「特商法に基づく表記ページは設置しているので、対応はできているはず」
通販・ECの制作現場では、こう考えてしまうことがあります。しかし、特定商取引法違反のリスクは、表記ページの有無だけで判断できるものではありません。
販売価格や送料、返品条件、定期購入の総額・回数・解約条件、申込ボタン周辺の表示、カート、最終確認画面まで含めて、消費者が契約内容を正しく理解できる状態になっているかが問われます。特にインターネット通販では、注文確定の直前に表示される最終確認画面も重要な確認対象です。
健康食品や化粧品のLP(ランディングページ)では、薬機法や景品表示法の広告表現に意識が向きやすい一方、販売条件や申込導線の確認が後回しになるケースもあります。
この記事では、特定商取引法違反の基本から、通販・EC・LPで問題になりやすい表示、定期購入広告のチェックポイント、違反した場合の行政上・民事上の影響まで、広告制作・審査担当者向けに整理します。
- 特商法違反は表記ページだけの問題ではない:必要事項の不足だけでなく、誇大広告等、定期購入条件の不明確さ、最終確認画面の表示不備、解除妨害のための不実告知、表示した解約方法が実際に利用できない状態、解除後の返金等の拒否・遅延なども問題になり得ます。
- LPから注文完了まで横断して確認する:LP、商品ページ、FAQ、特商法表記、カート、最終確認画面、確認メールで、価格・送料・返品・解約条件が一致しているかを確認します。
- 薬機法・景表法とは別の判断軸がある:健康食品・化粧品LPでは、効能効果だけでなく、価格訴求や販売条件、申込導線まで複数法令を横断して確認する必要があります。
特定商取引法違反とは

特定商取引法違反とは、特定商取引法が定める表示義務や禁止行為に反する表示、勧誘、契約手続き、取引対応を行うことです。通販・EC・LPでは、販売条件や最終確認画面が消費者に分かりやすく表示されているかが重要になります。
特定商取引法は、消費者トラブルが生じやすい取引を対象に、事業者が守るべき行政上のルールと、契約の取消しなどの民事ルールを定めています。
対象となる取引は通信販売だけではありません。訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引、訪問購入など、複数の取引類型があります。インターネット上で広告し、通信手段によって申込みを受ける一般的なECや通販は、原則として通信販売の規制を中心に確認します。
特商法違反と特定商取引法違反は同じ意味
「特商法」は「特定商取引法」の略称です。そのため、「特商法違反」と「特定商取引法違反」は、一般には同じ意味で使われます。
ただし、実務で大切なのは呼び方ではなく、どの取引類型に当たり、どの規定を確認する必要があるかです。
ECサイトだから通信販売、電話で申込みを受けたから電話勧誘販売と、単純に媒体だけで決まるとは限りません。たとえば、事業者から電話で積極的に勧誘した後にWebから申し込ませる場合などは、販売までの流れを含めて取引類型を確認する必要があります。
特商法の概要について知りたい方は「特定商取引法とは?対象取引・事業者の表示義務・EC広告での注意点を実務者向けに解説」もご覧ください。
違反リスクは表記ページだけではない
特商法違反というと、「特定商取引法に基づく表記が掲載されていない」というケースを思い浮かべるかもしれません。
しかし、通信販売では、広告に必要な事項を表示する義務のほか、誇大広告等、未承諾者への電子メール広告、申込み段階での表示、顧客の意に反して申込みをさせようとする行為なども規制されています。
したがって、広告審査では、次のような範囲を一連の購入導線として確認します。
広告バナー・SNS広告
↓
記事LP・商品LP
↓
商品ページ・FAQ
↓
申込フォーム・カート
↓
最終確認画面
↓
注文完了画面・確認メール
↓
返品・解約対応
一つのページだけを見て問題がないように見えても、別の画面と条件が食い違っていれば、消費者に正しい情報が伝わらない可能性があります。
通販・ECでは通信販売の規制を確認する
インターネット通販では、特商法表記ページだけでなく、広告や申込み段階における表示が確認対象です。
