「免疫力アップ」「免疫を高めてウイルス対策」。健康食品やサプリメントでは、冬場や季節の変わり目にこうした広告企画が出やすくなります。
一般的な健康食品で「免疫力アップ」「免疫機能を高める」は使えません。「風邪予防」「インフルエンザ対策」「感染症から守る」と、疾病の予防を商品に結び付ける表現もNGです。一方、機能性表示食品で免疫機能に関する機能性を届け出ている商品は、届出表示と科学的根拠の範囲内で表示できる場合があります。
本記事では、健康食品広告で「免疫力アップ」や感染症対策を訴求するときの注意点を、薬機法、健康増進法、景品表示法、機能性表示食品の届出表示の観点から解説します。
一般的な健康食品の「免疫力アップ」はNG。機能性表示食品は届出内容を確認する
一般的な健康食品・サプリメントについて、商品や成分の作用として「免疫力アップ」「免疫機能を向上」「病気に負けない体へ」と、身体機能を高める効果を訴求することは避ける必要があります。 「風邪を予防」「インフルエンザ対策」「ウイルスから体を守る」のような疾病予防の訴求も使えません。厚生労働省の基準では、疾病の治療・予防や身体機能の一般的な増強・増進は、医薬品的な効能効果として整理されています。
一方、機能性表示食品は区分を分けて考えます。厚生労働省の基準では、食品表示基準に基づき届け出た表示内容を表示する機能性表示食品は、原則として医薬品としての目的を有するものとは認識しない扱いです。したがって、届出表示に免疫機能に関する機能性が含まれていれば、その範囲を起点に広告を設計できます。
ただし、「維持」を「アップ」「強化」に変えてよいわけではありません。機能性表示食品でも、科学的根拠情報の範囲を超える広告は景品表示法や健康増進法の問題になります。
健康食品で使えない表現を横断的に確認する場合は、健康食品広告のNG表現一覧も参照してください。
健康食品の「免疫力アップ」が薬機法上NGになる理由
一般的な健康食品で最も直接的な問題は、薬機法上の医薬品該当性です。
厚生労働省の「医薬品の範囲に関する基準」では、疾病の治療・予防を目的とする効能効果と、身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする効能効果を医薬品的な効能効果として扱っています。また、名称、成分説明、記事、専門家の談話、経験談等によって同じ効能効果を暗示する場合も対象です。
したがって、「感染症を予防する」は疾病予防、「免疫力を高める」は身体機能の増強を標ぼうする表現です。商品説明からコピーを削除しても、成分解説や図解で同じ作用を暗示していれば解決しません。
健康食品で問題になりやすいNG表現と修正方法は「健康食品広告のNG表現一覧|ダイエット・疾病・美容・疲労系の使えない表現とリライト例」で整理しています。
健康増進法では「免疫」と書いただけで違反になるわけではない
健康増進法は、健康効果を書いた時点で直ちに違反になる法律ではありません。健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示、または著しく人を誤認させる表示を禁止しています。
消費者庁の留意事項では、「インフルエンザ、コロナウイルスの予防に」「免疫機能の向上」「免疫力を高める」が健康保持増進効果等の例として掲載されています。これは「掲載されているから即違反」という意味ではありません。広告がどのような効果を示し、その効果と実際の根拠が対応しているかを確認します。
3法令を商品区分ごとに整理した健康食品広告の基本は「健康食品広告のルール完全ガイド|薬機法・健康増進法・景品表示法と商材別注意点を解説」でまとめています。
景品表示法では「免疫細胞のデータがある」だけでは足りない
「原料試験で免疫細胞が活性化したから、感染症予防まで言える」という組み立てはできません。
消費者庁は、免疫力が高まることによって疾病の治療・予防効果が得られると表示した商品について、一部の免疫細胞を活性化する試験データだけでは、その商品の疾病治療・予防効果を実証したことにならない例を示しています。
景品表示法では、資料が存在するかだけでなく、広告で示した効果と資料の内容が対応しているかを確認します。原料研究を完成商品の「感染症を防ぐ」という効果へ広げることはできません。
研究データの広告利用については、健康食品広告で論文・研究データは使える?で詳しく解説しています。
事例1:一般サプリの「免疫力を高めて風邪・インフルエンザ対策」

たとえば、一般的なサプリメントのLP(ランディングページ)で「免疫力を高めて、風邪・インフルエンザに負けない毎日へ」と掲載するケースです。
この表現は、一般健康食品の広告として慎重な確認が求められます。「免疫力を高める」は身体機能の増強を想起させ、「風邪・インフルエンザに負けない」という表現は、文脈上、疾病予防を商品に結び付けているように受け取られるためです。
「季節の変わり目をサポート」「守る力を応援」などへ言い換えた場合でも、それだけで印象が解消されるとは限りません。本文に「感染症予防」と直接書いていなくても、研究データ、商品説明、ウイルスや盾の画像、マスク姿の人物などを組み合わせることで、商品を摂取すれば感染症を予防できるように見える場合があります。その場合、医薬品的効能効果の暗示や、景品表示法・健康増進法上の論点が残ります。
ただし、ウイルスや盾の画像そのものが一律に使えないわけではありません。コピー、画像、成分説明、購入導線を含め、広告全体から商品による感染症予防を認識させていないかが確認ポイントです。
修正する場合は、感染症予防や免疫機能の増強から離れます。配合成分、含有量、形状、味、携帯性、毎日の生活に取り入れやすいといった、客観的に確認できる商品事実へ訴求軸を移す必要があります。
ファーストビューからCTAまで広告全体を確認する方法は「健康食品LPの広告チェック|ファーストビュー・CTA・体験談・グラフの注意点」で整理しています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
LP制作で手戻りが大きくなるのは、「免疫」を軸にストーリーを完成させてから、最後にコピーだけ直そうとする場合です。メイン訴求が商品区分上使えなければ、ファーストビューだけでなく成分説明、図解、CTA(行動の指示)まで作り直すことになります。商品区分と使える訴求は、企画段階で決めておく方が制作も広告審査も進めやすくなります。
事例2:機能性表示食品の「免疫機能の維持」を「免疫力アップ」に変更


