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二重価格表示とは?景品表示法違反になりやすい通常価格・セール価格・割引率の注意点

通常価格と販売価格を併記した二重価格表示のイメージ図

「通常価格9,800円のところ、今だけ4,980円」「本日限り50%OFF」「期間限定キャンペーン」。

こうした価格訴求は、LPやEC商品ページ、バナー、SNS広告で広く使われています。ただし、問題になるのは価格が安いこと自体ではありません。比較対象となる「通常価格」に販売実績があるか、「期間限定」という表示と実際の販売期間が一致しているかなど、表示を裏付ける根拠があるかどうかが重要です。

特に、過去の販売価格を通常価格として示す場合は、いわゆる8週間ルールを踏まえ、直近の販売期間や販売日数、最後に販売した時点を確認する必要があります。また、セール終了後も同じ価格で販売したり、期間を繰り返し延長したりすると、「今だけお得」という広告上の印象と実態がずれるおそれがあります。

この記事では、二重価格表示の基本、8週間ルール、期間限定表示の考え方を中心に、広告制作担当者が原稿作成前に確認しておきたい判断軸を分かりやすく整理します。薬機法や健康増進法が関わる商品についても、価格表示だけでなく、効能効果や商品区分を含めて広告全体を確認することが大切です。

この記事の要点(まとめ)
  • 二重価格表示の問題は「安さ」ではなく「比較対象の根拠」:販売価格と通常価格などを併記すること自体が直ちに問題になるわけではありません。比較対照価格が実際に販売された価格か、公表された価格か、正確に調査された価格かを確認する必要があります。
  • 8週間ルールは通常価格を説明するための実務基準:過去の販売価格を「当店通常価格」として使う場合は、直近の販売期間、販売日数、最後に販売した時点を確認します。単に一度だけ設定した価格や、販売実績のない価格は通常価格として扱いにくくなります。
  • 期間限定表示はキャンペーン終了後の運用まで確認する:セール期間を繰り返し延長したり、終了後も同じ価格で販売したりすると、「今だけ有利」という印象と実態がずれる可能性があります。広告原稿だけでなく、販売計画と更新履歴まで管理することが大切です。
目次

景品表示法で価格表示が問題になる理由

景品表示法上、価格表示で問われるのは、消費者に対して実際よりも著しく有利な取引条件であると誤認させていないかという点です。単に価格を安くすることや、セールを行うこと自体が規制されているわけではありません。

景品表示法は価格や取引条件の誤認を防ぐ法律

景品表示法は、商品やサービスの品質、内容、価格その他の取引条件について、不当な表示によって消費者の選択が妨げられることを防ぐ法律です。

価格や割引条件に関する表示は、商品の性能を説明する表示とは異なり、購入するかどうかを直接左右します。

たとえば、同じ4,980円の商品でも、次の2つでは消費者が受ける印象が異なります。

  • 販売価格4,980円
  • 通常価格9,800円のところ、今だけ4,980円

後者は、単に価格を示しているだけではありません。「通常は9,800円で販売されている商品を、今なら大幅に安く購入できる」という有利性も伝えています。

その通常価格や期間限定性に実態がなければ、消費者は存在しないお得感を前提に購入を判断することになります。

消費者庁も、事業者が自らの販売価格より高い比較対照価格を併記する二重価格表示について、比較する商品や比較対照価格が適切でない場合には不当表示となるおそれがあると説明しています。

価格表示は有利誤認表示として問題になりやすい

景品表示法には、大きく分けて優良誤認表示と有利誤認表示があります。

区分主な対象典型例
優良誤認表示品質、性能、効果、内容実際より高性能であるように表示する
有利誤認表示価格、数量、保証、条件実際より安い、条件がよいと表示する

二重価格表示や割引率、送料無料、返金保証、期間限定キャンペーンなどは、主に取引条件に関わるため、有利誤認の観点から確認します。

ここで注意したいのは、制作担当者に意図的な誤認を生じさせるつもりがなかったとしても、それだけで問題がなくなるわけではないことです。

広告主から渡された通常価格をそのまま記載した、以前のLPをコピーした、ECシステムが自動で割引率を表示した、といった事情があっても、一般消費者が広告全体からどのような印象を受けるかが判断の中心になります。

