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特定商取引法の禁止行為とは?広告規制・契約書面・メール広告・クーリングオフを実務者向けに解説

「特定商取引法の禁止行為とは?」という見出しのアイキャッチ画像。中央の「まず取引類型を確認」から、「通信販売」と「訪問・電話勧誘販売」の2つに分岐し、通信販売では広告表示・メール広告・最終確認画面、訪問・電話勧誘販売では勧誘方法・契約書面・クーリングオフを確認する構成になっている。下部では、販売方法を確認する、申込みまで確認する、表示と運用を照合するという3つの判断ポイントを示し、媒体名ではなく広告から契約成立までの流れを見る重要性を伝えている。

「このLP(ランディングページ)は特商法上問題ないか」「このステップメールは同意を得た相手にしか送れないのか」「通販にもクーリングオフがあるのか」と迷ったことはないでしょうか。

特定商取引法では、消費者トラブルが生じやすい取引について、広告表示、勧誘方法、契約手続き、書面交付、クーリングオフなどのルールが定められています。ただし、確認すべき内容は、通信販売、訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供などの取引類型によって異なります。

通販・EC・LPでは、販売条件の表示、誇大広告等、メール広告、最終確認画面、返品特約が主な確認対象です。一方、訪問販売や電話勧誘販売では、勧誘目的の明示、不実告知、再勧誘、契約書面、クーリングオフの説明が重要になります。

この記事では、特定商取引法の禁止行為を取引類型ごとに整理し、広告制作、通販運営、広告審査、クライアント説明で使える確認ポイントを解説します。個別案件の判断は、実際の販売方法、表示内容、申込導線、契約実態を踏まえ、公的資料や法務・専門家への確認が必要です。

この記事の要点(まとめ)
  • 禁止行為は取引類型によって異なる:特商法は、すべての広告や販売方法に同じルールを適用する法律ではありません。通信販売、訪問販売、電話勧誘販売など、実際の勧誘方法と契約方法を確認したうえで規制を整理します。
  • 通販はLPだけでなく申込完了直前まで確認する:通信販売では、販売価格、送料、返品条件、定期購入条件、メール配信、申込ボタン、最終確認画面を一連の導線として見る必要があります。
  • 特商法だけで広告確認を終わらせない:健康食品や化粧品の広告では、特商法に加えて景品表示法、薬機法、健康増進法などが関係します。販売条件と商品訴求を分けず、広告全体で確認することが実務上のポイントです。
目次

特定商取引法で禁止される行為・義務違反とは

「特定商取引法で禁止される行為・義務違反とは」という見出しの図解。上部に「まず取引類型を確認」という補足があり、中央には左右2枚のカードを配置している。左の「守るべき義務」カードには、広告・申込画面の表示、契約書面、返品・解約条件を示し、右の「禁止される行為」カードには、誇大広告等、未承諾メール広告、不実告知・再勧誘を示している。下部では、広告から契約後まで取引の流れ全体を見ることと、適用される内容は取引類型によって異なることをまとめている。

特定商取引法は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売などの取引類型ごとに、事業者が守るべき義務と、行ってはならない禁止行為を定めた法律です。

たとえば、通信販売では広告表示や申込み段階の表示、訪問販売・電話勧誘販売では書面交付などが確認対象になります。一方で、誇大広告、未承諾メール広告、不実告知、再勧誘などは、禁止行為として整理されます。

そのため実務では、禁止行為に該当するかだけでなく、法定表示や書面交付などの義務を満たしているかも分けて確認することが重要です。

違反内容によっては、指示、事業者に対する業務停止命令、役員等に対する業務禁止命令、罰則の対象となる場合があります。

禁止行為は取引類型ごとに異なる

実務で最初に確認したいのは、「Web広告か、対面営業か」という媒体の違いだけではありません。消費者が、どのように勧誘され、どの方法で申込みを行ったかを見る必要があります。

たとえば、Web広告を見た消費者が、広告内容を理解したうえでフォームや電話からその商品を注文する場合は、通信販売の規制を中心に確認します。

一方で、広告上では別商品や別契約の勧誘目的を明らかにせず、事業者が消費者に電話をかけるよう促し、その電話で広告にない商品や定期購入などを勧誘する場合には、電話勧誘販売に該当する可能性があります。

