「疲労回復」は、商品区分によって結論が変わります。一般的な健康食品では使えません。機能性表示食品でも、届出が「一時的な疲労感を軽減する」であれば、「疲労回復」への言い換えはNGです。一方、医薬部外品や医薬品は、各商品の承認効能に含まれる場合に限り表示できます。浴用剤、OTC医薬品などの事例から、判断資料と修正方法を整理します。
健康食品の「疲労回復」が薬機法上NGになる理由
健康食品で最も直接的な問題は薬機法です。「疲労回復」と表示すると、単なる栄養補給ではなく、身体機能へ作用して疲労状態を回復させると受け取られます。その結果、食品を医薬品のように広告することになり、薬機法68条の承認前広告禁止の問題になります。「朝から復活」「疲れをリセット」「翌日に疲れを残さない」も、摂取による回復作用を広告全体で暗示すればNGです。
判断の全体像は、薬機法違反になる広告表現の判断基準と未承認医薬品広告になるケースもご覧ください。
健康増進法は、健康効果を書いた時点で直ちに違反になる法律ではありません。健康保持増進効果について、著しく事実に相違し、または著しく人を誤認させる表示を規制します。消費者庁も同じ構造を示しています。
景品表示法では、表示した効果を裏付ける合理的根拠が問われます。原料論文があるだけでは、最終商品を「疲労回復」と広告する根拠になりません。しかも、薬機法上使えない表現は、論文や注釈を付けても使えるようにはなりません。
事例1:サプリメントのLPで「飲むだけで疲労回復」

たとえば、一般的なアミノ酸サプリのLPで「1日2粒、たまった疲労を回復」と表示したケースです。この表現はNGです。ランナーの疲れた顔が笑顔へ変わる画像や、「翌朝が違う」という体験談が加われば、回復効果の暗示も強まります。
修正は「疲労回復」を「スッキリ」に置き換えることではありません。「スッキリ」が翌朝の身体状態の改善を意味する構成なら、問題は残ります。含有量、個包装、味、摂取しやすい形状、忙しい日の栄養補給へ軸を移します。
機能性表示食品で、届出が「日常生活で生じる一時的な疲労感を軽減する機能」であれば、その対象者、条件、「一時的」「疲労感」という範囲を保って表示します。「疲労を回復」と短縮するのはNGです。
広告表現に迷う際は、効能効果を避けながら魅力を伝える健康食品の薬機法ライティングや機能性表示食品の届出表示を言い換える判断軸もご覧ください。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
メインコピーが「疲労回復」なら、根拠説明、体験談、人物写真、CTAまで同じストーリーで作られています。単語だけ削ると、訴求が崩れるか、暗示だけが残ります。企画段階で商品区分と表現可能なゴールを決める方が、公開直前の全面改稿を防げます。また、法律上説明できる表現と、媒体考査で通る表現は同じではありません。
事例2:医薬部外品の浴用剤で「一晩で疲労回復」


医薬部外品の浴用剤で、個別商品の承認効能に「疲労回復」が含まれている場合、この表現は使えます。浴用剤製造販売承認基準にも、効能又は効果の範囲として「疲労回復」が明記されています。
ただし、「一晩で完全回復」「入るだけで疲れが消える」はNGです。承認効能に速効性、完全性、効果保証を上乗せしているからです。有効成分が疲労を直接治療するような図解も使えません。
内用のビタミン含有保健剤では、承認基準上「疲労の回復・予防」が効能効果の範囲に含まれます。しかし、すべてのビタミン配合医薬部外品に自動的に認められるわけではありません。配合成分と販売名ごとの承認内容を確認します。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
「医薬部外品だから使えるか」ではなく、「この販売名の承認書に疲労回復があるか」を確認します。薬用化粧品、育毛剤、浴用剤、ビタミン含有保健剤では効能効果が違います。承認書や申請資料を受け取り、使える文言と条件を案件シートへ残せば、手戻りも減らせます。
事例3:「肉体疲労時のビタミンB1の補給」であるOTC医薬品で「疲労回復」を大見出しにする


OTC医薬品でも、商品区分だけで「疲労回復」が使えるわけではありません。仮に、添付文書の効能が「肉体疲労時のビタミンB1の補給」である商品を、「疲労回復薬」と広告するのはNGです。「栄養補給」を、疲労状態そのものを回復させる効能へ広げているからです。
医薬品では、承認された効能効果の文言に基づき、その範囲内でコピーを作ります。「肉体疲労時の栄養補給」であれば、その範囲にとどめ、「疲労回復」へ広げてはいけません。制作前に最新の添付文書をPMDAで確認し、成分一般の働きや類似商品の効能から推測しないことが基本です。
広告表現については、医薬品・医薬部外品の承認効能からコピーを作る方法も判断の際に役立ちます。
実務では「区分・承認文言・広告全体」の順で修正する
最初に、一般健康食品、機能性表示食品、医薬部外品、医薬品のどれかを確定します。次に、機能性表示食品なら届出表示、医薬部外品・医薬品なら承認書と最新の添付文書を確認します。その後、「疲労回復」「疲労感の軽減」「肉体疲労時の栄養補給」のどこまでが認められているかを照合します。
人物の表情、使用前後の演出、グラフ、体験談、CTAも確認します。「疲労回復」を削除しても、時計が巻き戻る動画や「翌朝完全復活」というレビューが残れば修正になりません。根拠を探し、言いたいことを通る形へ変換するところまでが広告設計です。
まとめ
一般的な健康食品で「疲労回復」は使えません。機能性表示食品も、届出が「疲労感の軽減」であれば、「疲労回復」への言い換えはNGです。医薬部外品と医薬品は、個別商品の承認効能に含まれる場合だけ使えます。
「医薬部外品だから」「医薬品だから」で終わらせず、販売名、承認書、届出表示、添付文書を確認してください。修正するときは、NGワードの置換ではなく、商品事実と利用価値へストーリーを組み直します。
薬機法の違反表現について理解したい方は「薬機法違反になる広告表現とは?健康食品・化粧品・医薬部外品で注意すべき判断基準」もご覧ください。
広告規制を守るだけでなく、商品の価値や訴求力を保ちながら表現を組み立てる考え方については、「![]()
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参考情報・引用元
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日、薬発第476号、後続改正あり)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6938&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日、薬生発0929第4号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179264.pdf(参照日:2026年08月08日)
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- 厚生労働省「浴用剤製造販売承認基準について」(平成27年3月25日、薬食発0325第39号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0826&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「浴用剤製造販売承認申請書作成上の留意点等について」(平成27年3月25日)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0869&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「新指定医薬部外品の製造販売承認基準の一部改正について」(平成29年3月28日、薬生発0328第10号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0328_10.pdf(参照日:2026年08月08日)
- 厚生労働省「新指定医薬部外品(ビタミン含有保健剤)の広告等に関する質疑応答集(Q&A)について」(平成29年6月9日)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2713&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月08日)
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- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」PMDA. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcSearch/(参照日:2026年08月08日)
- 消費者庁「健康増進法(誇大表示の禁止)」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/(参照日:2026年08月08日)
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- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/(参照日:2026年08月08日)
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本記事は、法令、通知、ガイドラインその他の公的資料を、各資料の参照日時点で確認したうえで作成しています。
内容の正確性には十分配慮していますが、法令・行政運用の変更や個別事情により判断が異なる場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の広告表現の適法性を保証するものではありません。
実務への適用にあたっては、最新の公的資料をご確認のうえ、必要に応じて所管行政機関または専門家へご相談ください。誤り等が判明した場合は、確認のうえ訂正・更新します。



