「お客様の声なら、メーカーが言っているわけではないから大丈夫ですよね?」
医薬部外品のLP(ランディングページ)やEC制作で、よく出る疑問です。
結論から言うと、医薬部外品の効能効果や安全性について、その効果・安全性を実体験によって裏付けたり保証したりするような口コミ・体験談は、広告では原則として使用できません。 承認された効能効果の範囲内であっても、「使ったら効いた」「悩みが改善した」という体験談にすればよいわけではありません。
一方、薬用化粧品などで、テクスチャー、香り、べたつきなど単なる使用感を説明する口コミには使える余地があります。厚生労働省の「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」はウェブサイトやSNSを含むすべての媒体を対象とし、使用体験談についても具体的な基準を示しています。
この記事では、LPの「お客様の声」とECレビューを分けながら、どこがNGになり、どう修正すれば訴求を残せるのかを整理します。
医薬部外品の「効果を実感した」という口コミ・体験談は使えない
まず結論を整理します。
「シミが薄くなった」「ニキビができなくなった」「髪が増えた」といった効能効果についての口コミ・体験談はNGです。
「個人の感想です」「効果には個人差があります」という注釈を付けても、この結論は変わりません。
医薬品等適正広告基準では、効能効果や安全性について、それが確実であると保証するような表現を禁止しています。その解説では、愛用者の感謝の言葉や使用経験、体験談的広告について、客観的な裏付けにはならず、消費者に効能効果や安全性について誤解を与えるおそれがあるため、一定の例外を除いて行わないこととされています。
東京都の広告講習資料でも、「保湿効果に満足しています」「お肌の状態が明らかに違うことに驚きました」といった体験談がNG例として示されています。反対に、「さっぱりとした使い心地で、使用後もべたつきません」のような単なる使用感は例外として整理されています。
承認された効能効果そのものをメーカーが適正な形で広告することと、消費者の体験として「効いた」と語らせることは別問題です。医薬部外品の効能表現そのものについては、「医薬部外品の効能効果と広告表現|美白・シミ・育毛・ニキビ・デオドラントの注意点」と併せて確認すると整理しやすくなります。
事例1:薬用美白化粧品のLPに「シミが気にならなくなった」

たとえば、薬用美白美容液のLPに次の「お客様の声」を掲載するとします。
「3か月使って、気になっていたシミがかなり薄くなりました。鏡を見るのが楽しみです」
この体験談はNGです。
薬用美白化粧品で「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ」といった効能が承認されていたとしても、「既にあるシミが薄くなった」という表現は承認範囲を超えます。さらに、体験者の言葉によって効果を実証・保証しているように受け取られる点でも問題があります。承認範囲を超える効能表現をしてはならないことは医薬品等適正広告基準にも明記されています。
「※個人の感想です」と付記しても修正にはなりません。広告の中心で「シミが薄くなった」と伝えた後に、小さな注釈で打ち消す方法では体験談そのものが消えないからです。
修正するなら、口コミを弱い効果表現へ言い換えるのではなく、訴求軸を変えます。
「みずみずしく伸びて使いやすい」「毎日のスキンケアに取り入れやすい」といった使用感や利用価値に移す方法があります。
「シミを防ぐ」と「シミが薄くなった」では意味が異なります。医薬部外品広告で使える美白・シミ表現の線引きは「医薬部外品広告で「美白」は使える?」で詳しくまとめています。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
LP制作では「承認効能の範囲なら口コミでも書ける」と整理してしまうケースがあります。しかし、承認範囲の確認と体験談規制は別のチェック項目です。コピー単体では承認範囲内でも、吹き出し、顔写真、年齢、「使って○週間」と組み合わせれば、消費者の実体験によって効果を証明する見せ方になります。レビュー欄は本文とは別枠、と切り離して審査しないことが大切です。
事例2:薬用化粧水の「べたつかず、使いやすい」は掲載できる?