つまり、「Webから流入したから通信販売」とも、「消費者から電話をかけたから必ず通信販売」とも限りません。広告内容、電話をかけさせた経緯、電話で勧誘した商品・契約内容を含めて、契約成立までの流れ全体を確認することが必要です。

広告・勧誘・契約手続が確認対象になる

特商法の確認範囲は、広告コピーだけではありません。

  • LPや商品ページの販売条件
  • メールやバナーからリンクする販売ページ
  • 申込ボタンの文言
  • カート画面と最終確認画面
  • 電話やオンライン商談の営業トーク
  • 申込書、概要書面、契約書面
  • 解約や返品に関する案内

これらが互いに矛盾していないかを確認します。

「禁止ワードを使っていないから問題ない」と判断するのではなく、広告から契約後の対応までを通じて、消費者が何を申し込むと理解するかを見ることが大切です。

取引類型別・主な確認項目

取引類型主な場面重点的に確認する項目
通信販売EC、通販LP、カタログ、SNSからの申込み広告表示、誇大広告等、メール広告、返品特約、最終確認画面
訪問販売自宅訪問、キャッチセールス、アポイントメントセールス勧誘目的の明示、再勧誘、不実告知、契約書面、クーリングオフ
電話勧誘販売電話による勧誘・契約氏名等の明示、再勧誘、不実告知、契約書面、クーリングオフ
特定継続的役務提供エステ、語学教室、家庭教師等の一定の継続的サービス概要書面・契約書面、中途解約、誇大広告、クーリングオフ
連鎖販売取引いわゆるマルチ商法氏名等の明示、広告表示、概要書面・契約書面、クーリングオフ

表は概要です。適用除外や個別要件もあるため、実際の案件では該当する取引類型の公的資料を確認してください。

通信販売で注意すべき広告規制と禁止行為

通信販売では、広告の表示事項、誇大広告等の禁止、未承諾者への電子メール広告の提供禁止、最終確認画面の表示などが重要です。通販LPやECサイトは、ファーストビューだけでなく、カート、申込ボタン、最終確認画面まで含めて確認します。

広告に表示すべき事項

通信販売の広告では、販売価格、送料、支払時期・方法、商品の引渡時期、申込期間を設ける場合の内容、返品・解除条件、事業者情報などを表示する必要があります。

継続購入が必要な契約では、その旨と販売条件・提供条件も重要な表示事項です。定期購入であることを小さな注釈だけに記載し、初回価格だけを大きく表示する設計は、消費者が契約条件を正しく把握できない可能性があります。

実務では、次の画面・ページの記載を照合します。

  • 広告バナー、SNS広告
  • 記事LP、商品LP
  • 商品詳細ページ
  • 「特定商取引法に基づく表記」ページ
  • 利用規約
  • カート画面
  • 最終確認画面
  • 注文完了メール
  • 解約・返品案内

ページごとに担当者が異なると、初回価格、通常価格、送料、契約回数、解約方法などが食い違うことがあります。特商法表記ページを設置するだけでなく、購入導線全体の整合性を確認してください。

メールやバナーとリンク先は一体で見られる

電子メールやバナーは、それ自体に詳しい販売条件が書かれていなくても、リンク先で通信販売の申込みができる場合には、リンク先と一体として通信販売広告に該当し得ます。

また、必要事項をリンク先に記載していても、リンクが見つけにくい場合や、何が記載されたリンクなのか不明瞭な場合には、表示義務を満たさないと解される可能性があります。

「詳しくはこちら」というリンクだけで済ませるのではなく、少なくとも販売条件や返品条件を確認できるリンクであることが分かる設計にします。

最終確認画面の表示

インターネット通販の最終確認画面では、消費者が申込みの直前に、分量、販売価格、送料、支払時期・方法、引渡時期、申込期間、返品・解除条件を一覧性をもって確認できる必要があります。

また、契約の申込みとなることを誤認させる表示や、契約条件について誤認させる表示は禁止されています。

たとえば、次のような設計は慎重な確認が必要です。

  • 「送信する」「次へ」など、注文確定か分かりにくいボタン
  • 初回分の価格だけが目立ち、2回目以降の価格が把握しにくい
  • 総額や購入回数が離れた場所に記載されている
  • 解約条件が折りたたまれている
  • LPと最終確認画面で送料や解約条件が異なる
  • 無料診断や会員登録のように見えるが、実際には有料契約の申込みになる

