健康食品、雑貨、美容機器は、医薬品として販売していないから薬機法68条とは無関係と考えるのは危険です。広告で「病気を治す」「感染症を予防する」「脂肪細胞を破壊する」などと訴求すると、商品が医薬品または医療機器として扱われることがあります。必要な承認・認証がなければ広告はNGです。本記事では、3領域の境界と修正方法を解説します。
健康食品・雑貨・美容機器でも薬機法68条の対象になる可能性がある
いわゆる健康食品で、疾病の治療・予防や身体機能の増強をうたう表現は使えません。サプリメント等で医薬品的効能効果を標ぼうすると、成分本質、形状、用法用量、販売方法等を含む総合判断により医薬品とみなされる場合があります。その場合、必要な承認を受けていなければ第68条等の問題が生じます。
雑貨でも、「雑貨」「天然素材」と表示するだけでは逃れられません。疾病を治療・予防する目的を示し、機械器具ではない物なら医薬品、機械器具なら医療機器に該当する問題が生じます。
美容機器で、疾病の治療や身体の構造・機能への作用を示す表現もNGです。正確には未承認医療機器広告の問題であり、「美容」「セルフケア」という名称でも結論は変わりません。
薬機法の基本と66条・68条の違いは、薬機法(薬事法)とは?薬事法との違い・規制対象・66条/68条を基礎から解説で整理しています。
未承認品で直接的に問題になるのは薬機法68条
薬機法66条は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等について、虚偽・誇大な広告を禁止する規定です。一方、68条は、承認または認証を受けていない医薬品・医療機器等について、名称、製造方法、効能、効果または性能に関する広告を禁止しています。まず商品が薬機法上の医薬品・医療機器等に該当するかを確認し、承認・認証を要する未承認品であれば第68条を確認します。
重要なのは、「効果の根拠」より先に「その効果をうたえる商品区分か」を確認することです。論文や試験データがあっても、承認前広告を適法にはできません。データの見せ方で医薬品的な作用の暗示が強くなることもあります。
薬機法上の広告は、顧客誘引の意図、特定の商品名等、一般人が認知できる状態という3要件で判断されます。SNS投稿、動画、記事広告も、要件を満たせば広告です。
事例1:サプリで「高血圧を改善、糖尿病を予防」は使えない

たとえば、一般的なサプリメントのLPで「高血圧を改善」「糖尿病を予防」「薬に頼らない体へ」と表示するケースです。この表現はNGです。
疾病の治療・予防は医薬品的な効能効果です。経口摂取する物は、成分本質、効能効果、形状、用法用量などから医薬品該当性が判断されます。食品に使える原材料でも、医薬品的効能効果を標ぼうすれば医薬品とみなされ、承認がなければ68条の問題になります。
健康増進法の理由は別です。健康効果を書いた時点で直ちに違反になるのではありません。健康保持増進効果について、著しく事実に相違し、または著しく人を誤認させる表示が禁止されています。
景品表示法では、商品内容や効果を実際より著しく優良に示していないか、合理的根拠があるかが問題になります。
「高血圧をサポート」「血糖値が気になる方へ」と弱めるだけでは足りません。広告全体で数値改善や疾病予防を暗示するなら同じです。一般健康食品なら、原材料、栄養成分、味、形状、携帯性、摂取場面へ軸を移します。
栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品であれば、それぞれの表示可能な範囲を確認します。健康食品広告のルール完全ガイドも確認してください。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
健康食品で手戻りが大きくなるのは、コピー完成後にNGワードだけを削る進め方です。「血圧改善」でLPを組み立てた後、その語だけを「健康サポート」へ変えても、グラフ、体験談、医師コメント、CTAが同じ効果を伝え続けます。
企画段階で商品区分と訴求軸を決めるべきです。薬機法対応は、根拠と区分に合わせて広告全体を設計し直す作業です。
事例2:雑貨のアロマオイルで「片頭痛を治す」は使えない