仮に、免疫機能に関する機能性を「維持する」という趣旨で届け出ている機能性表示食品があるとします。
この場合、「免疫力をアップ」「免疫機能を強化」など、増強・向上まで期待させる表現へ広げると、届出内容や科学的根拠を超える表示となるおそれがあります。「維持」と「アップ」「強化」では、消費者が受け取る効果の方向や程度が変わるためです。
ただし、「維持」を「アップ」に言い換えたら直ちに違反、という禁止語表があるわけではありません。確認すべきなのは、届出表示、機能性関与成分、対象者、科学的根拠、広告全体の印象が対応しているかです。
機能性表示食品だからといって、免疫訴求を自由に広げられるわけではありません。届出された機能が「維持」である場合は、その科学的根拠を「増強」「向上」の根拠として扱っていないかを確認します。消費者庁のQ&Aでも、科学的根拠情報の範囲を超えた広告・宣伝について、景品表示法・健康増進法上の規制を踏まえるよう示されています。
制度全体は機能性表示食品の広告ルール、言い換えの判断は機能性表示食品の届出表示はどこまで言い換えられる?で整理しています。
事例3:研究データとウイルス画像で「感染しにくい体」を暗示する


一般的な健康食品の広告で、「研究で免疫細胞の活性を確認」とグラフを掲載し、その横にウイルスを盾で跳ね返すイラストを配置するケースです。
本文に「感染症予防」と直接書いていなくても、広告全体から商品による感染症予防を認識させる場合は注意が必要です。薬機法では、キャッチコピーだけでなく、成分説明や画像、グラフ、購入導線を含めて、医薬品的効能効果を暗示していないかを確認します。景品表示法でも、表示全体から一般消費者が受ける印象・認識が判断材料になります。
研究データは、「あるから掲載する」のではなく、その効果を商品区分上広告できるのかを先に確認することが重要です。商品区分上表現できない効能効果は、論文やグラフを添えても広告できるようになるわけではありません。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
根拠があることと、広告として通ることは同じではありません。研究資料を丁寧に載せることで、かえって商品自体の効能効果を強く暗示することもあります。また、法律上説明できる範囲でも、媒体独自の広告審査で止まることがあります。根拠、コピー、ビジュアル、出稿先まで一つの広告設計として確認します。
「免疫」を弱い言葉に置き換えず、商品区分から修正する
一般的な健康食品なら、免疫機能の向上や疾病予防から離れ、原材料、栄養成分、含有量、味、形状、利用場面などの商品事実へ戻します。「バリア」「守る」「負けない」といった言葉も、感染症防御を暗示する文脈なら使いません。
機能性表示食品なら、届出表示そのものを起点にします。主語が商品なのか機能性関与成分なのか、「維持」なのか「改善」なのか、対象者は誰なのかを確認します。ウイルス画像、盾のアイコン、疾病名などが、届出範囲を超える印象を追加していないかも確認してください。機能性表示食品の広告は、科学的根拠の範囲を超えて消費者を誤認させる表示を避ける必要があります。
健康食品広告全体の判断フローは、健康食品広告のルール完全ガイドも併せて確認すると整理しやすくなります。
まとめ
一般的な健康食品について、商品の摂取により「免疫力がアップする」「免疫機能が高まる」と受け取られる表示は、医薬品的な身体機能の増強を標ぼうするものとして注意が必要です。
また、その摂取により「風邪を予防する」「インフルエンザ感染を防ぐ」「感染症から体を守る」と受け取られる表示も、疾病予防の標ぼうに当たるおそれがあります。「対策」「守る」といった言葉自体が一律に禁止されるわけではありません。ただし、商品画像、成分説明、購入導線などと結び付き、その商品の予防効果を訴求していないかは確認ポイントです。
機能性表示食品で免疫機能に関する届出がある場合は、届出表示と科学的根拠の範囲内で広告を設計します。「維持」を「アップ」へ変えるなど、届出表示より効果を強く見せる言い換えになっていないかも確認します。
広告チェックでは、「免疫」という単語だけを見るのではなく、商品区分、届出内容、根拠資料、コピー、画像、グラフ、CTAまで含めて、広告全体の印象を確認してください。
健康食品広告について体系的に理解したい方は「 健康食品広告のNG表現一覧|ダイエット・疾病・美容・疲労系の使えない表現とリライト例」もご覧ください。
広告規制を守るだけでなく、商品の価値や訴求力を保ちながら表現を組み立てる考え方については、「![]()
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参考情報・引用元
本記事は、以下の法令、公的な指針・公式資料を参考に、健康食品広告における「免疫力アップ」「免疫機能を高める」「感染症対策」といった表現について、薬機法上の医薬品該当性、健康増進法における虚偽・誇大表示規制、景品表示法上の優良誤認および不実証広告規制、ならびに機能性表示食品の届出表示や科学的根拠との関係を整理しています。
個別の広告訴求の適否は、製品区分、表示指標、特定の疾患との関連性、届出・許可内容、エビデンスの妥当性、ならびにキャッチコピー・成分説明・ビジュアルを含む広告全体の印象等により判断が分かれるため、実務にあたっては最新の公的資料を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年08月11日)
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