「お客様の声なら、そのまま広告に載せても大丈夫ですよね」「『個人の感想です』を付ければ使えますか」。健康食品のLP(ランディングページ)やECページでは、こうした相談がよく出ます。
結論からいうと、健康食品広告で口コミ・体験談を使うこと自体は禁止されていません。ただし、一般的な健康食品で「便秘が治った」「血圧が下がった」など、商品に医薬品的な効能効果があることを体験談に代弁させる使い方はNGです。実在する利用者の声でも、都合の良いコメントだけを抜き出して誰にでも同じ効果が得られるように見せれば、健康増進法や景品表示法の問題になります。
本記事では、健康食品広告で口コミ・体験談を使う際の判断基準と、「個人の感想です」という注記の限界を、薬機法、健康増進法、景品表示法、SNS投稿に関係するステマ規制の観点から解説します。
健康食品の口コミ・体験談は使える。ただし「効能効果の代弁」には使えない
口コミ・体験談は一律禁止ではありません。「小粒で飲みやすかった」「個包装なので持ち歩きやすい」「味が好みだった」など、味、形状、携帯性といった商品事実や利用価値に関する感想は、広告に使いやすい領域です。
一方、一般的な健康食品で「便秘が治った」「薬を飲まなくても血圧が正常になった」「免疫力が上がった」と掲載することは避ける必要があります。購入者の言葉を引用していても、商品による疾病改善や医薬品的な身体機能への作用を暗示していれば、広告上の判断対象です。
厚生労働省の「医薬品の範囲に関する基準」では、新聞・雑誌の記事、医師や学者の談話、学説、経験談などを引用・掲載することによって、医薬品的効能効果を暗示する表現も判断対象とされています。
食品が医薬品に該当するかは、成分本質、形状、表示された効能効果、用法用量、販売方法等を総合して判断されます。そのため、一般的な健康食品について、体験談で医薬品的効能効果を標ぼう・暗示していないかは重要な確認項目です。商品が無承認の医薬品に該当すると判断される場合は、薬機法第68条の広告規制も問題になります。
健康食品広告全体の基本は、健康食品広告のルール完全ガイドで整理しています。
「個人の感想です」を付けてもNG表示は救えない
消費者庁は、健康食品の体験談を広告で使うこと自体は直ちに虚偽誇大表示等に当たらないとしています。一方、「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」などと表示しても、虚偽誇大表示等に当たるかどうかの判断には影響しないと明示しています。
薬機法では、一般的な健康食品に医薬品的効能効果を標ぼう・暗示していないかを確認します。健康増進法では、健康保持増進効果等について著しく事実に相違する表示、または著しく人を誤認させる表示かを見ます。健康効果を書いただけで直ちに違反になるわけではありません。景品表示法では、商品の効果等を実際より著しく優良に示していないか、表示に対応する合理的根拠があるかを確認します。
事例1:「便秘が治った。もう薬に頼っていません」は使えない

たとえば一般的なサプリメントのLPで「3か月飲み続けて便秘が治りました。もう薬に頼っていません」と掲載するケースです。
このように、一般健康食品について商品による便秘の治療や医薬品からの離脱を標ぼう・暗示する体験談は避ける必要があります。薬機法上の医薬品該当性・広告規制を確認すべき表現です。 便秘の治療や医薬品から離脱できる効果を商品に結び付けています。「※個人の感想です」と追記しても、商品による疾病改善の印象は消えません。
修正するなら、「スッキリしました」などへ言い換えず、訴求軸を変えます。「毎日の習慣に取り入れやすかった」「小粒で飲みやすかった」など、商品事実へ移します。
健康食品で使えない疾病・ダイエット・美容・疲労系の表現は「健康食品広告のNG表現一覧|ダイエット・疾病・美容・疲労系の使えない表現とリライト例」で詳しくまとめています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
体験談の危ない一文だけを削っても、LP全体が「この商品で悩みが解決する」というストーリーなら、訴求の構造は残ります。先に商品区分と表現できる範囲を決め、その範囲で口コミを集める方が、制作後の大幅な修正を減らせます。広告チェックを最後だけに置かず、企画段階から組み込むという考え方です。
事例2:「3か月で8kg減」に「個人の感想です」を付けても足りない