雑貨として販売するアロマオイルについて、「こめかみに塗ると片頭痛を治す」「自律神経を整えて不眠症を改善」と広告するケースです。この表現は使えません。
外用のアロマオイル等は、薬機法上の定義、成分、使用目的、使用方法、表示等から医薬品・医薬部外品・化粧品等への該当性を個別に確認します。 商品ページに「雑貨です」「医薬品ではありません」と注記しても、使用方法、画像、体験談を含む広告全体が治療目的を示していれば、注記だけでは修正になりません。医薬品としての承認がなければ、未承認医薬品広告の問題です。
雑貨として販売するなら、香りの特徴、空間での使用方法、インテリア性、容器、利用場面などへ訴求を移します。
肌へ塗布させる設計なら、そもそも雑貨ではなく、化粧品や医薬部外品等への変更を企画段階から見直す必要があります。病名表現の詳しい考え方は、薬機法で「病名」は広告に使える?で解説しています。
事例3:美容機器で「脂肪細胞を破壊し、たるみを治療」は使えない


一般美容機器として販売するフェイス機器で、「超音波で脂肪細胞を破壊」「たるみを治療」「ニキビを治す」と表示するケースです。これもNGです。
医療機器は、疾病の診断・治療・予防、または身体の構造・機能へ影響を及ぼすことを目的とする機械器具等です。広告がその目的を明確に示すと、一般美容機器として販売していても医療機器該当性が問題になります。当該製品が承認・認証を要する医療機器に該当する場合、必要な承認・認証を受ける前に名称、効能、効果、性能等を広告すると第68条の問題となります。
修正時は「小顔をサポート」「フェイスラインをすっきり見せる」といった曖昧な言い換えに逃げてはいけません。画像や動画が脂肪減少、組織変化、治療効果を示していれば同じです。
一般美容機器として伝えるなら、操作方法、使用感、振動・温感など確認できる機能、使用シーンへ訴求を移します。医療機器として販売するなら、該当性、一般的名称、承認・認証内容、使用目的または効果を先に確認します。
制作現場では、法令上の区分確認より先に、競合LPの強いコピーを集めて企画を進めがちです。しかし、競合が掲載していることは、その表現が使える根拠になりません。
最初に「この商品は何として市場に出すのか」「承認・認証書のどこまで言えるのか」を確認し、その範囲でストーリーを作る方が、公開直前の全面改稿を防げます。法律上説明できることと、媒体審査を通過することも分けて管理してください。
このほか美容機器・家庭用医療機器の広告ルールや医療機器該当性で迷ったときの確認方法でも詳しく解説しています。
実務では商品名より先に「目的」と「承認」を確認する
未承認医薬品・未承認医療機器広告を避けるには、次の順で確認します。
- 商品は食品、雑貨、化粧品、医薬部外品、医薬品、一般美容機器、医療機器のどれか
- 広告が疾病の治療・予防、身体機能の増強、身体構造への作用を伝えていないか
- 医薬品・医療機器に該当するなら、承認・認証の有無と範囲は何か
- コピーだけでなく、画像、動画、グラフ、体験談、専門家コメント、注釈、CTAを含めて同じ作用を暗示していないか
- 表現できない効果を、商品事実、使用価値、利用場面へ転換できないか
「エビデンスがあるから言える」「海外では医療機器として売られている」「雑貨と書けば問題ない」という説明では通りません。国内の商品区分と承認・認証の状況を確認し、表示可能な範囲から広告を組み立てます。
まとめ
健康食品、雑貨、美容機器でも、広告で疾病の治療・予防や身体の構造・機能への作用をうたえば、医薬品または医療機器として扱われることがあります。商品実態・表示内容から医薬品または医療機器に該当し、かつ承認・認証を要する製品について、必要な承認・認証を受ける前に名称、効能、効果、性能等を広告すると、第68条の問題となります。
判断の出発点は、表現の強弱ではありません。商品区分、広告で示す目的、承認・認証の有無です。使えない効果を曖昧語へ置き換えるのではなく、商品事実と利用価値へ訴求軸を移してください。
薬機法の関わる広告について体系的に理解したい方は「薬機法(薬事法)とは?薬事法との違い・規制対象・66条/68条を基礎から解説」もご覧ください。
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参考情報・引用元
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145(参照日:2026年08月02日)
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html (参照日:2026年08月02日)
- 厚生労働省「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年06月01日、薬発第476号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6938&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月02日)
- 厚生労働省「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年09月29日、医薬監第148号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb5413&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月02日)
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/assets/representation_cms213_230131_01.pdf(参照日:2026年08月02日)
- 消費者庁「健康増進法第65条第1項の適用に関するQ&A」2024年7月作成. 消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/assets/representation_cms213_240722_01.pdf(参照日:2026年08月08日)
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