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医療機器広告で臨床データ・論文・グラフは使える?エビデンス表現と広告利用の注意点

医療機器広告で臨床データ・論文・グラフは使える?」というタイトルを持つインフォグラフィック。チェックポイントとして上部に「承認・認証範囲」、左下に「根拠資料との整合性」、右下に「グラフ・コピーの見せ方」が配置されています。下部には「論文があるだけでは判断しない」という注意書きがあり、全体として医療機器広告制作時の確認プロセスを図示しています。

医療機器のLP(ランディングページ)などを制作していると、

「この効果は論文で確認されています」
「臨床データがあるのでグラフを載せたい」

といった相談が出てきます。

ただし、結論からいうと、臨床データ・論文・グラフは、エビデンスが存在するだけでは広告に使えません。

 一律に掲載禁止というわけでもありませんが、広告で伝える効能効果・性能は、まずその医療機器が承認・認証等を受けた範囲内でなければならないためです。論文を引用しても、承認範囲を広げることはできません。

厚生労働省の医薬品等適正広告基準でも、承認等を要する医薬品等について、明示・暗示を問わず承認された効能効果等の範囲を超えてはならないとされています。 

さらに、数字やグラフは文章以上に「効果が実証されている」「この結果が自分にも得られる」と受け取られやすいため、広告全体で何を伝えているかまで確認する必要があります。

この記事では、医療機器広告の臨床データや論文、グラフなどを利用する際の注意点についてお伝えしていきます。

目次

医療機器のエビデンス広告は「論文があるか」だけでは判断できない

医療機器などの薬機法が関わる製品では、承認等を受けていない効能・性能を、臨床データや論文で裏付けて広告することはできません。

「研究では効果が確認されている」「海外論文にはこの性能が書かれている」という事情があっても同じです。

医薬品等適正広告基準の解説では、実際にその効能効果を有しており、追加申請すれば承認され得るものであっても、未承認の効能効果を広告してはならないと明示されています。

ただし、承認・認証等の範囲内の内容について、研究内容を事実どおり正確に紹介することまで一律に禁止されているわけではありません。同基準の解説でも、製造販売業者等が製品に関する研究内容を述べる場合には「事実を正確に、強調せずに表現すること」とされています。 

つまり、制作時の順番は、

「論文がある→広告に使う」

ではありません。

「その製品の承認・認証内容を確認する→広告で何を伝えたいか整理する→その範囲内でエビデンスをどう見せるか検討する」

が、手戻りの少ない制作時の順番です。

医療機器広告の基本的な確認手順は、医療機器広告の薬機法完全ガイドと合わせて確認すると整理しやすくなります。

事例1:臨床試験で新しい効果が出ていても、未承認の効能は広告できない

一般家庭用医療機器の広告制作例として、首に装着する医療機器と使用イメージ、臨床試験データを使った疲労改善訴求を示した図。『臨床試験で疲労への効果を確認』『使用8週間で疲労が32.4%改善』といったコピーに加え、成人男女40名を対象に1日1回15分、8週間使用したメーカー独自の臨床研究結果として、VASスコアによる疲労の変化率を本製品使用群とプラセボ機器使用群で比較したグラフを掲載している。さらに『首・肩の疲労を軽減』『血行を促進』『筋肉のコリを緩和』などの効能表現を組み合わせ、臨床試験データがあっても医療機器の承認・認証された使用目的や効能効果の範囲を超えて広告できるわけではないことを確認するための事例である。
※自社で作成したイメージ画像です

たとえば、ある家庭用医療機器について、承認された使用目的または効果が「肩こりの緩和」までだったとします。その後、メーカーが独自に臨床研究を行い「疲労回復」という別の効果について有意な結果が得られました。

すると当然LPには、

「臨床試験で疲労回復への効果を確認」
「使用8週間で疲労が○%改善」

と掲載したくなります。

しかし、疲労回復が承認・認証等の範囲外であれば、この訴求はNGです。

この問題の中心は「研究の信頼性が低い」ことではありません。研究結果が正しいとしても、広告によってその医療機器に未承認の効能・性能があると標ぼうしている点です。

薬機法66条は医療機器の効能、効果または性能について虚偽・誇大な広告を禁止しており、適正広告基準では承認等の範囲を超える効能効果等の表現を認めていません。 

つまり、「※研究結果であり、本製品の効果を保証するものではありません」と注釈を付けても、メインコピーやグラフから疲労回復への効果を読み取れるならこの問題は残ったままとなります。

