で見るのは、金銭報酬の有無ではなく、その投稿が広告主である事業者の表示に当たるかです。

特定のインフルエンサーを選んで商品を送り、投稿を依頼した場合は、やり取りの内容、提供目的、過去・将来の取引関係などによって「事業者の表示」と判断されることがあります。事業者の表示なら、広告であることを明瞭にしなければNGです。

この記事では、ギフティング施策でPR表記が必要になるケースと、不要と整理できるケースを具体的に見ていきます。

目次

商品を無償提供しただけで、必ずPR表記が必要になるわけではない

ステルスマーケティング規制についての判断は、次の順序で行っていきます。

まず、その投稿が「事業者の表示」なのかを確認します。

事業者がインフルエンサーの表示内容の決定に関与しており、客観的に見てインフルエンサーが自主的な意思だけで投稿したとはいえない場合、その投稿は事業者の表示になります。

その場合は「広告」「PR」「○○社から商品の提供を受けて投稿しています」など、広告であることを一般消費者が明瞭に判別できる表示が必要です。

逆に、事業者から商品提供を受けていても、投稿内容がインフルエンサー自身の自主的な意思によるものと認められる場合まで、一律に「#PR」を付ける必要はありません。消費者庁Q&Aでもこの考え方が明示されています。

ステマ規制全体の考え方については「ステルスマーケティングとは?景品表示法のステマ規制を広告実務者向けにわかりやすく解説」でまとめています。

事例1:インフルエンサーを選んで商品を送り「投稿してください」は要確認

NG事例:メーカーがインフルエンサーに細かく依頼しているが、報酬ゼロのためPR表記不要としている例」というタイトルのインフォグラフィック。左側にメーカーからの依頼メッセージ(商品提供と投稿依頼、PR表記不要の指示)、中央に詳細な依頼内容(紹介ポイントやハッシュタグの指定)、右側にインフルエンサーの投稿イメージが記載されている。下部には、報酬の有無にかかわらず広告であることを明示する必要があるという「NGポイント」と、景品表示法・ステルスマーケティングの観点からの解説がまとめられている。
※自社で作成したイメージ画像です

たとえば化粧品メーカーが、美容系インフルエンサー20名を選定し、新商品を無料で送ったとします。

送付時には、

「新商品をお送りします。よろしければ使用後の感想をInstagramへ投稿してください」

と依頼しました。金銭報酬はありません。

この場合「報酬ゼロだからPR表記不要」と処理してはいけません。

消費者庁は、街頭で不特定多数に試供品を配るケースと、特定のインフルエンサーを選定して無償提供するケースを区別しています。

後者では、具体的なやり取り、無償提供の内容・目的、過去の取引関係、将来の取引可能性などによっては、インフルエンサーの自主的な投稿とは認められず、事業者の表示と判断されます。

たとえば「良かった点を中心に紹介してください」「発売日に投稿してください」「このハッシュタグを付けてください」と依頼し、今後の有償案件も予定しているのであれば、単なるプレゼントとは言いにくくなります。

これらを踏まえて、事業者の表示に当たるならPR表記が必要です。

化粧品SNS広告を薬機法・ステマ規制・PR表記の観点から確認する方法は「化粧品SNS広告・インフルエンサー投稿の注意点|薬機法・ステマ規制・PR表記」もご覧ください。

江良公宏

薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解 
ギフティング案件では、契約書だけを確認すると判断を誤ることがあります。
「投稿義務なし」「報酬なし」と書かれていても、実際のDMでは「来週までに投稿をお願いします」「このポイントを紹介してください」と伝えていることがあります。見るべきなのは契約書のタイトルではなく、企画書、DM、メール、送付状を含めた実際のやり取りです。
社内確認では、「お金を払ったか」ではなく「投稿内容の決定にどこまで関与したか」を判断軸にしていきます。

事例2:街頭で試供品を配り「よければ投稿してください」は通常PR不要

ステマ規制に該当しない事例」というタイトルのインフォグラフィック。イベント会場で一般消費者500人に試供品を配布し、「よろしければ使った感想をSNSへ投稿してください」と案内するケースを示している。配布時に投稿の強制や内容の指定を行わず、消費者の自由に委ねている点が「ステマ規制に該当しないポイント」として挙げられている。結論として、不特定多数への配布で内容指定や報酬がないため、ステルスマーケティング規制の対象外となることが解説されている。
※自社で作成したイメージ画像です