特に注文確定直前の最終確認画面では、分量、販売価格、送料、支払時期・方法、引渡時期、申込期間、返品・解除に関する事項などを確認できる状態にすることが求められます。
つまり、実務上の判断軸は「必要なページが存在するか」だけではありません。
消費者が申込み前に販売条件を理解し、申込内容を確認・訂正できる情報設計になっているかまで確認する必要があります。
特商法違反リスクの全体像
| 取引・場面 | 問題になりやすい行為 | 広告実務で確認する場所 |
|---|---|---|
| 通信販売広告 | 必要事項の不足、誇大広告等 | LP、商品ページ、特商法表記 |
| 定期購入 | 初回価格だけを強調し、継続条件が不明確 | ファーストビュー、申込ボタン周辺、FAQ |
| 申込み段階 | 契約条件の不足、誤認させる表示 | カート、申込フォーム、最終確認画面 |
| 返品・解約 | 条件が不明確、表示と実際の対応が異なる | FAQ、利用規約、解約ページ、電話窓口 |
| メール広告 | 承諾を得ずに広告メールを送信 | 会員登録画面、メルマガ同意欄、配信記録 |
| 訪問・電話勧誘 | 不実告知、故意の不告知、威迫・困惑 | トークスクリプト、営業資料、録音記録 |
江良公宏薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
特商法のチェックで最初に確認したいのは、「この言葉が使えるか」ではありません。見るべきなのは、広告を見てから注文を確定するまで、消費者がどのような順番で情報を受け取るかです。
LPには解約条件が書いてあっても、申込ボタンから離れた場所にしかなければ、購入時には十分に伝わらないことがあります。反対に、最終確認画面だけに条件を集めても、LPで作られた「1回限りで安く買える」という印象を修正できない場合があります。
特商法対応は、表記ページを作る作業ではなく、購入までの情報設計を整える作業として考えることが大切です。
特商法違反になり得る主な行為


特商法違反になり得る行為には、広告表示事項の不足、誇大広告等、未承諾メール広告、申込み段階での表示不備、顧客の意に反した申込みをさせる行為などがあります。
どの規制が適用されるかは、取引類型によって異なります。ここでは通販・ECの制作実務で確認する機会が多いものを中心に整理します。
表示義務違反
通信販売の広告では、販売価格、送料等の追加負担、支払時期・方法、商品の引渡時期、返品・解除条件、事業者の名称・住所・電話番号など、所定の事項を表示する必要があります。
法人がインターネット広告を行う場合には、法人名、住所、電話番号に加え、代表者または通信販売業務の責任者の氏名も確認対象となります。電話番号についても、形式的に番号を掲載すればよいわけではなく、実際に連絡を取れる状態であることが求められます。
よくある見落としは、次のようなケースです。
- 送料が「地域により異なります」とだけ書かれ、金額を確認できない
- 支払方法は記載されているが、支払時期が不明
- 「入金後発送」とあるだけで、発送時期が分からない
- 返品条件が「お問い合わせください」とだけ書かれている
- サイト名やブランド名だけを表示し、正式な事業者名がない
- 解約窓口の電話番号を掲載しているが、実際にはほとんどつながらない
必要項目を埋めるだけでなく、消費者が具体的な条件を理解できる内容になっているかを確認します。
誇大広告等の禁止
特定商取引法では、広告において著しく事実と異なる表示や、実際より著しく優良・有利であると誤認させる表示が禁止されています。
たとえば、実際には常時購入できるにもかかわらず、「本日限り」「残り10分」などと表示し続けるケースが考えられます。
価格やキャンペーン表示は景品表示法の問題として確認されることが多いものの、通信販売の販売条件や申込期間に関する表示は、特定商取引法上も確認が必要です。
特にカウントダウン表示を使用する場合は、次の点を確認します。
- 表示された時間の経過後、本当に申込みができなくなるのか
- ページを再読み込みすると時間が戻らないか
- キャンペーン終了後も同じ条件で購入できないか
- 「期間限定」が商品購入期限なのか、割引期限なのか