最終確認画面は、法務担当者が文言だけを見るのではなく、実際のスマートフォン画面で、表示順、文字サイズ、ボタン位置まで確認するのが実務的です。

通販LP・ECサイトのチェックリスト

確認対象主な確認ポイント
販売価格税込価格か。初回価格と2回目以降の価格が区別できるか
送料・手数料消費者が負担する金額を把握できるか
定期購入継続契約であること、回数、総額、各回の分量が分かるか
解約条件期限、方法、連絡先、最低購入回数等が実態と一致しているか
返品特約返品の可否、期間、条件、送料負担が分かるか
申込ボタン押すと契約申込みになることが理解できるか
最終確認画面必要事項を一覧性をもって確認・訂正できるか
特商法表記LP、利用規約、カートの記載と一致しているか

特商法の「誇大広告等の禁止」とは

「特商法の『誇大広告等の禁止』とは」という見出しの図解。中央に通販LPの画面イメージを置き、その周囲に、性能・効果、品質・内容、価格・割引・期限、限定表示、定期購入の見せ方、解約の見せ方の6つの確認ポイントをカードで整理している。中央では、事実かどうかだけでなく、誤認させる印象かを見ることを示し、下部では、強調表示・画像・注釈・表示位置を含めて広告全体の印象を確認する重要性をまとめている。

特商法上の誇大広告等の禁止は、通信販売における商品・サービスの性能、品質、販売条件などについて、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利であると人を誤認させる表示を防ぐための規制です。

「誇大広告」という言葉を聞くと、景品表示法だけを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、通信販売については、特商法にも誇大広告等を禁止する規定があります。

実務では、次のような表示を確認します。

  • 商品の性能や効果を実際以上に示していないか
  • 品質、内容量、原材料、製造方法の説明は正確か
  • 販売価格、割引率、申込期限は事実か
  • 「本日限定」「残りわずか」などの表示に根拠があるか
  • 定期購入ではないように見せていないか
  • 解約が簡単であるかのように表示しながら、実際には条件が厳しくないか

ここで大事なのは、個々の文言が事実かどうかだけではありません。強調表示、画像、注釈、表示位置を含め、広告全体から消費者が受ける印象を確認します。

たとえば、「初回500円」という表示自体が事実であっても、継続回数や2回目以降の価格が認識しにくければ、広告全体では契約条件を誤認させる可能性があります。

メール広告を送るときの注意点

特商法では、通信販売事業者や電子メール広告の配信受託事業者が広告メールを送る場合、原則として消費者から事前の承諾を得る必要があります。

承諾や請求に基づいて送信した場合は、最後に広告メールを送信した日から3年間、その記録を保存します。配信同意の取得方法、同意記録、配信停止導線、停止後の処理まで管理しておくことが重要です。

なお、注文確認・契約成立・発送通知など、契約に関する重要な通知メールの一部に広告が付随する場合などは例外となることがあります。ただし、広告を自由に掲載できるわけではないため、内容や見せ方は個別に確認します。

また、特定電子メール法上のオプトイン、受信拒否後の送信禁止、送信者情報の表示などもあわせて確認します。

同意を「取得したつもり」になっていないか

実務で起きやすいのが、会員登録や購入の同意と、広告メール配信の同意を混同するケースです。

チェックボックスを設けていても、次のような状態では、適切な同意取得と評価できるか慎重に確認する必要があります。

  • 広告メールが配信されることが分かりにくい
  • 利用規約の中にだけ配信同意が書かれている
  • チェックを外せない仕様になっている
  • 別サービスで取得したメールアドレスを流用している
  • 共同利用先や配信主体が不明確
  • 同意日時、取得画面、取得経路が記録されていない

特商法上の電子メール広告規制に加え、広告宣伝メールには特定電子メール法も関係します。同法でも、事前同意、受信拒否後の送信禁止、一定の表示義務などが定められています。

