「顧客満足度No.1」「美容液部門No.1」「使用者の96%が満足」。化粧品のLP(ランディングページ)やECサイトではよく見かける表示ですが、No.1や満足度という言葉自体が禁止されているわけではありません。
使えるかどうかを分けるのは、表示と根拠資料が本当に対応しているかです。特に「顧客満足度No.1」を、商品を使っていない人へのイメージ調査だけで表示するのはNGです。本記事では、一般化粧品を中心に、景品表示法上の判断、調査資料の確認方法、薬機法が別途問題になる場面まで整理します。
No.1・満足度表示は使える。ただし「調査会社の証明書がある」だけでは足りない
化粧品広告でNo.1表示や満足度表示を使うこと自体は禁止されていません。競合商品との比較そのものも、景品表示法が一律に禁止しているわけではありません。
ただし、「顧客満足度No.1」のような主観的評価によるNo.1表示では、少なくとも「比較する商品が適切に選定されている」「調査対象者が適切に選定されている」「調査が公平な方法で実施されている」「表示内容と調査結果が適切に対応している」という4点が必要です。消費者庁もこの判断軸を明示しています。
したがって、商品を使っていない人にWebサイトを見せただけの「顧客満足度No.1」は避ける必要があります。また、自社が1位になりやすいよう恣意的に比較対象を選定するなど、No.1表示の根拠として適切でない比較調査も問題になります。一方、実利用者を適切に抽出し、公平に調査した「満足度96%」や、客観的な販売データで対象市場・期間・商品範囲まで確認できる「売上No.1」は、表示と根拠が対応していれば使用できます。
「第三者調査」「調査会社実施」と書けばよいわけでもありません。第三者が調査していても、景品表示法上の表示責任を負うのは広告主です。
化粧品広告における薬機法と景品表示法の役割そのものを整理したい場合は、化粧品広告の薬機法と景品表示法の違いもあわせて確認してください。
「顧客満足度No.1」が景品表示法上NGになる理由
景品表示法5条1号は、商品の品質や内容について、実際よりも、または競合品よりも著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示を禁止しています。No.1表示は「競合より優れている」と受け取られる表示です。そのため、事実と違う順位や、表示に見合わない調査を根拠にすれば優良誤認の問題になります。
特に満足度は、「使った人がどう評価したか」を示す言葉です。消費者庁は「顧客満足度No.1」について、特段の事情がなければ実際の利用者を対象に調査した結果だと受け取られると整理しています。利用経験を確認していない人へのイメージ調査しかしていないのに、「顧客満足度No.1」と出すことはできません。「サイトイメージ調査」「本ブランドの利用有無は聴取していません」と注記しても、表示と調査結果のズレは解消しません。
「No.1」ではなく「満足度96%」であれば、競合商品との比較は必須ではありません。ただし、高い評価割合は商品の優良性を間接的に示す表示になり得ます。誰に聞いたのか、何を質問したのか、96%をどう算出したのかが表示と一致していなければ使えません。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
制作側で最初に見るべきなのは、調査会社のロゴや「第三者機関調べ」という一文ではありません。見るべきは調査票です。誰に、どの商品を見せ、どんな質問をし、どの回答を「満足」に集計したのか。ここが広告文言とつながっていなければ、立派な調査報告書があってもコピーの根拠にはなりません。根拠資料は「あるか」ではなく、その表示を説明できるかで確認します。
事例1:美容液の「顧客満足度No.1」をサイトイメージ調査で表示


たとえば、美容液のLPで「顧客満足度No.1」と大きく表示し、根拠資料を見ると、回答者は商品を使っておらず、複数ブランドのWebサイトを見て「満足度が高そうな商品」を選んだだけだったとします。
この表示はNGです。「顧客満足度」は実利用後の評価を意味するのに、調査しているのはサイトから受けた印象だからです。さらに、比較対象が検索上位の数社だけで、市場の主要商品が含まれていなければ、比較対象の選定にも問題があります。消費者庁も、単に検索上位の商品を比較対象にしただけで主要商品が抜けている調査を、不適切な典型例として示しています。
修正は、注釈を増やすことではありません。本当に顧客満足度No.1を訴求するなら、実利用者を適切に対象とし、No.1表示の比較対象として妥当な商品群を選定したうえで、公平な条件で調査します。それが難しいなら、No.1訴求を外し、テクスチャー、香り、容器、使用方法など確認可能な商品事実へ軸を移します。
事例2:「使用者の96%が満足」は、母数だけでなく質問項目まで見る


仮に、実際の購入者へのアンケートで「使用感に満足しましたか」と質問し、「とても満足」「満足」と答えた人が96%だったとします。実利用者を適切に抽出し、質問方法も公平で、広告も「使用感満足度96%」と表示するのであれば、根拠と対応する範囲で使用できます。
しかし、同じデータから「美容効果満足度96%」と書き換えることはできません。調査したのは使用感であって、美容効果ではないからです。
調査時期、対象者、回答者数、実際の質問文、どの選択肢を「満足」に算入したかという集計方法まで確認します。回答者数が多いだけで、自動的に合理的な根拠になるわけではありません。消費者庁も、自社が選ばれやすい選択肢配置や、1位になるまで調査を繰り返す方法を、公平な調査とはいえない例として挙げています。
満足度アンケートと口コミは別の広告手法ですが、いずれも消費者評価を商品の優良性に結びつける表示です。利用者コメントや体験談を併用する場合は、口コミ広告の薬機法上の注意点も確認します。
事例3:一般化粧品で「シミ改善満足度No.1」は調査が正しくても使えない