- LP、広告バナー、カートで期限が一致しているか
最終確認画面・申込導線の不備
インターネット通販の最終確認画面では、消費者が契約内容を一覧性をもって確認できるよう、必要事項を表示する必要があります。
また、申込内容を容易に確認・訂正できるようにしていない場合は、顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為として行政処分の対象となり得ます。
次のような設計は、公開前に特に注意して確認します。
- ボタンが「次へ進む」になっているが、押すと注文が確定する
- 注文確定ボタンの直前に販売価格や送料が表示されない
- 定期購入であることが最終確認画面から読み取れない
- 商品の数量やコースを修正する方法が分からない
- 修正するためにブラウザの戻る操作しか使えない
- 解約条件が別ページへの分かりにくいリンクだけになっている
- スマートフォンでは注釈が画面外にはみ出している
PC用デザインだけではなく、実際の端末とカートシステムで確認することが大切です。
メール広告・勧誘方法の違反
通信販売事業者やメール配信を受託する事業者が電子メール広告を送る場合は、原則として事前承諾が必要です。承諾や請求に基づいて送信した場合は、最後に広告メールを送信した日から3年間、その記録を保存します。注文確認や発送通知など、契約の履行に関する重要な通知に付随する広告は、規制の対象外となる場合があります。
会員登録とメルマガ登録を一つのチェックボックスにまとめる場合や、初期状態でチェックを入れる場合も、直ちに無効とは限りません。ただし、広告メールが送られることを消費者が容易に認識できる表示になっているかを確認する必要があります。
- 承諾を取得した画面
- チェックボックスの初期状態
- 承諾日時と取得経路
- 配信停止方法
- 配信停止後の処理記録
- 委託先との業務範囲
返品・解約対応の不備
返品や解約については、広告上の表示だけでなく、実際の運用との一致も確認する必要があります。
「いつでも解約できます」と表示していても、実際には電話がつながらない、手続き画面が見つからない、次回発送の直前には解約できないなど、重要な条件がある場合は問題になり得ます。
返品特約を設ける場合には、返品の可否、期限、条件、送料負担などを明確に表示します。「その都度ご相談ください」といった曖昧な表示では、具体的な条件を消費者が判断できません。
特商法違反リスク一覧表
| リスク | よくある表示・運用例 | 確認場所 | 制作時の確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 表示事項の不足 | 送料・支払時期が不明 | LP、特商法表記 | 金額や時期を具体化する |
| 誇大広告等 | 常設なのに「本日限り」 | FV、バナー、カート | 実際の販売期間と一致させる |
| 定期購入条件の不足 | 初回価格だけを大きく表示 | 申込ボタン周辺 | 2回目以降、総額、回数も確認 |
| 最終確認画面の不備 | 注文直前に条件を確認できない | カート | 必要事項を一覧表示する |
| 意に反する申込み | 「次へ」で注文が確定する | 確定ボタン | ボタン文言と結果を一致させる |
| 解約妨害 | 電話がつながらない | FAQ、解約窓口 | 実際に利用できる方法を表示 |
| 未承諾メール | 会員登録だけで広告配信 | 登録フォーム | 明確な承諾を取得・保存する |
特商法の禁止行為については「特定商取引法の禁止行為とは?広告規制・契約書面・メール広告・クーリングオフを実務者向けに解説」をご覧ください。
通販・EC・LPで特商法違反リスクになりやすい表示


通販LPでは、初回価格、割引、限定性を強く見せるほど、継続条件や追加負担が相対的に分かりにくくなる傾向があります。強調表示と条件表示を分離せず、同じ訴求単位として確認することが重要です。
初回価格だけを大きく表示している
定期購入広告では、「初回500円」などの初回価格を大きく表示することがあります。
