「医師がおすすめする医療機器」「専門医も効果を認めています」「医療機関で選ばれています」。医療機器広告で、このような推薦表現は使えません。
医薬品等適正広告基準は、医師などの医薬関係者、病院、診療所、学会等が医療機器を指定、公認、推薦、指導または選用しているとする広告を、原則として禁止しています。実際に医師が推薦している場合でも結論は変わりません。
一方、医師が広告内容を監修した事実や、疾病に関する一般情報を解説することまで一律に禁止されているわけではありません。ただし、「医師監修」の表示や専門家コメントによって、対象製品の効果・性能を医師が保証しているように見えればNGと考えます。
医師による商品推薦は、事実であってもNG
医療機器広告では、原則次のような表現は使えません。
「医師推奨の家庭用治療器」
「専門医が選んだ医療機器」
「医師も効果を認めています」
「○○クリニック推薦」
「学会公認の医療機器」
「医療従事者の98%がおすすめ」
医薬品等適正広告基準第4の10は、医薬関係者、病院、診療所、薬局のほか、効能効果等に関して一般の認識へ相当の影響を与える公務所、学校、学会を含む団体による指定、公認、推薦、指導、選用等の広告を禁止しています。
この規制は、推薦が虚偽だから禁止するものではありません。医師や医療機関の推薦が一般消費者の判断に与える影響が大きいため、一定の特別な場合を除き、推薦が事実でも不適当とするものです。
薬機法66条2項と適正広告基準は分けて考える
医師推薦広告を確認するときは、薬機法第66条第2項と医薬品等適正広告基準第4の10を分けて整理します。
薬機法第66条第2項は、医療機器の効能、効果または性能について、医師その他の者が保証したと誤解されるおそれのある広告を、虚偽・誇大広告に当たるものとして規制しています。医師本人が「推薦」と言っていなくても、白衣の画像や肩書、コメントの配置によって保証と受け取られれば対象になります。
一方、適正広告基準第4の10は、医師、病院、学会等による推薦広告そのものを原則として禁止しています。推薦の事実がある場合でも使えません。推薦の事実自体がなければ、適正広告基準だけでなく薬機法第66条第2項にも抵触します。
つまり、「本当に医師が推薦しているから掲載できる」という説明は通りません。
薬機法の概要については「薬機法(薬事法)とは?薬事法との違い・規制対象・66条/68条を基礎から解説」で詳しくまとめています。
事例1:家庭用低周波治療器の「整形外科医がおすすめする」の記載

家庭用低周波治療器のLPで、医師の顔写真とともに次のコピーを掲載したとします。
整形外科医の私もおすすめします。肩こりに悩む方に使ってほしい治療器です。
この表現はNGです。
医師が特定の医療機器を消費者へ推薦していることが直接の理由です。コメントが医師本人の感想であっても、適正広告基準上の結論は変わりません。
さらに、「肩こりに悩む方に使ってほしい」と医師が語ることで、対象製品の効果や適応を医師が保証している印象も生じます。広告対象製品の使用目的または効果が「肩こりの緩解」の範囲内でも、医師推薦の問題は別に残ります。
修正する場合は、医師の推薦部分を削除します。製品の訴求は、「肩こりの緩解に」「○段階の出力調整」「設定時間後に自動停止」など、承認・認証範囲と確認できる製品事実から組み立てます。
実務で医薬品等適正広告基準を見直す際は「医薬品等適正広告基準を実務で読む|承認範囲・ビフォーアフター・医師推薦の判断軸」もご覧ください。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
「承認範囲内の効果しか話していないので、医師コメントも使える」と判断するのは誤りです。承認範囲の規制と、医薬関係者による推薦の規制は別に確認します。
制作現場では、コメント原稿だけでなく、肩書、白衣、病院名、写真、見出しまで一つの広告として見てください。本文が穏当でも、上部に「医師推奨」と大きく表示すれば、広告全体では推薦と考えられます。
事例2:「医師監修」の表示はどこまで使えるか


医師が記事や広告内容を確認した事実を「医師監修」と表示することは、直ちに商品推薦と同じではありません。
監修した範囲、医師の肩書や写真、商品との位置関係、購入導線を含む広告全体から、医師が対象製品を推薦し、または効果を保証しているように見えないかを個別に確認する必要があります。
ただし、次のような見せ方はNGです。
「医師監修だから効果も安心」
「専門医監修の高性能治療器」
「医師監修・医学的に認められた効果」
「○○医師監修」というバッジを購入ボタンの横に置く
