「お客様から実際に届いた口コミなら、そのまま広告に載せても大丈夫ですよね?」
実在する口コミ・体験談でも、広告に自由に使えるわけではありません。
景品表示法では、口コミを使った広告全体から、商品・サービスの効果や品質を実際より著しく優良だと消費者に誤認させれば優良誤認が問題になります。また、企業が口コミ投稿の内容決定に関与しているのに、一般消費者の自主的な投稿に見せればステルスマーケティング規制の対象になります。
さらに「個人の感想です。効果には個人差があります」と注釈すれば解決するわけでもありません。消費者庁の調査では、体験談を見た消費者が「大体の人にも同様の効果がある」と受け取る傾向が確認されています。
この記事では、口コミの収集、広告への転載、効果体験談、インセンティブ付きレビューに分けてまとめていきます。
口コミ・体験談は使える。ただし「本当に言った」だけでは足りない
結論からいうと、景品表示法上、口コミ・体験談という広告手法自体が一律に禁止されているわけではありません。
ただし、商品・サービスの区分によっては、体験談そのものに別の広告規制があるため注意が必要です。
景品表示法では、広告主がその口コミを選び、LPやバナーへ配置した時点で、その表示を通じて商品・サービスについて何を伝えているかを確認します。
特に、
「1週間でこんなに変わった」
「使った翌日から効果を実感」
「これだけで悩みがなくなった」
といった強い体験談を掲載し、一般消費者に通常得られる効果であるかのような印象を与えるなら、その効果・性能を裏付ける合理的な根拠が必要です。
不実証広告規制でも、提出資料は客観的に実証されたものであり、広告した効果・性能と適切に対応することが求められます。
優良誤認と有利誤認の基本的な違いは「優良誤認・有利誤認とは?景品表示法の不当表示を広告実務者向けに解説」で整理しています。
事例1:本物の体験談でも「この人に効いたから」は商品の効果根拠にならない

たとえば一般的なサプリメントのLPに、実際の顧客から届いた、
「たった1か月で見違えるほど変わりました」
というコメントを写真付きで大きく掲載したとします。
コメント自体が実在していたとしても、それだけで広告した効果の合理的な根拠にはなりません。
一人の体験結果と、多くの利用者に通常期待できる効果は別だからです。
さらに、一般健康食品であるサプリメントは、そもそも医薬品のような疾病の治療・予防などの効能効果を広告することはできません。体験談という形式にしても、この制限を回避できるわけではありません。
そのうえで景品表示法上も、体験談を強調することで、消費者に「多くの人にも同じような効果が期待できる」と受け取られないかを確認する必要があります。
したがって、広告審査では「口コミの原文が存在するか」だけではなく、その体験談が何の効果を示しているのか、商品区分上その効果を訴求できるのか、広告全体で通常期待できる効果として見せていないか、その表示に必要な根拠があるかまで確認します。
健康食品のLPを薬機法・景品表示法・特商法から横断して確認する方法は「健康食品の定期購入LPで注意すべき特商法・薬機法・景品表示法|効能訴求・初回価格・解約条件の確認ポイント」でまとめています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
口コミ確認で「実際のお客様の声です」という回答をもらうと、そこで審査が止まりやすくなります。
しかし、広告実務で重要なのは真偽確認の次です。
「この声を広告主が選んで大きく掲載したとき、消費者へ何を伝えるのか」を見る必要があります。広告に使う以上、口コミもコピーや画像と同じクリエイティブの一部として確認したほうが判断しやすくなります。
事例2:「個人の感想です」と書いても強い体験談は消えない


強い体験談の下に、
「※個人の感想です。効果には個人差があります」
と表示するケースがあります。
この注釈だけで優良誤認を防げるとは限りません。
消費者庁は体験談を用いた表示について、体験談から受ける効果の印象を、「個人の感想です」などの打消し表示によって十分に訂正できない場合があると整理しています。
たとえば家庭用医療機器のLP全体が、
「驚きの変化!」
「利用者の喜びの声が続々」
体験談を複数掲載
ビフォーアフター風の画像
という構成なのに、最下部へ小さく「個人差があります」と記載しても、強調表示から受ける印象は簡単には変わりません。
修正するなら、注釈を追加する前に、そもそもその体験談を広告の主訴求として使える根拠があるかを確認します。
また、医療機器の場合は、景品表示法だけでなく薬機法等の広告規制も別途確認が必要です。
口コミを含むLP全体の景品表示法チェックは「LPの景品表示法チェック|No.1・口コミ・価格・限定表示の注意点」で整理しています。
事例3:高評価レビューを依頼して一般口コミに見せるのはNG


NG事例:レビュー投稿キャンペーンの画像。左側に『★5レビューを投稿いただいた方へ500ポイント進呈』というキャンペーン告知、右側にその結果として高評価レビューが並ぶオンラインショップの商品ページが表示されている。下部の『NGポイント』では、高評価を条件にレビューを募集し、それを自主的な一般レビューとして掲載する行為は、消費者に誤認を与えるステマ規制上の不適切な表示事例であることが解説されている。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
口コミ施策では、「レビュー投稿でポイント」と「高評価レビューでポイント」を分けて考えたほうがいいです。
企業側が欲しい評価まで指定すると、一般消費者が見たときの情報の意味が変わります。
制作会社がレビュー企画そのものを決められない場合でも、「ポイント付与の条件は投稿だけですか。評価内容も条件ですか」と一つ確認するだけで、ステマ規制の判断材料をかなり拾えます。
事例4:SNSの自主投稿をLPへ転載すると広告として改めて確認が必要


