「大学との共同研究」「論文で有効性を確認」「臨床試験済み」。研究データを示せば、健康食品でも強い効果を広告できると思われがちです。
しかし、一般健康食品では、論文を引用して疾病の予防・改善や、医薬品的効能効果に当たる身体機能への作用を標ぼう・暗示することは避ける必要があります。
原料に関する研究結果がある場合でも、そのまま原料を配合した商品自体の効果として表示できるわけではありません。 試験原料と商品原料の同等性、配合量、一日摂取量、対象者、試験期間、評価指標などが、広告表示と適切に対応しているかを確認する必要があります。
論文の掲載自体が、一律に禁止されているわけではありません。研究対象が原料なのか最終製品なのか、試験時の摂取量と商品中の配合量が対応しているか、広告表現が研究結果の範囲を超えていないかを確認する必要があります。
論文は使えるが、原料データだけで商品効果を示せるわけではない
健康食品広告で論文や研究データを使用すること自体は可能です。ただし、「論文が存在する」という事実だけで、商品の効果を広告できる根拠になるわけではありません。
一般健康食品では、論文、医師コメント、学会発表を使って「がんを予防する」「血糖値を下げる」「免疫機能を高める」など、疾病の治療・予防や身体機能の増強・改善を標ぼう・暗示する表示は避ける必要があります。研究内容が正しくても、食品に認められていない効能効果を広告できるようになるわけではありません。
医薬品的効能効果に当たらない表示であっても、原料試験と商品広告の内容が対応していなければ、健康増進法上の虚偽・誇大表示や、景品表示法上の優良誤認表示が問題になり得ます。健康増進法は、健康効果を表示した時点で直ちに違反とする法律ではありません。表示した効果と事実が著しく異なるか、消費者に著しい誤認を与えるかを確認します。
機能性表示食品は、届出表示と届出資料の範囲内で機能性を表示できます。特定保健用食品は、許可された保健の用途の範囲内で表示します。どちらも、論文があれば届出表示・許可表示を超えて訴求できる制度ではありません。
商品区分ごとの基本は、健康食品広告のルール完全ガイドで整理しています。
商品名を直接表示していなくても、研究情報の近くに商品ページへのリンクや販売業者の連絡先が置かれ、表示全体として特定商品の購入を誘引している場合には、商品広告・表示として評価される可能性があります。判断にあたっては、表示主体、リンクの位置、商品との特定性、購入導線、各ページの一体性などを確認します。
一方で、純粋な学術情報として掲載されており、特定商品の購入誘引性や商品との結び付きが認められない場合まで、一律に広告と判断されるわけではありません。
「これは原料の研究です」「商品による効果を示すものではありません」と注記していても、ページ全体として商品による疾病予防や改善を期待させる構成になっていれば、その注記だけで印象を打ち消せるとは限りません。広告全体から、特定商品についてどのような効果を認識させているかを確認する必要があります。
数値改善表現の判断方法は「健康食品広告で血糖値・血圧・中性脂肪は訴求できる?数値改善表現の注意点」で具体的に解説しています。
原料データが商品の合理的根拠になるとは限らない
景品表示法の不実証広告規制では、提出資料が客観的に実証されたものであることに加え、広告した効果・性能と、資料で実証された内容が対応していることが必要です。学術論文も根拠資料になり得ますが、論文であるだけで要件を満たすわけではありません。
確認するのは、原料の基原・規格・製造工程、配合量、1日摂取量、食品形態、対象者、試験期間、評価指標などです。
たとえば、論文では原料Aを1日1,000mg摂取しているのに、広告商品には100mgしか含まれていない場合、その論文だけで商品の同じ効果を裏付けられるとは限りません。試験原料と商品原料で、抽出方法や規格が異なる場合も同様に確認が必要です。
動物試験や培養細胞試験の結果だけで、人が広告商品を摂取した際に同様の具体的な効果が得られると表示することは、通常、十分な裏付けとはなりにくいため注意が必要です。 研究結果を掲載する場合も、「培養細胞における結果」「動物試験の結果」であることを明確にし、ヒトや最終商品で確認された効果のように見せないことが必要です。
また、各原料単体の試験結果を示すだけでは、複数成分を配合した商品の「相乗効果」まで裏付けることはできません。相乗効果を表示する場合は、成分の組合せや最終製品について、その表示に対応する根拠が必要です。
ただし、一般健康食品で医薬品的効能効果に当たる作用を「相乗効果」として広告することは、根拠の有無とは別に薬機法上の問題になり得ます。広告では、研究結果の対象、条件、範囲を確認し、商品効果として実際以上に一般化していないかを確認します。
効果・品質を実際より著しく良く見せる優良誤認や合理的根拠の基本については「優良誤認・有利誤認とは?景品表示法の不当表示を広告実務者向けに解説」をご覧ください。