仮にダイエットサプリのLPで「このサプリを飲んで3か月で8kg減りました」と掲載し、「個人の感想です」と表示するケースです。
この注記だけでは十分とはいえません。消費者庁は、実際には食事療法や薬物療法を併用しているにもかかわらず、健康食品だけで効果が得られたように見せる体験談や、都合のよい体験談だけを引用して、誰でも同じ効果が期待できるように見せる表示を問題となる例として挙げています。
健康増進法では著しい事実相違・誤認、景品表示法では優良誤認や表示の根拠を確認します。個別の購入者コメントや、事業者に寄せられた好意的な体験談を集めただけでは、通常、商品の効果・性能を裏付ける客観的根拠とはいえません。
体験談やモニター調査を根拠とする場合は、無作為抽出などにより、統計的な客観性が十分に確保されている必要があります。ただし、景品表示法上の根拠資料として評価される余地があることと、一般健康食品で医薬品的効能効果を広告できることは別に確認します。
ダイエット訴求は、健康食品広告で「痩せる」「脂肪燃焼」は使える?で詳しく解説しています。
事例3:依頼したインフルエンサー投稿を「一般のお客様の声」に見せない


たとえばインフルエンサーに投稿を依頼し、その投稿を「愛用者のリアルな口コミ」としてLPへ転載する場合は、ステマ規制も確認します。
消費者庁のQ&Aでは、好意的な評価だけを選んで「お客様の声」として掲載する場合や、事業者の表示に当たるインフルエンサー投稿を自主的な顧客の声のように見せる場合、「事業者の表示」であることを明瞭にする必要があると整理されています。
ただし、「PR」と表示しても内容まで自由にはなりません。広告であることを明示する問題と、その健康食品について表示できる効能効果の範囲は別問題です。
景品表示法上の口コミ利用は、口コミ・体験談は景品表示法上使える?も確認してください。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
法令上の表示範囲と媒体側の広告審査も分けて考えます。口コミの内容だけでなく、「どこで出すか」「誰の投稿をどう使うか」まで企画段階で決めておく。内容が法律上説明できても媒体独自基準で止まることがあるため、掲載先まで含めて設計するのが実務です。
実務では「内容・選び方・見せ方」の3点を確認する
まず確認するのは商品区分です。一般健康食品、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品では、広告で表現できる範囲が異なります。
次に、口コミの内容を見ます。疾病の治療・予防や、医薬品的な身体機能への作用、体重・血圧等の数値変化を商品効果として見せていないかが確認ポイントです。機能性表示食品や特定保健用食品の場合は、届出表示・許可表示の範囲を超えていないかも確認します。
さらに、好意的な声だけを恣意的に選んでいないか、コメントを切り取って意味を強めていないか、広告依頼した投稿を自然発生の口コミに見せていないかも確認が必要です。
LP全体での体験談の見え方は、健康食品LPの広告チェックも併せて確認すると整理しやすくなります。
一般健康食品では、実務上、医薬品的な効能体験を誘導する質問は避けた方が管理しやすくなります。「どんな効果がありましたか」ではなく、「味や大きさはどうでしたか」「どんな場面で取り入れていますか」など、表示可能な範囲の回答が集まる設計にしておくことが重要です。
まとめ
健康食品広告で口コミ・体験談を使うこと自体は禁止されていません。ただし、一般的な健康食品で、疾病の治療・予防や、医薬品的な身体機能への作用を購入者の体験談に代弁させることは避けるべきです。「個人の感想です」と注記しても、広告全体から同じ効果を認識させる場合は、その印象を打ち消せるとは限りません。
実在する体験談であっても、都合のよい声だけを抜き出したり、誰にでも同じ効果が得られるように見せたりする表示には注意が必要です。健康増進法・景品表示法の観点から、広告全体として実際以上の効果を期待させていないかを確認します。SNS施策では、ステルスマーケティング規制も別に見ます。
口コミを削るか残すかだけで判断するのではなく、「何を伝えたいのか」まで戻ることが重要です。味、形状、携帯性、利用場面など、商品区分上表現できる訴求へ組み直します。
健康食品広告について体系的に理解したい方は「健康食品広告のルール完全ガイド|薬機法・健康増進法・景品表示法と商材別注意点を解説」もご覧ください。
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参考情報・引用元
本記事は、以下の法令、公的機関・公式資料・関連通知を参考に、健康食品広告における口コミや体験談の活用について、薬機法上の医薬品該当性、効能効果の暗示、健康増進法における虚偽・誇大表示、景品表示法上の優良誤認・不実証広告規制、ならびにステルスマーケティング規制の観点から整理しています。
個別の広告表現の適否は、商品区分、体験談の収集・選定プロセス、広告主の関与態様、謳われる効能効果、合理的根拠の有無、注釈の見せ方、ビジュアルを含む広告全体の印象などを総合的に判断する必要があるため、必要に応じて最新の公的資料や専門家への確認を行ってください。
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年08月07日)
- 厚生省薬務局長「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日薬発第476号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6938&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年08月07日)
- 厚生省医薬安全局監視指導課長「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日医薬監第148号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb5413&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年09月01日)
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