医療機器のLPなどで「使用前はつらそうな表情、使用後は笑顔」「装着前は膝が曲がらない、使用後は深く曲がる」といったビフォーアフター画像を掲載できるでしょうか。
医療機器を使った効果を明確に見せるビフォーアフター画像は、一般消費者向け広告では使えません。 承認・認証された効果の範囲内であっても、画像によって「この製品を使えば、この程度まで確実に改善する」「短期間で効果が出る」と受け取られる場合は、薬機法上の効果保証表現になります。
一方、医療機関が行う治療等の広告では、医療法に基づく広告規制が適用されます。
とはいえ、医療機関の治療広告で条件を満たせば掲載できる場合があるからといって、その写真を医療機器メーカーの商品LPへそのまま転用できるわけではないことについて本記事ではお伝えしていきます。
効果を見せるビフォーアフター画像はNG
家庭用治療器、補聴器、弾性ストッキング、医療用マッサージ器、管理医療機器に該当する美容機器などの広告で、次の画像表現はNGです。
- 「使用前」と「使用後」の身体状態を並べ、症状の改善を示す画像
- 膝、腰、肩などの可動域が広がったように見せる画像
- 患部の赤み、腫れ、傷、皮膚状態が消えたように見せる写真
- 使用前の数値と使用後の数値を並べ、治療効果を示す画面
- 暗い表情から笑顔へ変化させ、痛みや症状の解消を暗示する画像
つまり、効果の保証のために掲載するビフォーアフター画像は薬機法上で規制されています。これは「画像はイメージです」「効果には個人差があります」という注釈を付けても解決しません。画像で伝えた中心的な印象を、小さな注釈で取り消すことはできないためです。
医療機器のビフォーアフター画像が薬機法上NGになる理由
直接的な判断基準は、医薬品等適正広告基準の「効能効果等または安全性を保証する表現の禁止」です。
同基準の解説では、使用前・使用後を問わず、図面や写真による表現のうち、承認等の範囲外の効能効果を想起させるもの、効果発現までの時間や効果持続時間を保証するもの、安全性を保証するものは認められないとされています。保証表現は、文章による明示だけでなく、画像による暗示も対象です。
たとえば、承認された使用目的または効果に「肩のこりの緩解」が含まれる家庭用電気治療器であっても、使用前後の写真に「わずか10分」と添えれば、特定時間で効果が現れることを保証する広告になります。
ビフォーアフターが承認範囲を超え、「変形した関節が正常に戻る」「傷んだ組織が再生する」「脂肪が減少する」といった効果まで見せていれば、承認された使用目的または効果を逸脱する問題も生じます。薬機法上、医療機器の効能・効果、または性能に関する虚偽・誇大広告は禁止され、承認前の医療機器について効能効果等を広告することも禁止されています。
事例1|家庭用治療器で「10分後、膝がここまで曲がる」

家庭用治療器のLPで、使用前は膝を浅く曲げた写真、使用後は深くしゃがんだ写真を並べ、「たった10分で、この違い」と表示するケースです。
このビフォーアフター画像はNGです。
画像全体から、この製品を10分間使えば膝の可動域が大きく改善すると受け取られます。「個人の感想です」とつけ加えても、効果発現までの時間と改善程度を保証する印象は消えません。
また、製品の使用目的または効果が「筋肉のこりをほぐす」「神経痛、筋肉痛の痛みの緩解」であれば、関節可動域の改善まで見せることは承認範囲外の効果表現にもなります。
修正時は、After写真だけを削って「使用後はこんな笑顔に」とする方法も使えません。痛みから解放された印象が残るためです。電極の貼付位置、操作手順、タイマー設定、使用可能部位など、確認できる製品情報へ画像の役割を変えます。
医療機器の承認範囲を確認する手順は、JMDN・一般的名称と広告表現の確認方法で詳しく解説しています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
画像は、コピーより先に消費者へ届きます。本文を承認範囲内に整えても、ファーストビューで人物が患部を押さえ、次の画像で元気に運動していれば、「症状が治った」というストーリーが完成します。広告チェックでは文字だけを抜き出さず、人物の表情、姿勢、矢印、色、配置まで確認すべきです。感覚的に選んだクリエイティブであっても、なぜその画像を使えるのか説明できる状態にするという考え方が欠かせません。
事例2|美容系医療機器で輪郭が細くなった比較写真


管理医療機器等に該当する美容用途の機器について、顔の正面写真を並べ、After側だけ輪郭を細く見せるケースです。
承認された使用目的または効果に、脂肪減少や小顔効果が含まれていないなら、この画像はNGです。 「フェイスラインすっきり」という文字を削除しても、写真自体が小顔効果を伝えています。
承認範囲に一定の身体変化が含まれている場合でも、写真の撮影条件が異なれば、景品表示法上の問題が加わります。照明、画角、距離、姿勢、表情、化粧、レンズ、画像補正などによって変化を大きく見せれば、実際より著しく優良な効果があるとの誤認を与えます。
景品表示法の不実証広告規制では、効果・性能表示の根拠として、資料が客観的に実証された内容であり、表示された具体的な効果と資料が対応していることが求められます。ビフォーアフター写真が数例存在するだけでは、広告で表示した効果を裏付ける合理的根拠資料になるとは限りません。
修正では、輪郭の比較を弱く加工するのではなく、機器の使用方法、照射範囲、出力設定、施術時の姿勢などを説明する画像へ変更します。効果を伝える場合は、承認書等で確認した範囲を、保証にならない文章で説明します。
事例3|医療機関の症例写真をメーカーLPへ転載


