「インフルエンサー本人の感想なら、メーカー広告より自由に書ける」「#PRを付ければ問題ない」。これらは、どちらも誤りです。
一般化粧品のPR投稿が薬機法上の広告に当たる場合、表現できる効能効果は化粧品として認められた範囲を超えられません。また、景品表示法のステルスマーケティング規制では、広告主が表示内容の決定に関与した投稿について、事業者の表示であることを一般消費者に明瞭に示す必要があります。
薬機法とPR表記は別問題です。片方だけ直しても、広告としては完成しません。
#PRを付けても薬機法NGの表現は使えない
一般化粧品の広告で「ニキビが治った」「シミが消えた」「シワが改善した」といった治療・改善をうたう表現は使えません。インフルエンサーの一人称にしても同じです。化粧品の効能表現は、厚生労働省通知で示された範囲を超えられません。
一方、ステルスマーケティング規制は「インフルエンサー投稿なら必ず#PR」とする制度ではありません。まず、広告主が表示内容の決定に関与した「事業者の表示」に当たるかを判断します。該当するなら、広告・PRであることを明瞭にしなければNGです。消費者庁は「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」のほか、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった表示も例示しています。
化粧品広告の基本的な判断方法は、化粧品広告の薬機法チェック入門で整理しています。口コミやBefore/Afterを含む周辺論点は、親記事の化粧品の口コミは薬機法違反になる?も確認してください。
インフルエンサー投稿でも薬機法上の広告になる理由
薬機法66条は、化粧品の効能・効果等について虚偽・誇大な広告を禁止しています。さらに、薬機法66条は 「何人も」を対象としているため、インフルエンサーによる投稿であっても、薬機法上の広告に該当すれば同条の規制対象になります。
薬機法上の広告に当たるかは、厚生労働省通知で「顧客を誘引する意図が明確であること」「特定の商品名が明らかであること」「一般人が認知できる状態であること」の3要件から判断されます。
報酬を支払い、商品名を出し、購入ページへの導線を付けて公開投稿してもらう典型的なPR施策なら、薬機法上の広告に当たることを前提に原稿を設計すべきです。「私の感想です」「個人差があります」という注釈を付けても、一般化粧品で認められていない効能を表現できるようにはなりません。
化粧品の効能表現と、広告であることを明示するステマ規制は別々に確認します。景品表示法における「事業者の表示」の判断やPR表記の基本は「ステルスマーケティングとは?景品表示法のステマ規制」で整理しています。
事例1|「この美容液でニキビが治った」はPR投稿でもNG

たとえば、一般化粧品の美容液を提供し、インフルエンサーが「1週間でニキビが治った。肌荒れに悩む人におすすめ」と投稿するケースです。
この表現はNGです。「ニキビが治った」は疾病の治療を標ぼうする表現で、一般化粧品の効能範囲を超えます。
修正するときも、「治った」を「整った」に機械的に変えるだけでは不十分です。本来伝えたかったのが使用感なら、「みずみずしい使用感」「肌にうるおいを与える」「毎日のスキンケアに取り入れやすい」など、商品区分上表現できる事実へ訴求軸を移します。
インフルエンサー本人が実際に感じた内容でも、広告として掲載する以上、効能体験談を自由に使えるわけではありません。化粧品広告における口コミ・体験談の扱いは「化粧品広告で口コミ・体験談は使える?薬機法上の注意点とOK・NG例」をご覧ください。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
SNS案件で見落としやすいのは、メーカーが作った原稿だけを薬事チェックし、インフルエンサーのアレンジを自由にしてしまうことです。法律上説明できる表現でも、どこで、どの文脈で出すかによって実務上の判断は変わります。媒体ルールと法令は別ですが、公開直前に両方を見るのでは遅く、企画時点で投稿ルールまで設計しておく方が手戻りを減らせます。
事例2|商品提供だけなら必ず#PR、ではない
メーカーが特定のインフルエンサーへ商品を無償提供し、「よければSNSで紹介してください」と伝えたとします。
商品提供があったという一事だけで、法律上いつでも一律に#PRが必須になるわけではありません。消費者庁は、無償提供の目的、インフルエンサーとのやり取り、過去や将来の取引関係などを踏まえ、投稿が本人の自主的意思によるものかを判断するとしています。
反対に、投稿日時、訴求ポイント、必須ハッシュタグ、使用画像、リンク先などを広告主側が具体的に指定していれば、「事業者の表示」と評価されやすくなります。該当する場合は広告であることを明瞭にします。
商品提供案件の判断をさらに分けて確認したい場合は、商品提供だけでもPR表記は必要?を参考にしてください。
事例3|#PRを目立たない場所へ置くだけでは足りない