一方、イベント会場で一般消費者500人に試供品を配り、

「よろしければ使った感想をSNSへ投稿してください」

と案内しただけならどうでしょうか。

投稿内容を指定せず、投稿するかどうかに関係なく不特定多数へ商品を配っているのであれば、その投稿は通常、事業者の表示には当たりません。したがって、ステマ規制上のPR表記も通常は必要ありません。

消費者庁Q&Aでも、不特定多数への試供品配布では、通常はそれ以上の関係性がなく、事業者が表示内容の決定に関与したとはいえないと整理されています。

重要なのは「無料でもらった」という事実ではありません。

誰を選んだのか。投稿を条件にしたのか。内容を指定したのか。事業者との関係性がどの程度あるのか。

ここで結論が変わります。

事例3:以前から愛用していた商品をプレゼントされた場合はPR必須ではない

インフルエンサーに商品をプレゼントしただけでは、今後の投稿すべてに『広告』『PR』と記載する必要はありません」というタイトルのインフォグラフィック。インフルエンサーが自発的に商品を愛用しているケースで、メーカーが感謝の意を込めて商品をプレゼントし「今後もよろしければ投稿してください」と依頼しても、それだけで直ちにPR表記が必須になるわけではないことが示されている。あわせて、判断が変わるケースとして「投稿時期や内容の指定」「有償案件を前提とした関係への移行」「消費者が広告と認識しにくい場合」の3点が例示されている。
※自社で作成したイメージ画像です

消費者庁Q&Aには、さらに実務的な例があります。

もともとインフルエンサーが自発的にある商品を愛用し、SNSでも紹介していました。そのメーカーが商品をプレゼントし、

「いつもありがとうございます。今後もよろしければ投稿してください」

と伝えたケースです。

この事実だけで、今後の投稿すべてに「広告」「PR」と記載する必要があるわけではありません。

もともと商品を気に入っており、事業者からの依頼とは無関係に投稿しようとしていたのであれば、自主的な意思による投稿と整理できるからです。

ただし、その後メーカーが投稿時期や内容を指定したり、有償案件を前提とした関係へ変わったりすれば判断も変わります。

また消費者庁は、このような自主投稿でPR表示が必須でない場合でも、無償提供された商品を使っている画像を掲載するなら、「X社から商品の提供を受けた」と記載することは有益だとしています。

口コミを広告に利用するときの優良誤認やステマ規制の考え方は「口コミ・体験談は景品表示法上使える?優良誤認・ステマ規制・広告利用の注意点」で整理しています。 

江良公宏

薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解 
ここで「少しでも迷ったら全部#PR」と社内ルールを作る方法もありますが、それは法律上の判断とは分けておくほうがスムーズです。
ステマ規制の判断としては、まず事業者の表示なのかを整理する。そのうえで、法令より広い自主基準として「提供品はすべて明示する」と決めるなら、前述のルールとして運用もしやすくなります。
法律上必要なのか、企業のリスク管理方針として表示するのか。この二つを混ぜないことで、クライアントにも説明しやすくなります。

事例4:「投稿内容は自由」でも報酬付きなら事業者の表示になりやすい

NG事例:個別に投稿を依頼し、投稿に対して報酬を支払う場合は、事業者の表示に該当する可能性が高くなります」というタイトルのインフォグラフィック。左側にメーカーからの依頼メッセージ(報酬5万円の提示・内容は自由)、中央にインフルエンサーの投稿イメージ、右側に「判断のポイント」として、具体的な指示がなくても報酬があれば事業者の表示に該当する可能性が高いことなどが図示されている。下部には、個別に投稿を依頼し金銭的利益を提供する場合は、投稿内容に関わらず表示義務が生じる可能性があるとの注意書きがまとめられている。
※自社で作成したイメージ画像です

逆方向の事例もあります。たとえば、

「商品を使った感想を投稿してくれたら5万円を支払います。ただし、内容は自由です」

という依頼です。

企業側が「良いと書いてください」と指示していなくても、個別に投稿を依頼し、その投稿に対して報酬を支払う場合は、事業者の表示に該当する可能性が高くなります。

消費者庁も、表示内容を直接指定していなくても、具体的なやり取り、対価の内容と提供理由、過去・今後の関係性などを踏まえて判断するとしています。個別に投稿を依頼して報酬を支払う例については、事業者の表示に当たる可能性が高いと明示されています。