そのため、メール配信の確認は「特商法だけ見ればよい」と考えず、個人情報の取扱いや特定電子メール法も含めて設計します。

メール広告の運用チェック

  • 配信同意を取得する画面を保存しているか
  • 同意日時、取得元、対象アドレスを記録しているか
  • どの事業者から何のメールが届くか分かるか
  • 配信停止方法が分かりやすいか
  • 配信停止後に再送されない仕組みがあるか
  • 委託先と配信リストの更新ルールを共有しているか
  • 注文確認メールに広告を追加する場合、その内容が過度になっていないか

メール本文を広告審査に通すだけでなく、リスト取得から配信停止までの運用フローを確認することが重要です。

契約書面と特定商取引法の関係

「契約書面と特定商取引法の関係」という見出しの図解。中央の「共通の契約条件」から、左の「訪問販売・電話勧誘販売」と右の「通信販売」に分岐している。左側では契約書面の交付と法定事項・形式要件、右側では広告表示・特商法表記と最終確認画面・返品特約を確認する構成。下部では、LP・申込画面・書面を同じ契約条件に基づいて照合する重要性を示している。

契約書面の交付義務や記載事項は、取引類型によって異なります。訪問販売や電話勧誘販売の契約書面と、通信販売における広告表示や特商法表記ページを混同しないことがポイントです。

訪問販売・電話勧誘販売では書面交付が重要

訪問販売や電話勧誘販売では、契約の申込み時や契約締結時に、法定事項を記載した書面を交付することが原則です。ただし、2023年6月1日以降は、所定の説明・確認を行い、消費者の真意に基づく承諾を得た場合に限り、電磁的方法で提供できる制度もあります。

紙の法定書面では赤枠・赤字、文字サイズなどの形式要件があります。一方、電磁的方法で提供する場合は、提供方法、ファイル形式、紙の書面を受け取れることの説明、消費者が内容を確認できる環境なども確認します。

通信販売では「契約書を交付すればよい」ではない

通信販売では、訪問販売と同じ契約書面交付ルールをそのまま当てはめるのではなく、広告表示、返品特約、最終確認画面などを中心に確認します。

通販事業者が独自に利用規約や契約確認書を設けることはありますが、それによってLPや最終確認画面の表示不足を補えるとは限りません。

実務では、次の内容が一致しているかを照合します。

資料・画面照合する内容
LP・商品ページ価格、期間、契約回数、特典、解約条件
特商法表記事業者情報、支払方法、引渡時期、返品・解除条件
利用規約契約成立時期、解約、中途終了、禁止事項
最終確認画面分量、価格、送料、支払時期、解除条件
注文確認メール注文内容、総額、配送、契約条件
契約書面取引類型に応じた法定記載事項

契約書面を法務部門だけで作成し、LPを制作会社だけで作ると、条件の不一致が生じやすくなります。広告、申込画面、書面を同じ契約条件表に基づいて制作する方法が有効です。

クーリングオフと特商法の関係

クーリングオフは、すべての特商法対象取引に一律に適用される制度ではありません。訪問販売や電話勧誘販売などには原則として一定期間のクーリングオフがありますが、通信販売には特商法上のクーリングオフ規定がありません。

消費者庁の特定商取引法ガイドでは、訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入は原則8日以内、連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引は原則20日以内と整理されています。一方、通信販売にはクーリングオフに関する規定がありません。

通販では返品特約を確認する

通信販売にクーリングオフがないからといって、事業者が返品について何も表示しなくてよいわけではありません。

通販では、返品の可否、返品できる期間、条件、送料負担などの返品特約を、消費者が確認できるように表示することが重要です。返品に関する事項は、広告表示上、省略できない事項として整理されています。