初回価格の表示自体が直ちに問題になるわけではありません。ただし、実際には2回目以降も商品が届き、通常価格や送料が発生するにもかかわらず、その条件が小さな注釈にしか書かれていない場合は、消費者が契約内容を誤認する可能性があります。
期間の定めがない定期購入については、各回の代金や送料、契約が継続することなどを認識できるように表示する必要があります。最終確認画面でも、販売価格や支払時期、引渡時期等を明確に表示することが求められています。
送料・手数料が後から追加される
LPでは「初回500円」と表示されていても、カートに進むと送料や決済手数料が追加されることがあります。
購入者が負担する送料、代引手数料、梱包料、設置費用などがある場合は、その内容と金額を確認できるようにします。単に「別途送料」や「手数料がかかります」と書くだけでは、購入前に総負担額を判断できません。
LP上の金額表示を確認するときは、商品価格だけでなく、最終的に消費者が負担する金額を一つのセットとして確認します。
「いつでも解約OK」の条件が分かりにくい
「いつでも解約OK」「回数縛りなし」という表現は、定期購入への不安を下げる強い訴求です。
そのため、実際には次回発送日の10日前までに電話が必要、営業時間内しか受け付けない、初回商品を受け取るまでは解約できないといった条件がある場合、その条件を分かりやすく表示する必要があります。
また、表示上は解約できることになっていても、実際の窓口につながらない状態では、表示と運用が一致しているとはいえません。消費者庁の解説でも、解約方法を電話としている場合、確実につながる番号を掲載する必要があるとされています。
LPとカートで条件が食い違う
制作現場で見落としやすいのが、ページ間の不整合です。
たとえば、次のような食い違いがあります。
| LPの表示 | 別画面の表示 | 問題になるポイント |
|---|---|---|
| 送料無料 | カートで送料550円 | 消費者の追加負担が不明確 |
| いつでも解約可能 | FAQでは3回受取後 | 解約条件が矛盾 |
| 初回500円 | 最終確認画面では1,050円 | 表示価格と請求額が不一致 |
| 1回限りに見える | 実際は定期購入 | 契約形態を誤認する可能性 |
| 本日限定 | 翌日も同じ価格 | 期間限定表示と実態が不一致 |
特商法表記を正しく作成しても、LPやカートと条件が違えば、購入導線全体として問題が残ります。
詳しくは「LPとカートで価格・送料・条件が違う場合の特商法リスク|購入導線全体のチェックポイント」でも解説しています。
小さな注釈だけで条件を補っている
強いキャッチコピーの近くに、小さな文字で条件を記載する方法も注意が必要です。
「※定期購入です」「※2回目以降は9,800円」などの注釈が存在していても、文字サイズ、色、配置、スクロール量によっては消費者が認識できない可能性があります。
注釈の有無だけでなく、次の観点から確認します。
- 強調表示と同じ画面内にあるか
- スマートフォンで無理なく読めるか
- 背景とのコントラストが確保されているか
- 申込ボタンより前に表示されているか
- 消費者が内容を理解できる具体性があるか
- 別ページに移動しなくても主要条件が分かるか
定期購入・サブスクで特に注意すべき表示
定期購入では、「初回の安さ」ではなく、申込みによって成立する契約全体が分かる表示になっているかを確認します。特に、各回の価格、支払総額、回数、契約期間、解約条件が重要です。
最低購入回数があるケース
「3回以上の購入が必要」などの最低購入回数がある場合は、回数だけでなく、各回の価格、送料、最低期間、最低支払総額を確認できるようにします。
たとえば、次のような表示です。
初回:500円
2回目以降:各8,000円
最低購入回数:3回
最低支払総額:16,500円
送料:各回無料
消費者庁の最終確認画面に関する資料でも、定期購入では各回の分量、2回目以降の代金、各回の請求時期、解約条件等を確認できる表示が示されています。
回数制限がないケース
最低購入回数がない場合でも、定期購入であることや、消費者から解約の連絡がない限り継続することを明確にします。
「縛りなし」という表現だけでは、毎月自動的に商品が届くことまで伝わらない可能性があります。