では、次の口コミはどうでしょうか。
「さらっとした使い心地で、べたつきにくいので朝も使いやすいです」
薬用化粧水などの外用製品で、これが事実に基づく純粋な使用感の説明であれば、掲載できる余地があります。
厚生労働省の解説では、目薬、外皮用剤、化粧品等の広告で使用感を説明する場合を体験談規制の例外としています。ただし、使用感だけを過度に強調し、本来の使用目的を誤らせる広告は認めていません。
ここで間違えやすいのが、「実感」という言葉です。
「肌へのなじみのよさを実感」は文脈によって使用感として整理できますが、「美白効果を実感」「肌荒れへの効果を実感」となれば効能効果の体験談です。単語ではなく、そのレビューが何を実感したと言っているのかを見ます。
使用感と効能効果の境界を整理する際は「化粧品で認められる56項目の効能効果とは?」も確認しておくと判断しやすくなります。
事例3:ECモールのレビューをLPへ転載する


ECモールに購入者から、
「これを使い始めてからニキビが治りました」
というレビューが投稿されていたとします。
消費者が自主的に投稿したレビューが、直ちに販売事業者自身の広告表示になるとは限りません。薬機法上の広告該当性は、顧客誘引性、特定性、一般認知性といった要素から判断されます。
しかし、メーカーや販売事業者がそのレビューを選び、LPの「お客様の声」へ転載して販売促進に利用するなら、「購入者が勝手に書いた文章だから」という説明では済みません。実務上は広告素材として薬機法チェックを行うべきです。
景品表示法でも、アンケート回答を好意的なものだけ選んで自社サイトに掲載した場合などは「事業者の表示」に当たり得ると消費者庁が示しています。
したがって、「ニキビが治った」というレビューを転載するのはNGです。レビュー原文だから直せないのであれば、掲載しないという判断が必要になります。
「医薬部外品ECページの薬機法チェック|商品名・画像・レビュー・ランキング表示の注意点」も、ECページ全体を確認するときの関連論点です。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
レビューの審査で見落とされやすいのは、「レビューを書く人」と「そのレビューを広告で使う人」を分けて考えることです。投稿者が自主的に書いたことと、メーカーがその文章を販売促進素材として採用することは同じではありません。制作側では、レビュー原稿が届いた時点で、①効果、②安全性、③使用感、④商品事実に分類すると判断が速くなります。
「PR」と書けば使えるわけではない|景品表示法と薬機法は別に見る
口コミ施策では、薬機法だけでなく景品表示法も分けて確認します。
消費者庁は、事業者がレビュー内容の決定に関与した場合には「事業者の表示」に当たり得るとしています。たとえば「星5を付けること」を条件に特典を与えれば、事業者が内容を決定していると判断され得ます。一方、レビュー投稿自体を条件にクーポンを出しても、評価内容を指定していなければ、通常は事業者の表示には当たらないとの整理も示されています。
ここで重要なのは、「PR」と明示してステマ規制へ対応しても、薬機法上NGの効果体験談が使えるようになるわけではないことです。
景品表示法では広告主体や表示内容の決定関与を確認する。薬機法では効能効果・安全性の体験談になっていないかを確認する。審査項目を分けてください。
また、レビューが商品の品質や効果を実際より著しく優良に見せる場合には、景品表示法の優良誤認も別途問題になります。効果・性能表示については合理的根拠資料の提出を求められる制度もあります。
口コミ施策では薬機法だけでなく、事業者の表示に当たるかという景品表示法上の確認も必要です。景品表示法の広告表現を横断的に確認する場合は「景品表示法の広告表現ガイド 」をご覧ください。
実務では口コミを削除するのではなく「何を語ってもらうか」を変える
効果体験談がNGだからといって、レビュー欄そのものをなくす必要はありません。
薬用化粧品なら、テクスチャー、伸び、香り、容器の使いやすさ、携帯性、日常生活への取り入れやすさなど、効能効果と切り離せる商品価値があります。
たとえば「肌荒れが改善して満足」から「しっとりした使い心地が好み」へ単純に言い換えるのではなく、実際のアンケート設計から変えます。「何が改善しましたか」ではなく、「使用感はどうでしたか」「容器の使いやすさはどうでしたか」と聞く。これなら、後工程で大量のレビューを削除する事態を減らせます。
江良公宏の過去のメルマガでも、法律上説明できる表現と媒体審査で「通る」表現は同じではなく、掲載媒体まで含めて設計するという考え方が示されています。 LP・ECの口コミ設計も同じです。完成後にNGレビューを探すより、企画段階で収集項目を決めた方が手戻りを抑えられます。
効果について語ってもらうのではなく、使用感や使いやすさへ質問軸を移す考え方は、効果訴求から生活者価値へ評価軸をずらす方法にもつながります。
まとめ
