インフルエンサー投稿やSNS広告で「とりあえず#PRを付けておけばステマ規制は大丈夫」と考えていないでしょうか。
#PRは、広告であることを示す方法として使えます。ただし、#PRという文字をどこかに入れただけでは足りません。
景品表示法のステルスマーケティング規制で求められているのは、一般消費者から見て、その投稿が事業者による広告・宣伝であることが明瞭に分かる状態です。「PR」という用語自体は消費者庁も例示していますが、文字の位置、大きさ、色、他の表示との関係、投稿や動画全体を通じた見え方まで確認されます。
この記事では、SNS投稿、長文投稿、動画、アフィリエイト記事を例に、「#PRを付けたのに問題になる」ケースと修正方法を整理します。
#PRは使える。ただし「付ければ自動的にOK」ではない
広告であることが一般消費者に明瞭に伝わる形で「#PR」といった表示を使うことは可能です。
消費者庁の運用では、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった用語を記載する方法が事業者の表示であることを明瞭に示す例や「A社から商品の提供を受けて投稿している」と文章で説明する方法が示されています。
しかし、規制が求めているのはPRなどの表記があるかどうか、ではありません。
一般消費者が表示内容全体を見たときに、
「これは本人が自主的におすすめしている投稿ではなく、企業の広告・宣伝として行われている」
と判別できることが必要です。
なお、景品表示法上のステルスマーケティング規制の対象となるのは広告主である事業者です。広告・宣伝を依頼されたインフルエンサー自身が、この告示の直接の規制対象になるわけではありません。
だからこそ広告主側で表示方法まで管理する必要があります。
ステマ規制そのものの対象や「事業者の表示」の判断については「ステルスマーケティングとは?景品表示法のステマ規制を広告実務者向けにわかりやすく解説」で詳しくまとめています。
事例1:大量のハッシュタグの最後に「#PR」を入れるだけでは足りない

たとえばInstagramの投稿で、本文には商品の感想が長く書かれ、その最後に、
「#美容 #コスメ #スキンケア #乾燥肌 #おすすめ #購入品 #PR」
と多数のハッシュタグを並べたとします。
投稿が事業者の依頼による広告である場合#PRが大量のハッシュタグに埋もれるなど、表示内容全体から見て一般消費者が広告・宣伝であることを明瞭に認識できない場合には、ステマ告示との関係で問題となります。
消費者庁は、事業者の表示であることが明瞭かどうかを、表示内容全体から判断するとしています。アフィリエイトサイトについても、冒頭に広告表示があったとしても、文字サイズや色などを含めて一般消費者に明瞭であることが必要と説明しています。
修正するなら、投稿冒頭など認識しやすい位置で、
「#PR」
「広告」
「○○社から依頼を受けて投稿しています」
などと表示します。
つまり、「ハッシュタグとして入れたか」ではなく、広告であることを伝える表示として機能しているかを確認する必要があります。
化粧品SNS広告をPR表記・ステマ規制・薬機法の観点から確認する方法は「化粧品SNS広告・インフルエンサー投稿の注意点|薬機法・ステマ規制・PR表記」で詳しくまとめています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
SNS案件では、投稿案のチェック時に本文だけをWordやスプレッドシートで確認することがあります。
しかし、ステマ規制では実際の画面での見え方が重要です。#PRが文章上は入っていても、スマートフォンでは「続きを読む」の後ろに隠れる、他のタグに埋もれる、といったことがあります。
原稿だけでなく、公開時にどの位置へどう表示されるのかまで確認する。ここまでを広告制作の工程に入れておくことが大切です。
事例2:PR表記を投稿本文ではなくリプライに入れるのはNGになりやすい


Xなどで、
投稿本文:
「最近これを使っています。かなりお気に入り!」
その後のリプライ:
「#PR ○○社とのタイアップです」
という形にしたとします。
広告であることを投稿本文から判断できず、リプライを見なければ分からない表示はNGになりやすい方法です。
消費者庁のQ&Aでも、SNS投稿の本文ではなくツリーやリプライに「広告」などと記載した場合、通常は一般消費者がその表示に気付かないおそれがあり、事業者の表示であることが明瞭とはいえない場合が多いとされています。
この場合は、元投稿そのものに「#PR」「広告」などを表示します。
「プロフィール欄にPR案件を掲載することがあります」と書いているだけでも、個々の投稿が広告だと分からないのであれば足りません。
必要なのは、その投稿を見た時点で広告だと判別できる設計です。
景品表示法上の考え方は「口コミ・体験談は景品表示法上使える?優良誤認・ステマ規制・広告利用の注意点」もご覧ください。
事例3:動画冒頭に「PR」と1秒表示すれば必ずOKではない


YouTube、TikTok、Instagramリールなどでは、