期限の定めがない契約では、将来の支払総額を確定できないことがあります。その場合も、半年や1年など一定期間の支払額を目安として示し、その期間が契約期間を意味するものではないことを明らかにする方法が示されています。
解約期限と次回発送日
定期購入では、解約の申出期限と次回発送日の関係が重要です。
次回発送日の10日前までに連絡が必要であるなら、単に「いつでも解約可能」と書くのではなく、期限を具体的に表示します。
また、次回発送日がマイページでしか分からない場合、購入前の消費者は解約期限を判断できません。初回の申込み段階で、次回発送の目安や配送周期を確認できるようにします。
定期購入表示の確認表
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 契約形態 | 1回限りか、定期購入か |
| 初回価格 | 税込価格、送料、手数料 |
| 2回目以降 | 各回の価格と追加負担 |
| 購入回数 | 最低回数の有無 |
| 支払総額 | 最低支払総額または一定期間の目安 |
| 配送周期 | 毎月、隔月、指定日など |
| 契約期間 | 有期か、無期限か |
| 解約方法 | 電話、Web、メールなど |
| 解約期限 | 次回発送日の何日前までか |
| 返品条件 | 返品の可否、期限、送料負担 |
| 最終確認画面 | 上記条件を注文直前に確認できるか |



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
通販LPのチェックでよくあるのが、完成したLPの画像やPDFだけが送られてくるケースです。
しかし、定期購入案件では、それだけを見ても十分な確認はできません。カートに入れた後の金額、最終確認画面の表示、解約方法、FAQ、確認メールまで見なければ、条件の食い違いを発見できないからです。
制作会社が「カートは制作範囲外です」と考える気持ちは分かります。ただ、少なくとも、誰がカートと最終確認画面を確認するのかは決めておく必要があります。担当範囲の境目は、そのまま見落としが起きやすい場所になります。
特定商取引法に違反するとどうなるのか
特定商取引法に違反した場合、違反内容や取引類型に応じて、行政処分や罰則の対象となる可能性があります。契約の取消しなど、民事上の影響が生じる場合もあります。
行政処分の対象になり得る
特定商取引法の違反行為は、違反内容に応じて、指示、事業者に対する業務停止命令、役員等に対する業務禁止命令などの対象となることがあります。業務禁止命令は、主に役員や業務を統括する者などに対する措置であり、事業者に対する業務停止命令とは区別して確認する必要があります。
どの措置がとられるかは、違反した規定、行為の内容、消費者被害、事業者の対応などによって異なります。また、一部の違反には罰則も設けられています。行政処分が公表されると、消費者や取引先だけでなく、広告媒体、決済会社、プラットフォームなどにも影響が及ぶ可能性があります。
罰則の対象になる場合がある
特定商取引法の違反行為の一部には、刑事罰が設けられています。
表示の不備があれば直ちに刑事罰になるという意味ではありませんが、「行政から修正を求められるだけ」と考えるのも適切ではありません。違反内容によって影響が異なるため、具体的な事案では現行法令を確認し、弁護士等への相談が必要です。
民事上の取消し・解除に関係する場合
特定商取引法には、行政規制だけでなく民事ルールも設けられています。ただし、取消しが認められる場面は取引類型によって異なります。
訪問販売や電話勧誘販売などでは、不実告知や故意の不告知による取消しが問題になる場合があります。一方、通信販売では、最終確認画面等で必要事項の不表示、不実表示、または申込み内容を誤認させる表示があり、消費者が誤認して申し込んだ場合に、特定商取引法第15条の4による取消しが認められることがあります。
なお、通信販売にはクーリング・オフ制度はありません。返品特約や申込み段階の表示を、購入前に分かりやすく示すことが重要です。
企業信用・広告審査への影響
行政処分や消費者トラブルは、法律上の影響だけで終わるとは限りません。
実務では、次のような影響も想定されます。