有利誤認などの不当表示については「優良誤認・有利誤認とは?景品表示法の不当表示を広告実務者向けに解説」をご覧ください。

広告制作では「安さの根拠」を確認する

制作現場では、価格表示について次の4点を確認すると整理しやすくなります。

確認要素確認内容
販売価格消費者が実際に支払う価格と一致しているか
比較対照価格通常価格、希望小売価格、市価などの根拠があるか
期間セール開始日・終了日と実際の運用が一致しているか
条件定期購入、会員限定、初回限定などの条件が明瞭か

価格表示のチェックは、完成した広告の文言だけを確認しても十分ではありません。

広告主が保有する販売履歴、価格改定履歴、メーカー資料、競合調査、キャンペーン企画書などと照合して、初めて表示の根拠を確認できます。

したがって、価格表示は法務部門だけの仕事ではなく、企画・制作の初期段階で確認すべき項目です。

二重価格表示とは?広告でよく使われる価格表示の基本

二重価格表示の基本的な仕組みを示す図。高い比較対照価格(通常価格やメーカー希望小売価格など)と、現在販売している低い価格を並べて記載し、その差額や割引率によって消費者に価格の有利性を伝える構造を可視化したイメージ図

二重価格表示とは、実際の販売価格と、それより高い比較対照価格を併記する表示です。二つの価格が並んでいるかどうかだけでなく、割引額や割引率によって価格差を示す場合も、同じ考え方で確認する必要があります。

二重価格表示の定義

消費者庁は、事業者が自己の販売価格に、その価格より高い別の価格を併記する表示を二重価格表示と説明しています。

代表的な表示は次のとおりです。

  • 当店通常価格9,800円のところ、4,980円
  • メーカー希望小売価格12,000円から30%OFF
  • 通常月額5,000円が、初月限定1,000円
  • 一般価格8,000円、会員価格5,000円
  • 9月30日以降は10,000円、先行販売期間は6,000円

このうち、どの表示が認められるかは、比較対照価格の種類と、その根拠によって異なります。

比較対照価格の種類

広告で使われる主な比較対照価格には、次のようなものがあります。

比較対照価格意味主な確認資料
当店通常価格自社が通常販売している価格販売履歴、受注データ
過去の販売価格自社が過去に販売した価格販売期間、販売実績
メーカー希望小売価格メーカーが小売業者向けに公表した価格カタログ、公式サイト、価格表
市価市場で一般的に販売されている価格客観的な市場調査
他社価格特定の競合事業者の価格調査日時、対象商品、調査記録
将来価格セール後に販売する予定の価格価格改定計画、販売計画

比較対照価格の名称を変えるだけでは、表示の問題は解消しません。

たとえば、販売実績のない価格を「参考価格」と表示しても、その価格を比較対象とする合理的な根拠がなければ、実際よりもお得に見せる表示となるおそれがあります。

また、「メーカー希望小売価格」と表示する場合は、メーカーがカタログや価格表などで小売業者向けに公表している価格であることを確認する必要があります。広告主が独自に設定した価格を、名称だけ「メーカー希望小売価格」とすることはできません。

重要なのは価格の呼び方ではなく、その価格が何を示し、どの資料によって説明できるかです。

二重価格表示がすべて違法ではない理由

二重価格表示は、消費者に価格差を分かりやすく伝えるための一般的な広告手法です。

比較対照価格が正確で、比較対象が同一の商品であり、割引条件や対象期間が明確であれば、価格選択のための有用な情報になります。

問題になるのは、次のような場合です。

  • 実際には販売していない価格を通常価格として表示する
  • 別の商品や別プランの価格と比較する
  • 税込み価格と税抜き価格を比較する
  • 定期購入価格と単品価格の条件差を見えにくくする
  • 割引対象外の商品があるのに全商品割引のように見せる
  • セール終了後も同じ価格で販売する