記事やカスタマーサポートで「商品到着後8日以内ならクーリングオフできます」と案内すると、返品制度とクーリングオフを混同することになります。

自社の返品受付期間を8日間に設定することはできますが、それは事業者が定めた返品特約であり、特商法上のクーリングオフとは別の制度です。

訪問販売・電話勧誘販売では書面と説明を一致させる

訪問販売と電話勧誘販売では、原則として、法定書面を受け取った日から8日以内であれば、書面または電磁的記録によりクーリングオフができます。

実務上は、契約書面に正しい説明があっても、営業担当者が「解約できません」「一度使ったらすべて対象外です」などと事実と異なる説明をすれば問題になります。

営業研修では、契約を取るためのトークだけでなく、クーリングオフや解約に関する質問への回答方法も統一しておく必要があります。

訪問販売・電話勧誘販売で禁止される行為

訪問販売や電話勧誘販売では、広告表示だけでなく、勧誘目的の明示、再勧誘、不実告知、故意の事実不告知、威迫・困惑、契約書面の交付が重要な確認対象です。

勧誘目的を先に伝える

訪問販売では、勧誘に先立って、事業者名、契約締結の勧誘が目的であること、商品・役務の種類を告げる必要があります。

電話勧誘販売でも、事業者名、勧誘者名、商品・役務の種類、契約締結について勧誘する目的であることを告げます。

「無料点検です」「アンケートです」とだけ説明して接触し、その後に高額商品の勧誘を始める方法は、勧誘目的の明示という観点から慎重な確認が必要です。

断られた後の再勧誘

訪問販売では、消費者が契約を締結しない意思を示した場合、その場で勧誘を続けることや、その後改めて勧誘することが禁止されています。

電話勧誘販売でも、契約を締結しない意思を示した消費者への勧誘継続や再勧誘が禁止されています。

営業現場では、「今は結構です」「必要ありません」という回答を、単なる保留と扱って再架電する運用になっていないかを確認します。

不実告知・故意の事実不告知・威迫

訪問販売や電話勧誘販売では、契約締結の勧誘やクーリングオフの妨害に際して、事実と異なることを告げる行為、重要な事実を故意に告げない行為、消費者を威迫して困惑させる行為などが禁止されています。

確認対象は営業担当者の発言だけではありません。

  • 営業用スライド
  • トークスクリプト
  • FAQ
  • チャット対応テンプレート
  • オンライン説明会
  • クロージング用資料
  • 解約阻止トーク

これらも含めて、表示と説明の整合性を管理します。

特商法と景品表示法・薬機法の違い

特商法は主に取引方法、販売条件、勧誘、申込手続きを規制します。一方、景品表示法は商品・サービスの内容や取引条件に関する不当表示を、薬機法は医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等の広告を規制します。実務では、一つのLPに複数の法律が同時に関係します。

たとえば、健康食品の定期購入LPでは、次のように整理できます。

表示・場面主に確認する規制
「初回500円」、総額、解約条件特商法、景品表示法
「今だけ」「通常価格から90%OFF」景品表示法、特商法
病気の治療・予防を期待させる表示薬機法
健康保持増進効果に関する誇大な表示健康増進法、景品表示法
定期購入の最終確認画面特商法
メール配信の同意・停止特商法、特定電子メール法
口コミ、体験談、No.1表示景品表示法、商材によって薬機法等

景品表示法では、商品・サービスの品質等を実際より著しく優良に見せる優良誤認表示や、価格その他の取引条件を実際より著しく有利に見せる有利誤認表示が禁止されています。

健康食品については、健康増進法による虚偽誇大表示の規制も関係します。

したがって、特商法の販売条件だけを確認して「広告チェック済み」とすることはできません。商材カテゴリと広告表現に応じて、関係法令を横断して確認します。

景品表示法や薬機法との関係については「特定商取引法と薬機法・景品表示法の違い|広告制作で確認すべき法令を比較解説」もご覧ください。

LP・EC・メール・契約書面の公開前チェックリスト

公開前チェックでは、最初に取引類型を特定し、その後に媒体別の確認へ進みます。LP、メール、最終確認画面、契約書面を個別に見るだけでなく、同じ条件が一貫して表示されているかを確認します。

1.取引類型を確認する

  • 消費者は広告を見て、そのまま注文するのか
  • 電話やオンライン面談で追加の勧誘を行うのか
  • 消費者の自宅や営業所以外で契約するのか
  • 継続的な役務提供に該当しないか
  • 事業者間取引か、消費者との取引か
  • 適用除外に該当する事情はないか

2.LP・商品ページを確認する

  • 販売価格、送料、手数料が分かるか
  • 定期購入、契約回数、総額が認識できるか
  • 解約・返品条件が実態と一致しているか
  • 申込期限や数量限定表示に根拠があるか
  • 強調表示と注釈を合わせて読めるか
  • 商品の効果・性能に根拠があるか
  • 特商法表記ページへの導線が分かりやすいか

