「添付文書に書いてある効能なら、広告にもそのまま使える」。
この理解は半分正しく、半分誤りです。なお、電子化された添付文書のことは「電子添文」と呼ばれますが、本記事では「添付文書」で統一しています。
一般用医薬品や医療機器において、添付文書に記載のある「効能又は効果」「使用目的又は効果」は広告表現を考えるうえで重要資料です。
しかし、添付文書に記載があるだけで、強調、言い換え、体験談、画像表現まで自由になるわけではありません。また医療用医薬品は、承認効能が記載されていても一般人向けの商品広告自体がNGです。
この記事では、添付文書を広告審査でどう読み、どこから先が使えないのかを整理します。
添付文書と広告では目的が違う
現在、医療用医薬品や多くの医療機器では、PMDAサイトに掲載される「電子化された添付文書」が基本です。添付文書は、患者の安全確保と適正使用のため、医薬関係者や使用者へ必要な情報を提供する目的で作成されます。
そのため、広告コピーを認めるための資料ではありません。
添付文書には、効能・効果だけでなく、警告、禁忌、副作用、薬物動態、臨床成績、取扱い上の注意等が記載されています。掲載項目のすべてが販促訴求に転用できるわけではない点に注意が必要です。詳しい基準の全体像は、医薬品等適正広告基準を実務で読むでも解説しています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
実務では「資料に書いてある事実」と「広告で強調できる表現」を分けます。根拠が正しくても、切り取り方で効能の拡大や安全性保証になります。コピーを作った後で添付文書から似た言葉を探す進め方では手戻りが増えます。商品区分、承認範囲、媒体、対象者を企画段階で確定し、その枠内で訴求軸を作る方が、結果として強い広告を残せます。
事例1|OTC医薬品の効能を強い言葉へ変えるのはNG


たとえば、一般用鎮痛薬の添付文書に「頭痛、歯痛、生理痛の鎮痛」と記載されているとします。この効能を正確に示す広告は可能です。
しかし、「つらい片頭痛を治す」「飲めば痛みを完全に止める」への変更はNGです。前者は承認効能を広げるおそれがあり、後者は効果保証です。
「有効成分が速く溶ける」という製剤情報があっても、それだけで「すぐ効く」と広告できません。速効性には、承認範囲内で医学・薬学上認められた根拠が必要で、強調方法にも制限があります。
修正では、承認効能を正確に示し、剤形、服用しやすさ、携帯性、対象年齢など、確認可能な商品事実へ訴求を分散します。医薬品の分類や広告対象を整理する場合は、医薬品の分類と広告上の注意点も確認してください。
事例2|医療用医薬品は添付文書どおりでも一般人向け広告に使えない


たとえば処方薬(医療用医薬品)の添付文書に「2型糖尿病」の効能が記載されていても、一般消費者向けの広告で、商品名とともに「2型糖尿病を改善」と訴求するのはNGです。
理由は、承認範囲以前に、医療用医薬品について医薬関係者以外の一般人を対象とする広告が制限されているためです。疾患啓発や患者向け情報提供は別途設計できますが、特定商品への誘引と受け取られる構成にしてはいけません。
医薬関係者向け資材でも、添付文書の一部だけを強調してよいわけではありません。対象者、掲載媒体、アクセス制御、承認範囲、安全性情報とのバランスを確認します。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
「添付文書どおりなので法律上は通るはず」という説明だけでは、実務の審査は終わりません。誰に、どの媒体で、どの文脈で見せるかによって結論は変わります。法律上の承認範囲、一般人向け広告の制限、媒体独自基準は別々に確認してください。「正しいこと」と「通ること」を混ぜないことが、制作会社とクライアントの認識ずれを防ぎます。
事例3|医療機器の原理説明を効果訴求へ変換するのはNG