事例1|一般サプリで「論文掲載成分だから血圧が下がる」はNG

たとえば、一般サプリメントのLPに研究論文のグラフを掲載し、「原料Bの摂取群で血圧が低下」「本品には原料Bを配合」と続けるケースです。表示全体から、本品を摂取すれば血圧が下がると認識される場合、一般健康食品の広告としては原則として使用できません。
薬機法では、直接「血圧を下げる」と書いていなくても、論文、グラフ、原料説明、商品画像、購入導線を組み合わせて、血圧低下作用を標ぼう・暗示していないかを確認します。原料Bに関するヒト試験が実在していても、その内容を一般サプリメントの商品効果として広告できるわけではありません。
景品表示法上も、論文があるだけで、広告商品の合理的根拠になるとは限りません。試験原料と商品原料の規格、配合量、一日摂取量、対象者、試験期間、食品形態などが異なる場合は、研究結果と商品表示が対応しているかを確認する必要があります。
修正する場合は、「健康をサポート」などへ弱く言い換えるだけでは不十分です。血圧への作用という訴求軸を外し、原料名、規格、配合量、形状、味、個包装、携帯性など、客観的に確認できる商品事実を中心に再構成します。
健康食品で使えない疾病・ダイエット・美容・疲労系の表現は「健康食品広告のNG表現一覧|ダイエット・疾病・美容・疲労系の使えない表現とリライト例」をご覧ください。
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
「論文があるか」だけを確認しても、広告審査には使えません。見るべきなのは、その論文が広告商品の、広告で示した摂取条件と効果を支えられるかです。根拠資料はコピーを強くする飾りではなく、どこまで言えるかを決める設計図として扱います。
事例2|原料メーカーの資料をそのまま商品LPに載せるのはNG


たとえば、原料メーカーから「便通回数が増加した」という試験資料を受け取り、その原料を少量配合した一般食品のLPで「おなかの調子を整える」と表示するケースです。
この場合、まず確認すべきなのは商品区分です。「おなかの調子を整える」は、特定の保健用途に関する表示として受け取られる可能性があります。そのため、一般食品として表示できる内容か、機能性表示食品や特定保健用食品などの保健機能食品として認められた表示かを確認する必要があります。
また、原料メーカーの資料は、広告商品の根拠資料と同じではありません。原料試験を根拠とする場合も、試験原料との同等性、商品中の含有量、1日摂取量、最終製品での安定性などを確認します。原料名が同じというだけで、商品表示の合理的根拠になるとは限りません。
「原料について説明しただけ」という整理にも注意が必要です。原料研究の直後に商品画像、配合説明、購入ボタンが配置されていれば、広告全体として商品自体の効果を示しているように受け取られる可能性があります。
研究紹介を残す場合は、研究対象、摂取量、対象者、期間を明確にし、商品との関係を実際以上に見せない設計が必要です。ただし、一般健康食品で医薬品的効能効果に当たる研究結果を商品訴求へ結び付けることはできません。
なお、ファーストビュー、グラフ、体験談、CTAまで含めた確認方法は「健康食品LPの広告チェック|ファーストビュー・CTA・体験談・グラフの注意点」でまとめています。
事例3|成分の研究レビューを「本品で実証」と書くのはNG


機能性表示食品では、科学的根拠の種類によって、広告での主語や表現が変わります。
最終製品を用いた臨床試験、最終製品に関する研究レビュー、機能性関与成分に関する研究レビューでは、根拠の位置づけが異なります。
機能性関与成分の研究レビューによる届出では、その研究レビューが届出商品の機能性表示を支える根拠となります。ただし、最終製品自体を用いた臨床試験ではないため、「本品の臨床試験で実証」「この商品で改善を確認」などと表示することは避ける必要があります。
広告では、機能性関与成分に関する研究報告であることが、消費者に誤認なく伝わるようにします。たとえば、「本品にはAが含まれます。AにはBの機能があることが報告されています」のように、成分に関する報告であることを明確にする必要があります。
また、論文名やグラフを紹介する場合も、届出表示の対象者、機能、部位、程度を超えていないかを確認します。最終製品の試験結果のように見せたり、届出表示より強い効果を印象づけたりしないことが重要です。
届出表示の扱いは、機能性表示食品の広告ルールと届出表示を言い換える際の注意点も確認してください。
実務では論文を7項目に分解して確認する
制作前に、次の7項目を確認します。
- 研究対象が原料か最終製品か
- ヒト試験か動物・細胞試験か
- 試験品と商品の原料・規格が同等か
- 摂取量が一致しているか
- 対象者が一致しているか
- 評価指標と試験期間が表示に対応しているか
- 広告表現が研究結果を超えていないか