- 広告配信の停止
- 媒体審査の厳格化
- カート・決済サービスの利用見直し
- 取引先からの説明要求
- LPや広告素材の緊急修正
- コールセンターへの問い合わせ増加
- ブランドや企業に対する信用低下
そのため、公開後に個別の文言を修正するだけではなく、申込導線全体を見直す必要があります。
薬機法違反・景品表示法違反・特商法違反の違い
薬機法、景品表示法、特定商取引法は、確認する対象が異なります。ただし、健康食品・化粧品の通販LPでは、一つの表示が複数の法規制にまたがる問題になることがあります。
| 法令 | 主な確認対象 | 通販LPで問題になりやすい例 |
|---|---|---|
| 薬機法 | 医薬品的な効能効果、承認範囲、化粧品の効能範囲 | 「飲むだけで治る」「シワが消える」 |
| 景品表示法 | 商品・価格・取引条件についての誤認表示 | 根拠のないNo.1、実態のない通常価格 |
| 特定商取引法 | 販売条件、申込導線、勧誘方法、事業者情報 | 定期購入条件の不足、最終確認画面の不備 |
薬機法は効能効果や商品区分を確認する
健康食品、化粧品、医薬部外品、医療機器などでは、効能効果の表現や承認・届出範囲との整合性を確認します。
「体脂肪が必ず減る」「シワを治療する」などの表現は、商品区分や承認内容によって薬機法上の問題となり得ます。
景品表示法は広告が与える誤認を確認する
景品表示法では、商品やサービスの品質を実際より著しく優良に見せる表示や、価格・取引条件を実際より著しく有利に見せる表示などを確認します。
「顧客満足度No.1」「通常価格9,800円のところ500円」といった表示は、調査方法や販売実績などの根拠が必要です。
特商法は販売・契約プロセスを確認する
特商法では、販売価格、送料、返品条件、定期購入条件、申込画面、最終確認画面などを確認します。
たとえば、「初回500円」という表示については、次のように複数の観点があります。
- 初回500円という価格に実態があるか:景品表示法
- 定期購入であることや総額が分かるか:特定商取引法
- 健康食品の効果を過度に約束していないか:薬機法・健康増進法
法律ごとに担当者を分ける場合でも、最後に広告全体を横断して確認する工程が必要です。
薬機法や景品表示法について体系的に知りたい方は「薬機法の基礎ガイド」「景品表示法の広告実務ガイド」をご覧ください。
特商法違反リスクを防ぐための公開前チェックリスト
特商法違反リスクを防ぐには、LPだけでなく、特商法表記、FAQ、カート、最終確認画面、確認メールまで販売条件が一貫しているかを確認します。
LP・商品ページで確認する項目
- 1回限りか、定期購入かが明確になっている
- 販売価格が税込で表示されている
- 送料・手数料などの追加負担が分かる
- 初回価格だけを過度に強調していない
- 2回目以降の価格が確認できる
- 最低購入回数と最低支払総額が確認できる
- 「本日限定」などの期限表示が実態と一致する
- 申込ボタン周辺に主要な契約条件がある
- 注釈がスマートフォンでも読める
- 広告バナーとLPの条件が一致している
特商法表記・FAQ・利用規約で確認する項目
- 事業者の正式名称が記載されている
- 住所と実際の活動拠点が確認されている
- 確実に連絡できる電話番号が記載されている
- 販売責任者等の氏名を確認している
- 支払方法と支払時期が記載されている
- 商品の引渡時期が具体的である
- 返品の可否、期限、条件、送料負担が明確である
- 解約方法と解約期限が具体的である
- LP、FAQ、利用規約で条件が一致している
- 解約窓口が実際に利用できる
カート・最終確認画面で確認する項目
- 注文確定直前に商品・数量を確認できる
- 販売価格、送料、支払総額を確認できる
- 定期購入であることが明示されている
- 各回の価格や請求時期を確認できる
- 配送周期と次回発送時期を確認できる
- 購入回数、契約期間を確認できる
- 解約・返品条件を見つけやすい位置で確認できる
- 入力内容を容易に修正できる
- ボタン文言から注文確定になることが分かる
- PCとスマートフォンの両方で実機確認している