「#美容 #スキンケア #新作 #おすすめ……#PR」のように、大量の情報の中へPR表記を埋める運用は避けるべきです。ステマ規制で問われるのは「#PRという文字が存在するか」ではなく、表示全体から一般消費者が事業者の表示だと明瞭に判別できるかです。
投稿本文ではなくリプライだけに「広告」と書く方法についても、消費者庁Q&Aは、通常は一般消費者が気付かないおそれがあり、明瞭とはいえない場合が多いとしています。動画も冒頭に一瞬だけ「広告」と出せば必ず足りるわけではありません。動画全体を通じて事業者の表示であることが分かるようにすることが望ましいとされています。
具体的な配置は、#PRを付ければステマ規制は大丈夫?で詳しくまとめています。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
「#PRを入れてください」だけを指示書に書くと、投稿者ごとに位置も見せ方もばらつきます。チェックリスト化するなら、PR表記の文言、配置、動画での表示、投稿後の修正フローまで決めるべきです。薬機法のNGワード集だけではSNS案件の事故は減りません。薬事知識が薄い担当者でも同じ基準で確認できる工程にすることが、差し戻しを減らします。
事例4|PR投稿を「お客様の声」に転載するなら再チェックする


依頼したインフルエンサーのPR投稿を、後日ECサイトへ転載して「お客様の声」と表示するケースも問題になることがあります。
消費者庁Q&Aでは、「事業者の表示」に当たるインフルエンサー投稿を、一般顧客の自主的な口コミに見える「お客様の声」として掲載することは適当ではなく、依頼した投稿であることが明瞭になる形で表示する必要があるとしています。
さらに薬機法も再チェックします。元投稿に「シミが消えた」「シワが改善した」などの表現が含まれていれば、ECサイトへそのまま転載できません。「本人が実際に感じたことだから」という説明では解決しません。
SNS投稿をECサイトへ転載するときは、元投稿の適法性だけでなく、ECページ上でレビューとしてどう見えるかも再確認します。商品名、画像、レビュー、ランキングを含むEC全体のチェック方法は「化粧品ECページの薬機法チェック|商品名・画像・レビュー・ランキング表示の注意点」をご覧ください。
SNS投稿は「効能表現」と「広告であること」を分けてチェックする
実務では、最初に商品区分を確認します。一般化粧品なら化粧品として認められた効能範囲、薬用化粧品ならその商品の承認された効能効果が基準です。そのうえで、文章だけでなく、画像内文字、Before/After、動画のセリフ、テロップ、ハッシュタグ、固定コメント、プロフィールリンク、CTA(行動の指示)まで確認します。
次に、広告主が投稿内容の決定に関与した「事業者の表示」かを整理します。該当するなら広告であることを明瞭に表示します。そして景品表示法上、効果、満足度、No.1表示などの内容自体にも問題がないかを別に確認します。
つまり、「薬機法に通ること」と「ステマにならないこと」は別のチェック項目です。ステマ規制全体の考え方は、ステルスマーケティングとは?景品表示法のステマ規制で補完できます。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
SNS施策は、コピーが完成してから薬事へ回すより、企画段階で「商品区分」「言いたい効果」「インフルエンサーへの指示範囲」「PR表示方法」を決めた方が進めやすくなります。強い訴求が商品区分上使えないなら、弱い言葉へ置換するのではなく、使用感、香り、テクスチャー、利用場面など別の価値へストーリーごと移します。表現したい良さを、根拠を持って説明できる形へ変換する発想が必要です。
まとめ
化粧品のインフルエンサー投稿では、「本人の感想だから自由」「#PRを付けたから大丈夫」という判断は使えません。
一般化粧品の広告なら、効能表現を認められた範囲に収める。広告主が表示内容の決定に関与した投稿なら、事業者の表示であることを明瞭にする。さらに、効果や満足度などの表示内容自体は景品表示法でも確認する。このように分ければ、薬機法とステマ規制を混同せず審査できます。
SNSでは投稿後の修正、広告配信への転用、ECサイトへの転載も起きます。初稿だけではなく、実際の公開形と二次利用までチェック範囲に入れておくことが重要です。
化粧品広告について体系的に理解したい方は「化粧品の口コミは薬機法違反になる?インスタPR投稿・Before/After画像の注意点」もご覧ください。
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参考情報・引用元
本記事は、関連する法令や公的機関、ガイドライン等の公式資料に基づき、化粧品のSNS広告およびインフルエンサーによる投稿について、薬機法が定める広告該当性の判断基準や一般化粧品の効能効果の範囲、さらに景品表示法におけるステルスマーケティング規制、「事業者の表示」とされる要件、PR・広告表記の明確性、物品提供の扱い、動画・返信欄での表示方法、PR投稿の二次利用における留意点などの観点から解説しています。
個別の広告表現の妥当性は、製品の区分や投稿者と事業者との関係性、対価・サンプル提供の有無、投稿内容に対する指示・関与の度合いのほか、本文・画像・動画・ハッシュタグ・リンク等を含めた表示全体の印象、二次活用手法などによって判断が分かれます。そのため、実際の運用にあたっては、最新の公的文献や専門家への照会を適宜行ってください。
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年08月23日)
- 厚生労働省「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日医薬監第148号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/koukokukisei/dl/index_d.pdf(参照日:2026年08月23日)
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