つまり、

「文章は本人に任せています」

だけではPR表記を外す理由になりません。

PR表記の要否を「報酬あり・なし」の2択で管理しない

ギフティング案件では、社内チェック項目を「報酬あり/なし」だけにすると判断を誤ります。

実務では、誰に商品を送ったのか、なぜその人を選んだのか、投稿を依頼したのか、投稿時期を指定したのか、指定ハッシュタグや訴求事項があるのか、投稿内容の事前確認・修正を行うのか、過去に有償案件があったのか、今後の案件を期待させる関係があるのかまで確認します。

その結果、投稿が事業者の表示に当たるなら、広告であることを明瞭にします。

PR表記そのものの位置や見せ方については、「#PRを付ければステマ規制は大丈夫?PR表記の位置・見せ方・表示全体の注意点」で詳しくまとめています。

薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解 

インフルエンサー施策は、公開前の投稿原稿だけチェックしても足りないことがあります。

判断材料になるのは、その原稿ができるまでに企業と投稿者が何をやり取りしたかだからです。

企画段階で「商品提供」「投稿依頼」「内容指定」「事前チェック」「報酬」「継続案件」の項目をチェックリスト化しておけば、担当者が変わっても判断基準をそろえやすくなり、手戻りを減らすことができます。

まとめ

商品を提供しただけで、必ずPR表記が必要になるわけではありません。しかし、「商品提供だけだからPR不要」とも判断できません。

ステマ規制で見るべきなのは、金銭報酬の有無ではなく、その投稿が事業者の表示かどうかです。消費者庁は、広告主が第三者へ依頼・指示した表示も規制対象となり得ることを明示しています。

特定のインフルエンサーを選んで商品を提供する場合は、投稿依頼の内容、提供目的、過去・将来の取引関係などを確認します。

事業者の表示であればPR表記が必要です。自主的な意思による投稿と認められるなら、ステマ規制上、一律にPR表記を要求されるものではありません。

実務では、「無料か有料か」ではなく、「誰を選び、何を渡し、何を依頼し、どこまで投稿に関与したか」を記録して判断する。この方法が、ギフティング施策のPR表記を判断する基本です。

ステマ規制全体については「ステルスマーケティングとは?景品表示法のステマ規制を広告実務者向けにわかりやすく解説」もあわせて確認してください。

広告規制を守るだけでなく、商品の価値や訴求力を保ちながら表現を組み立てる考え方については、「薬機法ライティング®とは|薬機法対応と訴求力を両立する広告表現の考え方」で詳しく解説しています。

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参考情報・引用元

本記事は、以下の法令、公的機関・公式資料・関連資料を参考に、景品表示法におけるステルスマーケティング規制、インフルエンサーへの商品提供・ギフティング、投稿依頼、報酬、過去・将来の取引関係、「事業者の表示」の判断およびPR表記の要否について整理しています。
個別の投稿が「事業者の表示」に該当するかは、金銭報酬の有無だけでなく、商品提供の目的、提供対象者の選定、投稿依頼の内容、投稿内容への関与、事前確認、過去・将来の取引関係などを総合的に判断する必要があるため、必要に応じて最新の公的資料や専門家への確認を行ってください。

免責事項

本記事は、法令、通知、ガイドラインその他の公的資料を、各資料の参照日時点で確認したうえで作成しています。
内容の正確性には十分配慮していますが、法令・行政運用の変更や個別事情により判断が異なる場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の広告表現の適法性を保証するものではありません。
実務への適用にあたっては、最新の公的資料をご確認のうえ、必要に応じて所管行政機関または専門家へご相談ください。誤り等が判明した場合は、確認のうえ訂正・更新します。

景品表示法とステルスマーケティング規制に関するインフォグラフィック。「商品提供だけでPR表記を決めない」という見出しとともに、インフルエンサー施策においてPR表記の必要性を判断する際に確認すべき4つの要素(誰に提供したか、投稿を依頼したか、内容を指定したか、事業者との関係性)が図示されている。下部には「報酬の有無だけでなく、実際のやり取りを確認」と記載されている。

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