つまり、二重価格表示は「使ってはいけない手法」ではなく、「比較の前提を説明できる状態で使う必要がある手法」です。

二重価格表示が違法・不当表示になりやすいケース

二重価格表示が景品表示法上問題になりやすいのは、比較対照価格や比較条件に実態がない場合です。表現の強さだけではなく、広告で示した価格差が事実に基づいているかを確認します。

販売実績のない通常価格を使うケース

よくあるのが、新商品を発売した直後から「通常価格10,000円のところ、発売記念価格5,000円」と表示するケースです。

まだ10,000円で販売した実績がなく、通常価格として定着している事情もない場合、消費者は実在しない割引を提示されたと受け取る可能性があります。

社内の商品登録画面に10,000円と入力されているだけでは、通常価格として販売した事実にはなりません。

確認すべきなのは、その価格で実際に購入できる状態にあり、通常の販売活動として相応の期間販売されていたかです。実際の購入件数は確認資料の一つですが、購入実績がないことだけで直ちに比較対照価格として使えないとは限りません。 

同一ではない商品の価格を比較するケース

過去価格や希望小売価格などを用いて値下げを示す場合は、原則として同一の商品・同一条件の価格を比較します。別の商品やプランを比較する場合は、容量、仕様、保証、契約条件などの違いを明確にし、同一条件の値下げだと誤認されないようにする必要があります。 

たとえば、次のような比較は注意が必要です。

  • 内容量30粒の商品と60粒の商品を単純比較する
  • 保証なしプランと保証付きプランを比較する
  • 定期購入価格と単品価格を、条件を示さず比較する
  • 旧モデルと新モデルを同一商品のように比較する
  • 送料込み価格と送料別価格を比較する

商品名が似ていても、容量、仕様、契約期間、付帯サービスなどに違いがあれば、消費者が同じ条件の価格比較だと誤認しないように表示する必要があります。

根拠のないメーカー希望小売価格や市価を使うケース

「メーカー希望小売価格」は、販売事業者が自由に設定した価格ではありません。

メーカーが小売業者の販売価格の参考として、カタログや価格表などで広く公表している価格であることを確認します。

また、「市価15,000円相当」などと表示する場合は、どの商品を、どの範囲で、いつ調査したのかを説明できるようにします。

検索結果で見つけた一店舗だけの最高価格や、現在販売されていない商品の価格を市価として使うと、一般的な市場価格を表していない可能性があります。

条件付き価格を目立たない注釈にしているケース

たとえば、広告で「初回980円」と大きく表示し、実際には定期購入や複数回の受け取り条件があるケースです。

こうした条件をページ下部の小さな注釈だけで示すと、消費者が「1回だけ980円で購入できる」と受け取るおそれがあります。

定期購入であること、2回目以降の価格、最低購入回数、総支払額など、購入判断に大きく影響する条件は、価格表示の近くで分かりやすく示すことが大切です。

価格表示では、次のような条件が購入判断に大きく影響します。

  • 定期購入であること
  • 最低購入回数
  • 2回目以降の価格
  • 総支払額
  • 会員登録の必要性
  • 対象地域
  • 送料や手数料
  • 一部商品の除外

強いメイン表示と、離れた場所にある小さな注釈をセットにすれば必ず問題が解消されるわけではありません。

消費者が価格を認識する場面で、主要な条件も理解できる表示設計が必要です。

将来価格を根拠なく比較対象にするケース

「9月30日まで6,000円、10月1日以降10,000円」といった将来価格との比較も、直ちに認められるわけではありません。

セール終了後に本当に10,000円で販売する合理的で確実な計画があり、その計画に従って運用されることが前提になります。

将来価格を比較対象にする場合は、期間終了後に表示した価格で販売することが確実であり、実際にもその価格で相応の期間販売する必要があります。社内の値上げ計画があるだけでなく、表示どおり運用されるかまで確認します。 

将来価格を使う場合は、期間後に実際に値上げすることと、販売計画を保有しておくことが実務上のポイントです。

消費者庁も、将来の販売価格を比較対照価格にする場合の考え方を公表しており、将来価格に十分な根拠がない表示には注意が必要です。

危険になりやすい表示問題となる理由制作時の確認
通常価格9,800円→4,980円通常価格の販売実績がない受注・販売履歴を確認
市価15,000円→9,800円市価調査が不十分調査対象、日時、方法を確認
メーカー希望小売価格12,000円メーカーによる公表資料がないカタログや公式価格表を確認
本日限り50%OFF翌日以降も同じ価格キャンペーン履歴を確認
来月から10,000円値上げ計画がない稟議書や販売計画を確認