3.メール広告を確認する

  • 広告メールの配信同意を取得しているか
  • 同意記録を保存しているか
  • 配信主体が分かるか
  • 配信停止方法が明確か
  • 配信停止後のリスト更新が行われるか
  • メールとリンク先の条件が一致しているか

4.申込フォーム・最終確認画面を確認する

  • 注文内容を訂正できるか
  • 注文確定ボタンであることが分かるか
  • 分量、価格、送料、支払方法、引渡時期が一覧表示されているか
  • 定期購入の回数、各回の価格、総額が分かるか
  • 解約・返品条件が確認できるか
  • スマートフォンでも重要事項が隠れないか

5.契約書面・営業資料を確認する

  • 取引類型に応じた法定書面になっているか
  • 必要な記載事項と形式要件を満たしているか
  • LPや営業資料と契約条件が一致しているか
  • クーリングオフの記載と口頭説明が一致しているか
  • 営業担当者が不実告知や再勧誘をしない運用になっているか
  • トークスクリプトとFAQが最新か

公開前管理表の例

確認対象担当者主な確認項目根拠資料専門家確認
LP制作・広告審査価格、定期条件、誇大表示特商法ガイド、景表法資料必要に応じて
メールCRM担当配信同意、停止導線特商法、特定電子メール法運用設計時
最終確認画面EC担当一覧性、注文確定表示申込み段階ガイドラインリリース前
契約書面法務・営業記載事項、形式、クーリングオフ取引類型別ガイド原則確認
営業トーク営業・法務不実告知、再勧誘、解約説明特商法ガイド研修時

チェックリストを一度作って終わりにするのではなく、価格改定、キャンペーン変更、カートシステムの更新、解約方法の変更時にも見直す仕組みが必要です。

江良公宏

薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
特商法の確認でよくあるのが、「特商法表記のページは作りました。これで大丈夫ですよね」という相談です。
ただ、実務では、表記ページだけを見ても判断できません。LPでは初回価格を大きく見せ、最終確認画面では定期購入になり、注文後のメールでは別の解約条件が案内されている。こうした条件のずれが、問題につながりやすいからです。
ここで大事なのは、特定の言葉が使えるかではなく、広告から契約までを見た消費者が、何を、いくらで、何回申し込むと理解するかです。
40,000件以上の広告表現支援に関わるなかでも、公開直前に表現だけを直すより、企画段階で取引類型と販売条件を整理した案件の方が、制作も審査も進めやすいと感じます。広告、カート、契約書面を別々に作らず、最初に共通の条件表を作ることをおすすめします。

よくあるご相談(FAQ)

特定商取引法の禁止行為には何がありますか?

特商法の禁止行為は、取引類型によって異なります。通信販売では、誇大広告等、未承諾者への電子メール広告、契約内容を誤認させる申込画面などが主な確認対象です。

訪問販売や電話勧誘販売では、不実告知、重要事項の故意の不告知、威迫・困惑、断った消費者への再勧誘などが問題になります。まず販売方法を特定し、その取引類型に対応する規制を確認してください。

特商法で禁止される広告表現とは何ですか?

特商法は、特定のNGワードだけを定めているわけではありません。通信販売では、商品・サービスの性能や品質、販売条件などについて、著しく事実に相違する表示や、人を著しく誤認させる表示が問題になります。

文言単体では事実であっても、初回価格だけを強調し、継続条件を認識しにくくするなど、広告全体で誤認を招く場合には注意が必要です。

通信販売にもクーリングオフは適用されますか?

通信販売には、特商法上のクーリング・オフ規定はありません。ただし、商品等の売買について広告に返品特約が表示されていない場合は、原則として商品受領後8日以内であれば、消費者の送料負担で申込みの撤回や契約解除ができる制度があります。これはクーリング・オフとは別の制度です。

一方、訪問販売や電話勧誘販売には、原則として法定書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフ制度があります。通信販売の返品ルールとは分けて説明する必要があります。

特商法表記ページを設置すれば十分ですか?