「○○医師監修」というバッジを購入ボタンの近くに表示すると、医師が商品の購入を勧め、効能・性能を保証しているように受け取られる可能性が高くなります。
こうした表現は、監修という事実を対象製品の効能、性能、安全性の保証へ結びつけています。
監修表示を行う場合は、何を監修したのかを明確にします。たとえば、「肩こりに関する一般解説部分を○○医師が監修」とし、商品推薦や使用者への推奨と混同させない設計が必要です。
ただし、一般情報の直後に「そこでおすすめなのが本製品です」とつなげれば、ページ全体では医師が商品選択を導いているように見えます。「監修」と書けば推薦規制を回避できるわけではありません。
医療機器広告の表現については「医療機器広告で使える・使えない表現集|NG表現・OK表現・薬機法チェックの実務ガイド」で詳しくまとめています。
事例3:専門家による作用原理の解説


大学研究者や理学療法士が、医療機器の作用原理を次のように説明したとします。
電気刺激には筋肉へ刺激を与える働きがあります。この製品は肩こり改善におすすめです。
前半の一般的な原理解説と、後半の商品推薦は分けて判断します。
専門家が一般的な技術や身体の仕組みを解説することまで、一律に禁止されているわけではありません。しかし、その解説から広告対象製品の具体的な効果を導き、「おすすめ」と結論づければ推薦広告になります。
また、成分・技術・作用原理に関する研究があっても、その結果を個別製品の承認・認証範囲を超える効能効果へ広げることはできません。
修正するなら、専門家コメントを商品推薦から切り離します。そのうえで商品部分では、承認・認証された使用目的または効果と製品仕様を、広告主の責任で正確に説明します。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
専門家コメントを入れる目的は、多くの場合「信頼性を上げたい」からです。しかし、信頼性を肩書だけで補強しようとすると、医師推薦や効果保証へ近づきます。
必要なのは、専門家に強い結論を言わせることではありません。承認資料、試験条件、製品仕様を制作側が理解し、説明できる形へ変換することです。根拠のある表現と、審査を通る見せ方を同時に設計します。
「医療機関で採用」「共同開発」も見せ方で推薦になる
医療機関で使用されている事実や、医師が開発へ関与した事実を表示したいケースもあります。
「医療機関で採用」という表示は、病院や診療所がその製品を選用していることを示すため、医薬品等適正広告基準第4の10の対象となる可能性が高い表現です。採用が事実であっても、一般消費者向け広告で使用できるとは限りません。
「医師と共同開発」という表示も、事実であれば自由に使えるわけではありません。共同開発の内容、医師の肩書や表示方法、商品との位置関係から、医師が対象製品を推薦し、または効能・性能を保証しているように見えないかを個別に確認する必要があります。
たとえば、次のように効果・性能の保証へつなげる表現は使えません。
「医療機関採用だから効果は確実」
「医師との共同開発で治療効果を実現」
「プロが選ぶから安心」
「臨床現場が認めた性能」
病院名や医師名を目立たせ、実質的に「この医療機関が推薦している」と受け取らせる表示もNGです。
採用実績が事実であるかを確認することは必要ですが、事実確認ができても、一般消費者向け広告に掲載できるとは限りません。「医療機関採用」は病院・診療所による選用を示す表現として、第4の10との関係を個別に確認する必要があります。
医療機器の区分による違いは「医療機器の薬機法分類ガイド|一般医療機器・管理医療機器・高度管理医療機器の違いを解説」が参考になります。
景品表示法ではコメントの事実関係も確認する
医師推薦広告には、景品表示法も関係します。
「医師100人中98人が推奨」などの調査表示を行う場合は、調査対象、質問方法、対象製品の提示方法、回答条件などが表示内容と対応している必要があります。
ただし、合理的な調査があっても、医薬品等適正広告基準による推薦広告の禁止が解除されるわけではありません。景品表示法上の根拠があることと、薬機法上使用できることは別です。
「調査結果が事実だから掲載できる」という説明で終わらせないことが重要です。
口コミについては「ステルスマーケティングとは?景品表示法のステマ規制を広告実務者向けにわかりやすく解説」をご覧ください。
広告制作ではコメント原稿以外も確認する
医師・専門家を起用する広告では、次の要素を一体として確認します。
・医師の肩書と所属先
・白衣や診察室の画像
・コメントの内容
・「監修」「推薦」「共同開発」の表示
・商品画像との距離
・CTA付近のバッジ
・動画のナレーション