動画開始時に1秒だけ
「PR」
と表示し、その後は20分間商品を紹介するケースがあります。
冒頭にPRと表示しただけで、必ずステマ規制をクリアできるとはいえません。
消費者庁は、動画では途中から視聴する場合もあるため、冒頭に「広告」「この動画はプロモーションを含みます」と表示しただけでは、視聴者が見逃すことがあると説明しています。
そして、事案によっては、画面上に継続して「広告」と表示するなど、動画全体を通して事業者の表示であることが明瞭になるようにすることが望ましいとしています。
たとえば動画本編で商品紹介が長時間続くなら、概要欄だけにPR表記を置くのではなく、動画内でも広告案件であることが認識できる設計を検討します。
特に切り抜き動画やショート動画へ二次利用する場合、元動画にあったPR表示が編集によって消えていないかも確認します。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
動画案件では「元動画にはPRを入れていたからOK」で終わらせることは危険です。
ショート版、切り抜き、広告配信用素材、SNSへの転載など、一つの素材が複数媒体へ展開されることがあります。その過程でPR表示だけ落ちることがあります。
これは法律知識というより制作管理の問題です。最終的に公開される素材単位で「広告だと分かる状態になっているか」をチェック項目にしておくとミスや手戻りを減らせます。
アフィリエイト記事も「ページ冒頭にPR」と書けば必ず十分ではない
SNS以外でも同じです。
アフィリエイトサイトの冒頭に、
「この記事には広告が含まれます」
と表示していても、それだけで自動的にOKにはなりません。
消費者庁は、ページ全体から広告であることが明瞭かを見るとしており、文字の大きさや色なども判断要素になると説明しています。
さらに、記事の一部分だけが広告主の依頼による専門家コメントであるなど、その部分が第三者の客観的意見だと誤認されるおそれがある場合には、その付近でも広告主の依頼によるコメントであることが分かる表示が必要になることがあります。
つまり、
「ページの一番上に一度PRと書いた」
だけではなく、消費者が広告ではないと誤解しそうな箇所がページ内に残っていないかを見る必要があります。
#PRを付けても商品説明自体の景品表示法違反は消えない
もう一つ重要なのが、PR表記と広告内容そのものの規制を分けることです。
たとえばインフルエンサー投稿に明瞭な「#PR」が付いていたとしても、
「絶対に痩せる」
「業界No.1」
「通常9,800円→今だけ4,980円」
などの表示に、それぞれ必要な根拠がなければ別途景品表示法上の問題が生じます。
#PRは、広告であることを明らかにするための表示です。広告内容の正確性まで保証する表示ではありません。
健康食品や化粧品なら、さらに薬機法や健康増進法の確認も必要です。
たとえば化粧品のインフルエンサー投稿で明確にPR表記をしていても、一般化粧品について「シワが消えた」「シミが治った」と広告できるようになるわけではありません。
PR表記だけでなく「そもそも事業者の表示なのか」を最初に確認する
すべての商品提供や口コミに「#PR」が必要なわけでもありません。
ステマ規制を確認するときは、まずその投稿が「事業者の表示」に当たるかを判断します。
消費者庁は、企業から商品を無償提供されていても、第三者が自主的な意思で投稿内容を決めている場合には、直ちに事業者の表示になるわけではないとしています。一方、無償提供の目的、企業とのやり取り、取引関係や将来の取引可能性などを踏まえると、自主的な投稿とは認められない場合があります。
したがって実務では、
「商品提供がある=必ずPR」
「報酬がない=PR不要」
と機械的に分けず、事業者の表示であるかの確認が必要です。
商品提供だけの場合の判断は、「商品提供だけでもPR表記は必要?インフルエンサー施策とステマ規制の実務判断」で詳しくまとめています。
実務では投稿原稿ではなく公開画面までチェックする
PR案件では、広告主、代理店、制作会社、インフルエンサーの間で、公開前に次の点を確認します。
まず、その投稿が事業者の表示に当たるのか、
事業者の表示なら、広告であることを何と表示するのか、
その表示が投稿本文、画像、動画、概要欄、リプライなどのどこに出るのか、
を確認します。
さらに実際のスマートフォン表示で、PR表記が「続きを読む」の後ろへ隠れないか、他のハッシュタグに埋もれないか、文字色やサイズによって認識しづらくなっていないかまで見ます。
法律上説明できることと、実際の媒体でどう表示されるかは別の問題です。法令上の整理だけではなく、媒体・表示場所・文脈まで含めた設計を考えていく必要があります。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
PR表記についてクライアントへ説明するときは、「#PRをもっと大きくしてください」だけでは伝わりにくいことがあります。