ユーザーが自発的にSNSへ、
「この美顔器が使いやすかった」
と投稿しました。
事業者から投稿依頼や報酬はなく、このSNS投稿自体は自主的な口コミだったとします。
では、その投稿をスクリーンショットにして自社LPへ転載すれば、そのまま使えるでしょうか。
ここでの注意点は、元投稿は自主的であるが、自社LPに掲載することです。転載をすると広告素材となるため、改めて内容を確認する必要があります。
LPに転載すると広告主が口コミを選択し、商品の販売促進に利用していると考えられます。
たとえば元投稿に、
「絶対に○○できる」
という根拠のない効果表現まで含まれているなら、「ユーザーの投稿をそのまま載せただけ」という理由で優良誤認の確認を免れるわけではありません。
自発的な口コミと自社LPへ引用して広告利用する場合は分けて確認する必要があります。
健康食品や化粧品では薬機法・健康増進法も別に確認する
口コミ広告は景品表示法だけで完結しない場合があります。
たとえば一般的な健康食品について、
「これを飲んだら血圧が下がった」
という利用者の実体験があったとしても、その体験談を広告へ載せることで疾病の治療・予防や身体機能への作用を標ぼう・暗示するなら、薬機法上の医薬品的効能効果の問題を別途確認します。
また、健康保持増進効果等について著しく事実に相違する、または著しく人を誤認させる表示であれば、健康増進法の虚偽・誇大表示規制も関係します。
化粧品については「化粧品広告で口コミ・体験談は使える?『個人の感想です』だけでは足りない理由」で詳しくまとめています。
実務では「収集→選定→編集→掲載」の4段階を確認する
口コミ広告では、掲載画面だけを見るより、その口コミがどう作られたかを確認します。
まず、誰から収集したのか。
次に、高評価だけを恣意的に抽出していないか。
そして、文章を広告主側で編集・加筆していないか。
最後に、LPやSNS広告へ載せたことで、元の投稿以上に強い効果を示す構成になっていないか。
これらを確認します。
ステマ規制では投稿が事業者の表示なのか、優良誤認では広告全体として商品の品質・効果を実際より著しく良く見せていないかを見る。この二つを混同しないことが大切です。
金銭報酬の有無ではなく、投稿依頼や内容への関与から判断する方法は「商品提供だけでもPR表記は必要?インフルエンサー施策とステマ規制の実務判断」で整理しています。



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チェックリストにする場合は、「口コミチェック」という一項目だけでは、実務上の情報が足りません。
項目として「投稿依頼はあったか」「評価指定はあったか」「元データはあるか」「広告主が編集したか」「広告で何の効果を訴求しているか」まで分解します。
口コミの文言を直すことより、どう集めて、どう広告へ使うかを最初に設計したほうが手戻りを減らせます。
まとめ
口コミ・体験談は、景品表示法上、一律に禁止されている広告手法ではありません。
実在する利用者の声でも、広告として掲載する以上、その内容と見せ方を確認する必要があります。
体験談によって商品・サービスの効果を実際より著しく優良に見せれば優良誤認が問題になります。「個人の感想です」と書くだけで強い効果表示が消えるわけでもありません。
また、企業が投稿内容の決定に関与しているのに、一般利用者の自主的な口コミに見せればステマ規制の対象になります。
実務では、「本物の口コミか」だけではなく、「どう集めたか」「企業がどこまで関与したか」「広告へ載せた結果、消費者に何を伝えているか」まで確認する。これが口コミ・体験談を広告利用するときの基本です。
景品表示法における口コミの考え方について詳しく知りたい場合は「ステルスマーケティングとは?景品表示法のステマ規制を広告実務者向けにわかりやすく解説」をご覧ください。
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参考情報・引用元
本記事は、以下の法令、公的機関・公式資料・関連通知を参考に、口コミや体験談の広告利用、景品表示法上の優良誤認および不実証広告規制、ステルスマーケティング規制、打消し表示の留意点、健康食品の表示規制ならびに薬機法との関連性を整理しています。
個別の広告表現の適否は、体験談の収集・選定プロセス、広告主の関与態様、商品区分、訴求する効能効果、合理的根拠の有無、注釈の見せ方、LPやSNS全体から消費者が受ける印象などを総合的に判断する必要があるため、必要に応じて最新の公的資料や専門家への確認を行ってください。
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134(参照日:2026年09月01日)
- 消費者庁「景品表示法」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/(参照日:2026年09月01日)
- 消費者庁「優良誤認とは」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation/(参照日:2026年09月01日)
- 消費者庁「不実証広告規制」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation/not_demonstrated_ad(参照日:2026年08月14日)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/(参照日:2026年08月14日)
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing(参照日:2026年08月14日)
- 消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の指定及び『運用基準』の公表について」消費者庁, 2023年3月28日. https://www.caa.go.jp/notice/entry/032672/(参照日:2026年09月01日)
- 消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0004.pdf(参照日:2026年08月14日)
- 消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180921_0001.pdf(参照日:2026年08月14日)
- 消費者庁「健康増進法(誇大表示の禁止)」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/(参照日:2026年09月01日)
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/assets/representation_cms213_241001_02.pdf(参照日:2026年09月01日)
- e-Gov法令検索「健康増進法(平成14年法律第103号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103(参照日:2026年09月01日)
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年09月01日)
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html(参照日:2026年09月01日)
- 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日薬生監麻発0929第5号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf(参照日:2026年09月01日)
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- 厚生省薬務局監視指導課長「無承認無許可医薬品の指導取締りの徹底について」(昭和59年5月21日薬監第43号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta7033&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年09月01日)
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