・広告から遷移するLPの構成
などです。動画広告で医師が一般的な症状を解説し、その直後に商品名と購入ボタンを表示すれば、言葉として推薦していなくても、商品を推奨している印象が生じます。
また、法律上説明できる表示でも、媒体が医師や専門家を用いた広告について独自の掲載基準を設けている場合があります。薬機法上の判断と媒体ごとの判断は分けて管理が必要です。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
医師を撮影した後で「このコメントは使えない」と判明すると、修正はコピーだけでは済みません。再撮影、デザイン変更、契約内容の見直しまで発生します。
企画段階で、医師の役割を「商品推薦」「一般情報の監修」「技術説明」のどれにするのか決めるほうが手戻りが減ります。医師を起用すること自体を目的にせず、広告上必要な役割からの逆算が必要です。そのため、広告チェックを制作終盤へ回さないことが重要です。
まとめ
医療機器広告で、医師、病院、診療所、学会等が特定製品を推薦、公認、選用しているとする表現は、事実であっても原則として使えません。
推薦の事実がなければ、薬機法第66条第2項にも抵触します。また、「医師監修」「共同開発」「医療機関採用」という表示であっても、対象製品の効能、性能、安全性を専門家が保証しているように見せればNGです。
医師や専門家を起用する場合は、商品推薦ではなく、監修した範囲や一般情報の解説範囲を明確にします。コメント本文だけでなく、肩書、画像、バッジ、配置、動画の流れ、CTAまで含めて判断してください。
医療機器広告全体の規制は、「医療機器広告の薬機法完全ガイド|規制・適正広告基準・表現チェックを実務者向けに解説」 をご覧ください。
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参考情報・引用元
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145
(参照日:2026年08月05日) - 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日、薬生発0929第4号)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179264.pdf
(参照日:2026年08月05日) - 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日、薬生監麻発0929第5号)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf
(参照日:2026年08月05日) - 厚生労働省「医薬品等広告に係る適正な監視指導について(Q&A)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html
(参照日:2026年08月05日)
※大学との共同研究、医薬関係者等による推薦、使用前後写真などの具体的な広告事例に関する行政Q&Aです。 - 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html
(参照日:2026年08月05日) - 一般社団法人日本医療機器産業連合会「医療機器適正広告ガイド」(2024年2月改定)
https://www.jfmda.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/%E5%8C%BB%E7%99%82%E6%A9%9F%E5%99%A8%E9%81%A9%E6%AD%A3%E5%BA%83%E5%91%8A%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89_202402%E6%94%B9%E5%AE%9A.pdf
(参照日:2026年08月05日)
※法令・行政通知ではなく、医療機器業界の自主基準です。 - 消費者庁「表示規制の概要」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/
(参照日:2026年08月05日) - 消費者庁「不実証広告規制」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation/not_demonstrated_ad
(参照日:2026年08月05日)
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