「法律が求めているのは#PRという文字ではなく、消費者が広告だと分かる状態です」と説明すると判断軸を共有しやすくなります。
一度この基準を社内やインフルエンサー向けの投稿ルールに落とし込めば、案件ごとに同じ確認を繰り返す必要も減ります。NGワード集より、公開画面を想定したチェックリストの方が実務では使いやすい場面があります。
まとめ
#PRはステマ規制への対応方法として使えます。しかし、#PRをどこかに付けただけでは足りません。
景品表示法のステマ規制で求められているのは、一般消費者が広告であることを明瞭に判別できる状態です。2023年10月1日から、このような事業者の表示であることを判別しにくい表示は景品表示法第5条第3号の不当表示として規制されています。
SNS投稿なら、PR表記が大量のハッシュタグに埋もれていないか。リプライだけに表示していないか。動画なら、途中から見ても広告だと分かるか。アフィリエイト記事なら、ページ内の一部分が第三者の客観的意見だと誤認されないか。
こうした視点の確認が求められています。
そして、#PRを明瞭に表示しても、No.1、効果、価格、口コミなどの広告内容について別の景品表示法違反がなくなるわけではありません。
実務では、「#PRを入れたか」ではなく、「この公開画面を初めて見た消費者が広告だと分かるか」を基準にした判断が必要です。
ステルスマーケティング規制については「ステルスマーケティングとは?景品表示法のステマ規制を広告実務者向けにわかりやすく解説」も合わせてご覧ください。
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参考情報・引用元
本記事は、以下の法令、消費者庁の告示・運用基準・Q&A・関連資料を参考に、景品表示法におけるステルスマーケティング規制、SNS・動画・アフィリエイト広告での「#PR」等の表示方法、事業者の表示の判断、広告主の責任および表示管理について整理しています。
個別のPR表記の適否は、事業者と投稿者の関係、依頼・報酬・商品提供の有無、投稿内容への関与、表示位置、文字サイズ・色、媒体の仕様、動画の長さ、広告全体の見え方などにより判断が異なるため、必要に応じて最新の公的資料や専門家への確認を行ってください。
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の指定及び『運用基準』の公表について」消費者庁, 2023年3月28日. https://www.caa.go.jp/notice/entry/032672/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(令和5年3月28日消費者庁長官決定)消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「表示規制の概要」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「景品表示法」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「指針に関するQ&A」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/guideline/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「事業者が講ずべき表示等の管理上の措置の内容」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/faq/guideline/g05/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「アフィリエイト広告等に関する検討会の報告書を公表しました。」消費者庁, 2022年2月15日. https://www.caa.go.jp/notice/entry/027592/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「アフィリエイト広告等に関する検討会」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_003/(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「令和4年版消費者白書 第1部第1章第2節(2)消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2022/white_paper_205.html(参照日:2026年08月31日)
- 消費者庁「令和5年版消費者白書 第2部第2章第3節」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2023/white_paper_231.html(参照日:2026年08月31日)
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