家庭用医療機器の添付文書に、形状・構造・原理や臨床成績が記載されていても、その説明を使って承認・認証された使用目的又は効果を越えることはできません。
たとえば、承認された効果が「筋肉痛の緩解」である製品について、「筋肉を根本から再生する」「治療院と同等の治療効果」「一度使えば痛みが戻らない」はNGです。原理説明、グラフ、ビフォーアフター、CTAを組み合わせ、永続的な治療効果を暗示する場合も同じです。
医療機器の添付文書も、適正使用に必要な情報を提供する目的で作成され、原則として承認・認証の範囲で使用する場合に必要な事項が記載されます。
修正するなら、認められた効果を正確に示したうえで、装着方法、操作性、サイズ、保管性、使用場面などへ訴求を移します。性能数値は、試験条件と対象製品の一致を確認し、効果保証に見える見せ方を避けます。
添付文書を広告審査で使う確認手順
最初に商品区分と、一般向け・医薬関係者向けのどちらの広告かを確定します。次に、PMDAで最新の添付文書を確認し、改訂年月、販売名、効能又は効果、用法及び用量、関連する注意事項を抜き出します。
その後、広告文ごとに根拠となる記載を紐づけます。薬理作用や成分説明から二次的・三次的な効果を作っていないか、対象症状や使用者を広げていないか、速効性・持続性・安全性を保証していないかを確認します。
最後に、画像、動画、グラフ、体験談、専門家コメント、注釈、CTAまで見ます。単語が承認範囲内でも、広告全体が「必ず治る」「誰でも安全」と伝えていればNGとなるため注意が必要です。
なお、言い換え表現で対応が難しいケースでは薬機法対応と訴求力を両立する広告表現の考え方をご覧ください。
また、添付文書に使用上の注意があるにもかかわらず、その情報と矛盾する「副作用なし」「誰でも使える」「安心して毎日使える」といった表現は使えません。
特に注意喚起が必要な製品では、広告にも注意事項そのもの、または注意事項へ留意すべき旨を付記・付言することが求められます。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
添付文書チェックは、最後の法務確認だけに置かない方がよいです。企画段階で「使える効能」「使えない拡張」「別軸で伝える商品事実」を一枚にまとめれば、コピーとデザインが同じ方向へ進みます。公開直前にNGワードを消すだけでは、ストーリーが崩れます。チェックリストと根拠記録を残し、次の案件でも再利用できる状態にしてください。
まとめ
添付文書は広告表現を確認する重要資料ですが、自由に広告へ転用できる許可証ではありません。
一般用医薬品と医療機器は、承認・認証等の範囲内で正確に表現します。薬理作用、臨床成績、副作用情報を使って、より強い効果、安全性、速効性へ広げることはできません。医療用医薬品は、添付文書どおりでも一般人向けの商品広告がNGです。
公開前には、最新の添付文書だけでなく、承認書等、対象者、媒体、広告全体の印象を確認してください。
薬機法と添付文書の関係について体系的に理解したい方は「医薬品等適正広告基準を実務で読む|承認範囲・ビフォーアフター・医師推薦の判断軸 」もご覧ください。
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参考情報・引用元
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(2017年9月29日、薬生発0929第4号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179264.pdf(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(2017年9月29日、薬生監麻発0929第5号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」(2021年6月11日、薬生発0611第1号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5973&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「医療機器の電子化された添付文書の記載要領について」(2021年6月11日、薬生発0611第9号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5975&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月08日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「添付文書の電子化について」PMDA. https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/0003.html(参照日:2026年08月08日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「医療用医薬品 添付文書等情報検索」PMDA. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/(参照日:2026年08月08日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」PMDA. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcSearch/(参照日:2026年08月08日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「医療機器 添付文書等情報検索」PMDA. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiSearch/(参照日:2026年08月08日)
免責事項
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内容の正確性には十分配慮していますが、法令・行政運用の変更や個別事情により判断が異なる場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の広告表現の適法性を保証するものではありません。
実務への適用にあたっては、最新の公的資料をご確認のうえ、必要に応じて所管行政機関または専門家へご相談ください。誤り等が判明した場合は、確認のうえ訂正・更新します。