医療機関が治療紹介ページに掲載している症例写真を、機器メーカーが「導入施設での症例」として商品LPへ転載するケースです。
一定のルールに沿って医療機関のページに掲載できる写真だったとしても、メーカー広告にもそのまま掲載できるという判断は誤りです。
病院・診療所による治療広告では、医療法上、患者を誤認させるおそれのある治療前後の写真は広告できません。
ただし、個々の症例について、治療内容、治療期間・回数、費用、主なリスク・副作用等の詳細情報を写真と一体的に表示するなど、所定の要件を満たす場合には、限定解除として掲載できる可能性があります。複数症例の説明をまとめたり、写真をクリックしなければ説明が表示されなかったりする構成では不十分です。これは医療機関が提供する治療の広告に関するルールです。
医療機器メーカーが製品の販売促進に症例写真を使う場合は、薬機法上の医療機器広告として、承認範囲、効果保証、臨床データの広告利用などを改めて判断します。
症例や試験結果の掲載については、医療機器広告における臨床データ・論文・グラフの扱いも確認してください。また医療機関の広告については「医療広告の実務ガイド」にて体系的にお伝えしています。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
「医師から提供された写真だから使える」「学会発表に出た症例だから根拠になる」という説明は、制作現場で起こりやすい誤解です。資料の信頼性と、その資料を広告へ掲載できるかは別問題です。正しいデータでも、見せ方によって効果保証になります。企画時点で、医療機関の治療広告なのか、メーカーの商品広告なのか、広告の主語を決める必要があります。また媒体の考査基準も法律とは別に確認が必要です。法律上の説明と媒体で通る表現は同じとは限らない点もご注意ください。
ビフォーアフター画像を使わずに効果と商品価値を伝える方法
ビフォーアフター画像の修正は、変化を小さく見せることではありません。まず、「広告で何を伝えたいのか」を整理することが大切です。
製品の効果を伝える場合は、承認書・認証書・届出内容・添付文書を確認し、認められた使用目的や効果の範囲内で表現します。その範囲を超える身体の変化は、コピーだけでなく画像でも使用できません。
使用方法を伝えたい場合は、装着部位や操作方法、使用姿勢、使用時間の設定などを図や写真で説明します。使用シーンを紹介する場合も、効果が現れた姿ではなく、説明書どおりに使用している様子を掲載します。
比較画像を使う場合は、身体の変化ではなく、画面サイズや収納性、装着方法など、客観的に確認できる製品の事実を比較対象にします。なお、他社製品と比較する場合は、比較条件が客観的で正確であることも必要です。
LP全体の画像、口コミ、CTAについては、医療機器LPの薬機法チェックをご覧ください。
まとめ
ビフォーアフター画像は「加工しているかどうか」ではなく、広告としてどのような効果を伝えているかが判断のポイントになります。
医療機器の効果を明確に示すビフォーアフター画像は、一般消費者向けの商品広告には使用できません。承認範囲内の効果であっても、改善の程度や効果発現時間、持続時間、安全性を保証するような画像は認められないためです。
また、加工していない実在の写真であることや、医師が提供した症例写真であることだけでは掲載の根拠にはなりません。薬機法では承認範囲を超えた表現や効果保証の有無が、景品表示法では画像を含めた広告全体の表示内容と合理的根拠が確認されます。
なお、医療機関が掲載する症例写真には医療法上のルールが適用されます。そのため、メーカーのLP、医療機関のWebサイト、販売店のECサイトを混同せず、「誰が、何を販売するために、どの画像を掲載するのか」を切り分けて判断することが重要です。
なお、医療機器広告についてより体系的に理解したい方は「医療機器広告チェック・制作実務ガイド|LP・バナー・SNS・YouTube・チラシの媒体別注意点 」もご覧ください。
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参考情報・引用元
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145(参照日:2026年08月07日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日、薬生発0929第4号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179264.pdf(参照日:2026年08月07日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日、薬生監麻発0929第5号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf(参照日:2026年08月07日)
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html(参照日:2026年08月07日)
- 厚生労働省「『パルスオキシメータの適正広告・表示ガイドライン』について」(令和4年2月3日事務連絡)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc6477&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月07日)
- 一般社団法人日本医療機器産業連合会「医療機器適正広告ガイド」一般社団法人日本医療機器産業連合会. https://www.jfmda.gr.jp/(参照日:2026年08月07日)
※業界自主基準 - 消費者庁「ステルスマーケティングに関する表示」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/(参照日:2026年08月07日)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/qa/(参照日:2026年08月07日)
- (景品表示法上の優良誤認表示・合理的根拠資料まで本文で解説する場合)
消費者庁「不実証広告規制」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation/not_demonstrated_ad/(参照日:2026年08月07日)
免責事項
本記事は、法令、通知、ガイドラインその他の公的資料を、各資料の参照日時点で確認したうえで作成しています。
内容の正確性には十分配慮していますが、法令・行政運用の変更や個別事情により判断が異なる場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の広告表現の適法性を保証するものではありません。
実務への適用にあたっては、最新の公的資料をご確認のうえ、必要に応じて所管行政機関または専門家へご相談ください。誤り等が判明した場合は、確認のうえ訂正・更新します。