ここは景品表示法だけを見てはいけません。
一般化粧品で「シミ改善満足度No.1」と表示する場合、仮に満足度調査の設計が景品表示法上問題なくても、その評価項目自体が「この化粧品でシミが改善する」という効能を暗示します。
一般化粧品の効能効果は、認められた範囲を超えて広告できません。「満足度」「No.1」というアンケート形式に変えても、効能表現の規制を回避することはできません。この場合は薬機法上NGです。
修正するなら、まず「何の満足度か」を見直します。一般化粧品で表現できない効果を評価項目にせず、商品区分上表現できる効能や、使用感、香り、容器の使いやすさなどへ訴求軸を移します。表現できる効能の範囲は、化粧品で認められる56項目の効能効果で整理しています。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
No.1案件で手戻りが大きくなるのは、コピー完成後に「根拠資料をください」と確認し始める進め方です。企画段階で、No.1の種類、比較対象、調査対象、質問文、表示予定の注記までセットで決めた方が進めやすくなります。さらに媒体独自の考査基準があるなら、法律上の整理とは別に確認します。「法的に説明できる」と「その媒体で通る」は同じではありません。
実務ではNo.1・満足度表示の根拠資料をどこまで確認するか
制作会社や広告審査担当者が受け取るべきなのは、「No.1認定証」だけではありません。調査会社、調査時期、対象者の条件、利用経験の確認方法、回答者数、比較対象商品の選定基準、実際の質問文、選択肢と表示順、集計方法、順位または割合の算出結果まで確認します。
No.1表示なら、表示内容に照らして比較対象の商品群が適切に選定されているかを確認します。「検索上位5社」という理由だけで比較対象を決めた場合も、その選定がNo.1表示の根拠として妥当かを確認する必要があります。満足度表示なら、「顧客」と表示しながら非利用者が混ざっていないか、「20代顧客満足度」と表示しながら20代以外の回答を含めていないかまで確認します。消費者庁は、第三者調査が実施されていることを確認するだけでは不十分で、広告主自身が表示と調査内容の対応を確認する必要があるとしています。
LPやECでは、No.1表示だけを切り離して見るのではなく、ランキング、口コミ、画像、ファーストビューを含めた広告全体も確認します。ECページについては化粧品ECページの薬機法チェック、満足度表示と一緒に使われやすいレビューについては化粧品広告で口コミ・体験談は使える?もあわせてご覧ください。
まとめ
化粧品広告のNo.1・満足度表示は使えます。ただし、表示に対応する調査がなければ使えません。
「顧客満足度No.1」なら、調査対象者が表示内容に照らして適切か、比較対象の商品群が適切に選定されているか、公平な方法で調査されているか、表示と調査結果が適切に対応しているかを確認します。「満足度96%」のような表示も、質問項目、対象者、母数、集計方法との対応が必要です。
そして、満足度の評価項目自体が化粧品で認められない効能効果を示しているなら、景品表示法上の調査が整っていても使えません。No.1表示は「調査会社に取ってもらえば終わり」ではなく、商品区分、広告文言、調査設計、注記、媒体まで一つの設計として確認することが必要です。
化粧品広告について体系的に理解したい方は「化粧品の口コミは薬機法違反になる?インスタPR投稿・Before/After画像の注意点」もご覧ください。
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参考情報・引用元
本記事は、関連する法令や公的機関、ガイドライン等の公式資料に基づき、化粧品プロモーションにおける「No.1」や満足度の表記について、景品表示法が禁ずる優良誤認や比較広告の要件、リサーチ設計、調査対象・競合商品の選定基準、表示内容と集計結果の整合性、外部機関へ委託する際の広告主の検証義務、さらに薬機法上の効能効果の範囲の観点から解説しています。
実際の広告表現の妥当性は、評価の指標、比較の対象、モニターの属性、利用実績、質問項目、選択肢の構成、リサーチ手法、集計の方式、実施時期、標榜する効能、注釈の記載、広告全体の印象によって判断が分かれます。そのため、実運用にあたっては、最新の公的資料の確認や専門家への照会を適宜行ってください。
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134(参照日:2026年08月25日)
- 消費者庁「『No.1表示に関する実態調査報告書』の公表について」(2024年9月26日)消費者庁. https://www.caa.go.jp/notice/entry/039459/(参照日:2026年09月14日)
- 消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」(令和6年9月26日)消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/survey/assets/representation_cms216_240926_02.pdf(参照日:2026年08月25日)
- 消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書(概要)」(令和6年9月26日)消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/survey/assets/representation_cms216_240926_03.pdf(参照日:2026年09月14日)
- 消費者庁「表示に関するQ&A」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/representation(参照日:2026年08月25日)
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- 消費者庁「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(昭和62年4月21日、平成28年4月1日改正)消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_37.pdf(参照日:2026年08月25日)
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- 消費者庁「景品表示法関係ガイドライン等」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline(参照日:2026年09月14日)
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年09月14日)
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- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日薬食発0721第1号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7518&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月25日)
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