医薬部外品広告では、効能効果や安全性についての口コミ・体験談は使えません。承認効能の範囲内であっても、体験談にすれば自由に掲載できるわけではありません。
一方、薬用化粧品などで「べたつきにくい」「さらっとした使い心地」といった単なる使用感を説明する内容には掲載できる範囲があります。
LPへ転載するレビュー、ECモールのレビュー、インフルエンサー投稿では、「誰が書いたか」だけで判断しません。誰が選び、編集し、どこへ掲載し、何を訴求しているかまで確認します。
レビューを残したいなら、NG表現を注釈で打ち消すのではなく、効果の証明から、使用感・商品事実・利用価値へ口コミの役割そのものを変えます。 これが手戻りを減らしながら訴求を残す方法です。
医薬部外品広告について体系的に理解したい方は「医薬部外品の効能効果と広告表現|美白・シミ・育毛・ニキビ・デオドラントの注意点」もご覧ください。
広告規制を守るだけでなく、商品の価値や訴求力を保ちながら表現を組み立てる考え方については、「![]()
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参考情報・引用元
本記事は、関連する法令や公的機関、ガイドライン等の公式資料に基づき、医薬部外品広告における口コミや体験談の活用について、薬機法が禁ずる効能効果・安全性の保証表現や、医薬品等適正広告基準における使用体験談の厳格な取扱い、使用感訴求の例外、さらにECサイトのレビュー転載・選別に潜むリスク、景品表示法上のステルスマーケティング規制および不当表示(優良誤認・不実証広告)防止の観点から解説しています。
個別の広告表現の妥当性は、製品ごとの承認内容やレビューの具体的内容、投稿者と事業者の関係性、選別・編集の有無、掲載場所のほか、広告全体の印象によって判断が分かれます。そのため、実際の運用にあたっては承認書や最新の公的文献を確認し、適宜専門家へ照会を行ってください。
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年09月05日)
- 厚生労働省医薬・生活衛生局長「医薬品等適正広告基準の改正について」(平成29年9月29日薬生発0929第4号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179264.pdf(参照日:2026年09月05日)
- 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日薬生監麻発0929第5号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf(参照日:2026年08月09日)
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html(参照日:2026年08月09日)
- 東京都保健医療局「医薬品等適正広告基準について」東京都保健医療局. https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/kijyun_2(参照日:2026年08月09日)
- 東京都保健医療局「医薬品等適正広告基準について」広告講習資料. https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/02koukokukijyun-pdf(参照日:2026年09月05日)
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134(参照日:2026年09月05日)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/(参照日:2026年08月09日)
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/(参照日:2026年09月05日)
- 消費者庁「優良誤認とは」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation(参照日:2026年08月09日)
- 消費者庁「不実証広告規制」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/misleading_representation/not_demonstrated_ad/(参照日:2026年09月05日)
- 消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針―不実証広告規制に関する指針―」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_34.pdf(参照日:2026年09月05日)
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