公開後の運用で確認する項目
- 注文確認メールの条件がLPと一致している
- マイページの次回発送日が正しい
- 解約申出が運用上処理されている
- 広告メールの承諾記録を保存している
- キャンペーン終了後に表示を差し替えている
- 価格・送料変更時に全ページを更新している
- 修正履歴と確認資料を保存している
公開前の推奨確認フロー
取引類型を確認する
↓
販売条件・契約条件を確定する
↓
LP・商品ページを確認する
↓
特商法表記・FAQ・利用規約を確認する
↓
カート・申込フォームを確認する
↓
最終確認画面を実機で確認する
↓
注文完了画面・確認メールを確認する
↓
薬機法・景品表示法と横断して確認する
↓
修正履歴・根拠資料を保存する



薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解
特商法対応で修正が繰り返される会社では、担当者の知識不足よりも、確認する順番や担当範囲が決まっていないことが多くあります。
価格、送料、返品、解約条件を項目ごとに横断して確認し、誰が最終承認するかを決めるだけでも、見落としは減らしやすくなります。
案件ごとに一から判断するのではなく、商材や販売方法に合わせてチェックリスト化することがポイントです。
ただし、チェックリストは最終判断を自動化するものではありません。例外的な販売方法や新しい訴求を行う場合は、公的資料や専門家確認へ切り替える運用もセットで設計します。
よくあるご相談(FAQ)
- 特定商取引法違反とは何ですか?
-
特定商取引法違反とは、同法が定める表示義務や禁止行為に反する表示、勧誘、契約手続き、取引対応を行うことです。
通販・ECでは、特商法表記ページの不備だけでなく、誇大広告等、定期購入条件の表示不足、最終確認画面の不備、申込内容を訂正しにくい設計、解約を妨げる対応なども問題になり得ます。どの規定が適用されるかは、取引類型や販売方法によって異なります。
- 特商法違反になる主な行為には何がありますか?
-
通信販売では、広告に必要な事項を表示しない行為、著しく事実と異なる広告、未承諾者への電子メール広告、申込み段階での表示不備、消費者が申込内容を容易に確認・訂正できない設計などが問題になり得ます。
訪問販売や電話勧誘販売などでは、不実告知、故意の不告知、威迫・困惑など、別の勧誘規制も確認する必要があります。
- 通販LPで特商法違反リスクになりやすい表示は何ですか?
-
初回価格を大きく表示しながら、2回目以降の価格、支払総額、購入回数、解約条件が分かりにくいケースは、特に注意が必要です。
そのほか、送料がカートで初めて追加される、実態のない期間限定表示を行う、LPとFAQで解約条件が異なるといったケースもあります。個々の文言だけでなく、LPから最終確認画面までの情報が一貫しているかを確認します。
- 最終確認画面の不備は特商法違反になりますか?
-
インターネット通販では、最終確認画面に必要事項を表示しない行為や、契約内容を誤認させる表示は、特商法違反となり得ます。
また、消費者が申込内容を容易に確認・訂正できる措置を講じていない場合は、顧客の意に反して申込みをさせようとする行為として行政処分の対象になる可能性があります。
- 特定商取引法に違反するとどうなりますか?
-
違反内容や取引類型に応じて、業務改善の指示、業務停止命令、業務禁止命令などの行政処分や、罰則の対象になる可能性があります。
また、不実告知などによって消費者が誤認した場合には、契約の意思表示を取り消されるなど、民事上の影響が生じることもあります。具体的な処分や契約への影響は、個別事情を踏まえた確認が必要です。
- 定期購入広告で特商法違反を避けるには何を確認すべきですか?
-
初回価格だけでなく、2回目以降の価格、送料、購入回数、契約期間、支払総額、配送周期、解約方法、解約期限を確認します。
「いつでも解約OK」「縛りなし」と表示する場合も、次回発送日の何日前までに、どの方法で連絡する必要があるかを明確にします。LP、特商法表記、FAQ、カート、最終確認画面の条件が一致していることも重要です。
- 薬機法違反・景品表示法違反・特商法違反は何が違いますか?