江良公宏

薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解 
広告制作でよくあるのが、「この表現には論文があります」と根拠資料から企画が始まってしまうパターンです。しかし、医療機器の場合はその前に承認・認証内容を見る必要があります。客観的な根拠があることと、広告で言えることは別です。
「正しいこと」と「通ること」は違い、論文やエビデンスも出し方によって効能効果の暗示が強くなるという実務上の視点を持っておくと手戻りは減っていきます。

事例2:承認範囲内の臨床データでも、グラフの切り取り方でNGになる

医療機器広告で臨床研究や論文データを誇張して訴求するNG事例を示した図。家庭用医療機器「MediAxis X1」の広告として、「臨床研究で確認」「圧倒的な改善!」「わずか4週間で大幅変化」「スコアが58%改善」などのコピーとグラフを掲載している。一方、元論文は対象者50名、対照群あり、評価期間12週間のランダム化比較試験で、主要評価項目では一定の差があるものの一部項目では有意差がないという内容であり、広告の「4週間で大幅変化」という訴求と研究条件が一致していない。医療機器広告では、論文や臨床研究を根拠として使用する場合でも、評価期間、対象者、評価項目、対照群、有意差など元データの条件を正確に確認し、研究結果の一部だけを切り取って製品効果を実際以上に強く見せないことが重要であると示している。
※自社で作成したイメージ画像です

たとえば、医療機器Xについて承認範囲内の指標を評価した試験があり、広告に折れ線グラフを掲載するとします。

元論文では、

「対象者50名」
「対照群あり」
「評価期間12週間」
「主要評価項目では一定の差」
「一部項目では有意差なし」

という内容だったとしましょう。

ところが広告では、差が最も大きく見える時点だけを切り出して、

「圧倒的な改善!」
「わずか4週間で大幅変化」

と見せていた場合、これは論文を引用しているからという理由だけで、安全とはいえません。

なぜなら、薬機法66条では、明示だけでなく暗示による虚偽・誇大広告も規制対象のため。グラフの縦軸を極端に調整する、都合のよい対象群だけを表示する、統計的な前提を落とすなど、広告全体として実際以上の性能を認識させれば問題になります。 

また、一般消費者向け広告であれば景品表示法も別に確認します。景品表示法では商品・サービスの品質等を実際より著しく優良と示す表示が禁止され、効果・性能表示の合理的根拠については、「客観的に実証された内容」であることに加え、表示した内容と根拠資料が適切に対応していることが求められます。 

つまり、「論文が一本ある」では足りません。その論文が、広告で表示した数字・対象者・使用条件・期間・結論まで支えているかを見ていく必要があります。

薬機法の概要については「薬機法(薬事法)とは?薬事法との違い・規制対象・66条/68条を基礎から解説」で詳しくまとめています。

事例3:「大学との共同研究」「学会発表済み」なら信用性訴求に使えるのか

医療機器広告で大学との共同研究実績を誇張して訴求するNG事例を示した図。脳機能サポート医療機器「NeuroFit X1」の広告として、「大学のお墨付き」「専門機関が効果を認定」「共同研究で実証された確かな効果」「毎日15分の使用で脳のパフォーマンスがぐんぐん向上」などのコピーや、満足度93.6%、集中力・記憶力をサポート、継続使用で効果を実感といった訴求を掲載している。一方、実際の事実は大学医学部・脳神経学講座との共同研究を実施したという研究協力の実績にとどまり、大学や専門機関が製品の効果を認定・保証したものではない。共同研究の事実を『大学のお墨付き』『効果を認定』と拡大解釈すると、第三者機関による効果保証があるように消費者を誤認させるおそれがあることを示した医療機器広告の不適切事例である。
※自社で作成したイメージ画像です

大学や学会、研究主体なども、名称を出せば安全という話ではありません。

たとえば、

「○○大学との共同研究で実証」
「○○学会でも認められた技術」

という広告表現を使うとします。

この際、単に研究主体や引用元を正確に示すことと、その大学・学会が製品を「推奨・公認している」と見せることは別です。

医薬品等適正広告基準では、病院、学校、学会を含む一定の団体が医薬品等を指定、公認、推薦、指導、選用している旨の広告を原則として認めていません。たとえその趣旨が事実であっても、一般消費者への影響が大きいことを踏まえているためと説明されています。 

したがって、「共同研究」という事実があるからといって、

「大学のお墨付き」
「専門機関が効果を認定」

まで広げるのはNGです。

江良公宏

薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解 
エビデンスは、強いコピーを作るための“飾り”ではありません。本来は「なぜその表現ができるのか」を説明する裏側の資料です。もちろん、感覚で見つけた良さを、根拠によって説明できる状態にするという考え方もあります。 制作の際は、論文タイトルだけを受け取るのではなく、「広告のどの一文を、この資料のどこで支えるのか」まで紐付けておくと審査時の手戻りを減らせます。