特商法表記ページだけで確認が完了するとは限りません。通信販売では、LP、商品ページ、利用規約、カート、最終確認画面、注文確認メールの内容が一致しているかを確認します。

特商法表記には正しい条件が記載されていても、LPの強調表示や最終確認画面が異なる内容になっていれば、購入導線全体として問題になる可能性があります。

メール広告は購入者に自由に送れますか?

購入履歴があるという理由だけで、すべての広告メールを自由に送れるとは限りません。原則として、広告メールの配信についてあらかじめ承諾を得ているかを確認します。

また、同意を得た日時や取得経路の記録、配信停止方法、停止後のリスト管理も必要です。特商法だけでなく、特定電子メール法や個人情報の取扱いも合わせて確認してください。

電話で定期購入を案内した場合も通信販売ですか?

消費者が広告を見て電話をかけた場合でも、広告にない定期購入や別商品を電話で勧誘する場合は、電話勧誘販売に該当する可能性があります。

「Web広告から電話が来たから通信販売」と媒体だけで判断せず、広告にどの販売条件が記載され、電話で何を勧誘し、どの契約が成立したかを確認します。

景品表示法を確認すれば、特商法の誇大広告対策もできますか?

景品表示法と特商法には重なる部分がありますが、同じ規制ではありません。景品表示法は、商品・サービスの内容や取引条件に関する不当表示を幅広く規制します。

特商法は、特定の取引類型について、広告事項、メール広告、申込画面、勧誘、書面交付などを規制します。通販LPでは、両方を確認する必要があります。

制作会社や広告代理店はどこまで確認すべきですか?

制作会社や広告代理店が最終的な法的判断を担うとは限りませんが、少なくとも、取引類型、価格、定期購入条件、返品・解約条件、根拠資料、最終確認画面との整合性を確認できる体制が望まれます。

判断できない項目をそのまま掲載するのではなく、クライアント、法務、専門家に確認する事項として明確に切り分けてください。

まとめ

特定商取引法の禁止行為は、すべての取引に共通するNGワード集ではありません。

通信販売では、広告表示、誇大広告等、メール広告、返品特約、最終確認画面が主な確認対象です。訪問販売や電話勧誘販売では、勧誘目的の明示、不実告知、再勧誘、契約書面、クーリングオフの説明が重要になります。

実務で最初に行うべきことは、媒体名から判断することではなく、消費者がどのように勧誘され、どのように契約を申し込むのかを整理することです。

そのうえで、LP、メール、申込画面、契約書面、営業トークの条件を照合します。健康食品や化粧品等では、特商法だけでなく、景品表示法、薬機法、健康増進法なども横断して確認してください。

個別案件では、商品・サービス、販売方法、表示内容、申込導線、契約実態によって判断が変わります。公開前に公的資料を確認し、判断が難しい部分は法務や専門家へ相談することが、手戻りを減らすことにつながります。

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参考情報・引用元

本記事は、以下の公的機関・公式資料・関連資料を参考に、広告実務の観点から整理しています。
個別の広告表現の適否は、商材、媒体、表示内容、根拠資料、広告全体の印象などにより判断が異なるため、必要に応じて公的資料や専門家への確認を行ってください。

免責事項

本記事は、法令、通知、ガイドラインその他の公的資料を、各資料の参照日時点で確認したうえで作成しています。
内容の正確性には十分配慮していますが、法令・行政運用の変更や個別事情により判断が異なる場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の広告表現の適法性を保証するものではありません。
実務への適用にあたっては、最新の公的資料をご確認のうえ、必要に応じて所管行政機関または専門家へご相談ください。誤り等が判明した場合は、確認のうえ訂正・更新します。

「特定商取引法の禁止行為とは?」という見出しのアイキャッチ画像。中央の「まず取引類型を確認」から、「通信販売」と「訪問・電話勧誘販売」の2つに分岐し、通信販売では広告表示・メール広告・最終確認画面、訪問・電話勧誘販売では勧誘方法・契約書面・クーリングオフを確認する構成になっている。下部では、販売方法を確認する、申込みまで確認する、表示と運用を照合するという3つの判断ポイントを示し、媒体名ではなく広告から契約成立までの流れを見る重要性を伝えている。

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