景品表示法違反については「景品表示法違反とは?措置命令・課徴金・違反事例を広告実務者向けに解説」で詳しく解説しています。

二重価格表示の8週間ルールとは?当店通常価格を使う前の確認ポイント

8週間の期間を示すタイムライン図。現在を起点に遡った8週間において、通常価格で販売していた期間、販売日数、最後にその価格で販売した時点といった判定基準が満たされているかを可視化した解説図

いわゆる8週間ルールは、過去の販売価格を「最近相当期間にわたって販売されていた価格」として比較対照価格に使えるかを検討するための基準です。

ただし、単純に「8週間経過していればよい」というルールではありません。

江良公宏

薬機法・景品表示法・医療広告などの広告表現支援に15年間携わってきた江良公宏の実務見解 
二重価格の相談では、「この書き方なら使えますか」と聞かれることが多いのですが、最初に確認したいのは言葉ではなく販売履歴です。
通常価格を「参考価格」に変える、注釈を追加する、割引率だけを見せる。こうした表面的な修正をしても、元になる価格に実態がなければ、広告で表示できる可能性は下がります。
40,000件以上の広告表現支援に関わってきた中で感じるのは、価格表示は制作が始まってから確認するほど修正範囲が広がるということです。ファーストビュー、キャンペーン名、バナー、メルマガ、申込フォームまで連動しているからです。
だからこそ、企画段階で販売履歴、キャンペーン期間、終了後の価格まで確認する。価格訴求を消すのではなく、説明できる根拠を用意したうえで、伝わる表示に設計することが実務上のポイントです。

8週間ルールの基本的な考え方

消費者庁の価格表示ガイドラインでは、過去の販売価格を比較対照価格に使う場合、その価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえるかがポイントになります。

一般的には、二重価格表示を行う時点から遡った8週間について、主に次の点を確認します。

  • その価格で販売していた期間が、商品を販売していた期間の過半を占めるか
  • その価格での販売期間が通算2週間以上あるか
  • 最後にその価格で販売した日から2週間以上経過していないか

商品の販売期間が8週間未満の場合は、その販売期間全体を基準にします。ただし、販売期間そのものが2週間未満であれば、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とは扱いにくくなります。

そのため、「過去8週間のうち4週間以上販売すればよい」と単純には判断できません。販売休止期間や価格変更の履歴、通常の販売状態にあったかなども含めて確認する必要があります。

8週間ルールの実務チェック例

たとえば、ある商品を10,000円で販売した後、6,000円のセールを行うケースを考えます。

販売状況通常価格としての検討
直近8週間のうち6週間、10,000円で販売比較対照価格として使える可能性がある
直近8週間のうち1週間だけ10,000円で販売最近相当期間の価格とは説明しにくい
10,000円で4週間販売したが、最後の販売から1か月経過過去の販売価格としての表示方法を再検討
発売から10日しか経過していない通常価格としての比較は難しい
EC上で10,000円と表示したが、実際の購入はゼロ販売状態や実態を含めて慎重に確認がひ必要

「販売実績」は、必ずしも大量に売れたことだけを意味するものではありません。消費者庁の価格表示ガイドラインでは、「販売されていた」とは通常の販売活動において商品を販売していたことをいい、実際に消費者が購入した実績までは必要ないとされています。 

ただし、購入できない状態だった、在庫がなかった、クーポンによって実際には常に別価格だったなどの事情がある場合は、表示価格だけを見て通常価格と判断するのは危険です。

クーポンや会員価格がある場合

ECでは、商品ページ上は10,000円でも、常時3,000円引きのクーポンを配布していることがあります。

この場合、形式上は10,000円と表示されていても、多くの消費者が実際には7,000円で購入できる状態であれば、10,000円を通常価格として比較対象にできるかは慎重に検討する必要があります。