医家向け医療機器では「誰向けの広告か」も先に確認する

医療機器なら、すべて一般消費者向けに広告できるわけでもありません。

医薬品等適正広告基準では、医療関係者が自ら使用することを目的として供給される医療機器のうち、一般人が使用した場合に保健衛生上の危害が発生するおそれのあるものについて、一般人向け広告を制限しています。 

そのため、医家向け機器の臨床データを一般公開LPに掲載するときは、コピー以前に「この媒体・対象者に広告してよい製品か」を確認します。

医療機器の分類や一般的名称から確認する場合は、医療機器の薬機法分類ガイドもご覧ください。

臨床データ・論文を広告に使うときの修正方法

エビデンス表現で問題が見つかったとき、単に「効果があります」を「期待できます」へ弱めても解決しません。

まず確認するのは、承認書・認証書、添付文書(電子化された添付文書は電子添文と呼ばれます)等で、その製品に認められている使用目的または効果、性能です。PMDAでは医療機器の承認審査や安全対策に関する情報が提供されています。 

そのうえで、広告で伝えたい訴求を分解します。

承認範囲外の効果を言いたいのであれば、その効果訴求を残したままコピーだけ弱くするのではなく、その訴求自体を外します。

一方、承認範囲内なら、論文の研究対象、試験方法、評価指標、使用条件、期間、母数、対照条件と、広告に表示する内容が一致しているかを確認します。グラフを使う場合には、軸、母数、期間、注釈を含めて、実際以上の差を見せていないかまで見ます。

また、LP・バナー・動画では、グラフだけ切り離して審査してはいけません。「臨床データ」の見出し、人物写真、医師コメント、Before/After、CTAが組み合わさることで、単独では生じなかった効果保証の印象が生まれることがあります。

江良公宏

薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解 
薬機法対応を制作の最後に行う場合、企画自体を作り直さなければならないことがあります。過去には、一般化粧品のLPを効能訴求から設計した結果、ストーリー全体の書き直しが必要になった事例もあります。これは 医療機器のエビデンス訴求も同じです。
そのため、グラフをデザインした後ではなく、企画段階で「承認範囲」「根拠資料」「広告で言う一文」をセットにしておく方が手戻りを防げます。
なお、商品区分を前提にして企画を組み立てるという考え方も重要です。

まとめ

医療機器広告で、臨床データ・論文・グラフは一律NGではありません。

しかし、エビデンスがあることを理由に、承認・認証等の範囲を超える効能効果・性能を広告することはできません。

実務では、

承認・認証内容
→ 広告で伝える効能・性能
→ 根拠資料
→ グラフやコピーの見せ方
→ 掲載媒体・対象者

の順で確認します。

特に「論文で実証」「○%改善」「大学との共同研究」といった表現は、一見すると客観的ですが、見せ方によっては承認範囲外の効果、効果保証、推奨・公認を強く印象付けます。

エビデンスを「強い広告を正当化する材料」にするのではなく、承認された範囲の情報を、どこまで正確に伝えられるかを確認する材料として使うことが医療機器広告の基本です。

なお、医療機器広告の薬機法については「医療機器広告の薬機法完全ガイド|規制・適正広告基準・表現チェックを実務者向けに解説」をご覧ください。

広告規制を守るだけでなく、商品の価値や訴求力を保ちながら表現を組み立てる考え方については、「薬機法ライティング®とは|薬機法対応と訴求力を両立する広告表現の考え方」で詳しく解説しています。

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参考情報・引用元

本記事は、以下の法令、公的機関・公式資料・業界資料を参考に、医療機器広告における臨床データ、論文、グラフ等のエビデンス利用、承認・認証範囲との関係、効果・性能の保証表現、研究内容の紹介、大学・学会等の権威付け、一般向け広告の制限および景品表示法上の合理的根拠について整理しています。
個別の広告表現の適否は、製品の承認・認証・届出内容、使用目的又は効果、性能、研究対象、試験方法、評価指標、対象者、使用条件、掲載媒体、広告全体の構成などにより判断が異なるため、必要に応じて最新の公的資料や専門家への確認を行ってください。

免責事項

本記事は、法令、通知、ガイドラインその他の公的資料を、各資料の参照日時点で確認したうえで作成しています。
内容の正確性には十分配慮していますが、法令・行政運用の変更や個別事情により判断が異なる場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の広告表現の適法性を保証するものではありません。
実務への適用にあたっては、最新の公的資料をご確認のうえ、必要に応じて所管行政機関または専門家へご相談ください。誤り等が判明した場合は、確認のうえ訂正・更新します。

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