論文のタイトルや結論だけで判断してはいけません。研究対象者が疾病罹患者であれば、健康な人向け商品の根拠としてそのまま使えません。統計的有意差があっても、広告で示した外見上の変化や体感まで実証しているとは限りません。
LPでは、論文のスクリーンショット、大学名、白衣の専門家、グラフ、注釈、購入ボタンまで含めて確認します。ページ全体の確認方法は、健康食品LPの広告チェックへつなげられます。



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
科学的に説明できる資料があっても、媒体考査で同じ表現が通るとは限りません。論文画像や大学名を大きく出すと、コピー以上に確実な効果を印象付けることがあります。掲載媒体と広告全体を先に設計し、根拠の範囲を超えずに伝わる見せ方へ変換します。
まとめ
健康食品広告で論文や研究データを使うことはできます。ただし、一般健康食品で医薬品的効能効果を暗示するために論文を引用することはNGです。
原料データを商品広告へ使う場合は、試験原料と商品の同等性、配合量、摂取条件、対象者、評価指標を確認します。原料名が同じ、査読済み論文がある、大学と共同研究をしたという事実だけでは、商品効果の根拠になりません。
機能性表示食品では、届出表示と科学的根拠の種類に合わせて、主語と表現を維持します。公開前には、論文だけでなく、商品区分、配合設計、コピー、グラフ、専門家表示、注記、CTA(行動の指示)を一つの広告として確認してください。
健康食品広告について体系的に理解したい方は「健康食品広告のルール完全ガイド|薬機法・健康増進法・景品表示法と商材別注意点を解説」もご覧ください。
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参考情報・引用元
本記事は、以下の法令、公的な指針・公式資料を参考に、健康食品広告における論文・研究データの利用について、薬機法上の医薬品該当性や効能効果の暗示、景品表示法上の不実証広告規制、健康増進法における虚偽・誇大表示、成分データと最終製品の同等性、ならびに機能性表示食品の臨床試験・研究レビューの取扱いを整理しています。
個別のエビデンスを広告へ落とし込めるかは、商品区分、研究対象、成分の配合量、被験者属性、評価指標、研究デザイン、届出内容、広告全体の印象などにより判断が異なるため、実務にあたっては最新の公的資料を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145(参照日:2026年08月05日)
- 厚生労働省「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日薬発第476号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/content/000658257.pdf(参照日:2026年08月05日)
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- 厚生労働省「無承認無許可医薬品の監視指導について」(昭和62年9月22日薬監第88号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/diet/dl/kanshishidou.pdf(参照日:2026年08月05日)
- 厚生省医薬安全局監視指導課長「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日医薬監第148号)厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb5413&dataType=1&pageNo=1(参照日:2026年09月01日)
- e-Gov法令検索「健康増進法(平成14年法律第103号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103(参照日:2026年09月01日)
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- 消費者庁「機能性表示食品の届出情報検索」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/search/(参照日:2026年09月01日)
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- 一般社団法人健康食品産業協議会ほか「『機能性表示食品』適正広告自主基準(第4版)」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms205_260529_03.pdf(参照日:2026年08月05日)
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