-
薬機法は主に効能効果や承認範囲、景品表示法は商品・価格・取引条件に関する誤認表示、特定商取引法は販売条件、申込導線、勧誘方法、事業者情報などを確認します。
健康食品や化粧品の通販LPでは、一つの広告が複数法令の対象となることがあります。そのため、薬機法だけ、特商法だけと分けるのではなく、広告全体を横断して確認する必要があります。
- 制作会社や広告代理店はどこまで確認すべきですか?
-
制作会社や広告代理店が最終的な法的判断を行う立場でない場合でも、LP上の販売条件が特商法表記、FAQ、カート、最終確認画面と矛盾していないかを確認する視点は必要です。
カートや解約窓口が業務範囲外である場合は、誰が確認するのかをクライアントと合意し、未確認の範囲を明確にします。最終的な掲載判断や例外的な販売方法については、社内法務、弁護士、専門家等への確認につなげます。
まとめ
特定商取引法違反は、「特商法表記ページがない」という問題だけではありません。
通販・EC・LPでは、広告表示、販売価格、送料、返品条件、定期購入条件、申込ボタン、カート、最終確認画面、解約対応まで、購入導線全体が確認対象になります。
特に定期購入では、初回価格の目立ち方だけでなく、2回目以降の価格、支払総額、購入回数、契約期間、解約方法・期限が、消費者に分かりやすく伝わっているかを確認します。
また、健康食品や化粧品のLPでは、特商法上の販売条件に問題がなくても、薬機法上の効能効果や、景品表示法上の価格表示に別のリスクが残ることがあります。
公開前には、法律ごとにページを分けて確認するのではなく、LPから注文完了までを一つの広告・販売プロセスとして横断確認することが重要です。
個別案件では、取引類型、商材、表示内容、媒体、申込導線、実際の運用によって判断が変わります。判断に迷う場合は、表示案、販売条件、画面遷移、カート画面、根拠資料を整理したうえで、法務・弁護士・広告規制の専門家へ確認しましょう。
なお、特定商取引法について体系的に知りたい方は「特定商取引法の広告実務ガイド」をご覧ください。
広告規制を守るだけでなく、商品の価値や訴求力を保ちながら表現を組み立てる考え方については、「![]()
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参考情報・引用元
本記事は、以下の公的機関・公式資料・関連資料を参考に、広告実務の観点から整理しています。
個別の広告表現の適否は、商材、媒体、表示内容、根拠資料、広告全体の印象などにより判断が異なるため、必要に応じて公的資料や専門家への確認を行ってください。
- e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057(参照日:2026年08月01日)
- e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律施行令(昭和51年政令第295号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/351CO0000000295(参照日:2026年08月01日)
- e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「特定商取引法とは」特定商取引法ガイド. https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「通信販売」特定商取引法ガイド. https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「インターネットで通信販売を行う場合のルール」特定商取引法ガイド. https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/rule.html(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「通信販売広告について」特定商取引法ガイド. https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/advertising.html(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「通信販売広告Q&A」特定商取引法ガイド. https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/advertising.html(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「ガイドライン|通信販売」特定商取引法ガイド. https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/guidelines.html(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」2024年11月19日改正. https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20241119la02_09.pdf(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「特定商取引に関する法律等の施行について」2024年11月19日. https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20241119la02_00.pdf(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」特定商取引法ガイド. https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/guidelines.html(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「電子メール広告をすることの承諾・請求の取得等に係る『容易に認識できるように表示していないこと』に係るガイドライン」特定商取引法ガイド. https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20080601sp05.pdf(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「特定商取引法の通信販売分野における執行状況について」2025年1月16日. https://www.caa.go.jp/notice/entry/040736/(参照日:2026年08月01日)
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「表示規制の概要」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/(参照日:2026年08月01日)
- 消費者庁「健康増進法(誇大表示の禁止)」消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/(参照日:2026年08月01日)
- 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html(参照日:2026年08月01日)
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