次の要素も確認してください。

  • クーポンの配布対象
  • 配布期間
  • 利用率
  • 会員登録の容易さ
  • 自動適用か、コード入力が必要か
  • 他の割引との併用
  • 実際の購入単価

広告制作担当者が見るべきなのは、管理画面上の定価だけではありません。消費者が実際にどの価格で購入していたかという取引実態です。

8週間ルールは暗記ではなく資料確認に使う

「8週間ルールを満たしています」と口頭で確認するだけでは、公開後の説明資料として十分でない場合があります。

少なくとも、次の資料を保存しておくとよいでしょう。

  • 商品別の販売価格履歴
  • 販売開始日と価格改定日
  • 注文データ
  • クーポンの配布履歴
  • セールの実施履歴
  • ECモール上の価格変更履歴
  • 広告掲載時のスクリーンショット
  • 価格表示を決定した社内記録

価格表示は、広告が公開された時点だけでなく、後日、なぜその価格を使ったのか説明できる状態にしておくことが重要です。

メーカー希望小売価格・定価・市価を比較対象にする場合の注意点

「当店通常価格」が使いにくい場合でも、メーカー希望小売価格や市価に置き換えれば問題がなくなるわけではありません。比較対照価格の種類ごとに、必要な根拠が異なります。

メーカー希望小売価格

メーカー希望小売価格を比較対象にする場合は、メーカーがその価格を小売業者向けに公表していることを確認します。

根拠資料としては、次のようなものが考えられます。

  • メーカーの公式カタログ
  • 公式サイトの商品情報
  • 小売業者向け価格表
  • 商品パッケージ
  • メーカーからの案内書面

注意したいのは、広告主自身が販売価格の目安として設定した金額を、メーカー希望小売価格と呼ぶケースです。

メーカーが自ら直営店だけで販売する商品や、販売事業者のプライベートブランド商品について、事業者が自ら設定した価格を「メーカー希望小売価格」として比較対照価格に用いることは適切ではありません。

希望小売価格は、小売業者の価格設定の参考として製造業者等が設定し、あらかじめ広く公表している価格かを確認します。 

「定価」という表示

メーカー資料上の正式な名称が「希望小売価格」である場合は、広告でも同じ名称を使い、比較対照価格の内容を正確に示します。 

実際には希望小売価格であるのに「定価」と表示すると、消費者に価格が固定されているような印象を与える可能性があります。

メーカー資料の正式な名称が「希望小売価格」であれば、広告でも同じ名称を使う方が、根拠との対応関係が明確です。

市価・他店価格

市価や他店価格を使う場合は、調査の客観性が必要です。

たとえば、「他店では平均12,000円」と表示するのであれば、次の事項を記録します。

  • 調査対象となる店舗やサイト
  • 調査した商品が同一か
  • 調査日
  • 税込み・送料込みなどの条件
  • 平均価格の計算方法
  • セール価格を含めたか
  • 在庫切れ店舗を含めたか

都合のよい高価格の店舗だけを抜き出したり、古い価格を使ったりすると、市場の実態を反映した比較とは言いにくくなります。

オープン価格の商品

メーカーが希望小売価格を設定していないオープン価格の商品について、広告主が独自に「メーカー希望小売価格」を作ることはできません。

オープン価格商品で価格差を示す場合は、自社の過去の販売価格や、適切に調査した市価など、別の根拠を検討します。

ここでの結論は、価格の名称よりも、その価格が何を意味し、どの資料で説明できるかが重要だということです。

セール広告・キャンペーン期間表示で注意すべき景品表示法のポイント

「期間限定」「今だけ」「本日限り」といった表示は、その期間を逃すと同じ条件では購入できないという印象を与えます。したがって、表示した期間と実際の販売運用を一致させる必要があります。

「期間限定」は本当にその期間だけか

たとえば、「7月31日まで50%OFF」と表示した後、8月1日から同じ価格で「好評につき延長」とする場合を考えます。

キャンペーンの延長が直ちに違反になるとは限りませんが、延長理由や回数だけで一律には判断できません。当初の計画、終了後の価格、過去の延長状況を含め、期間限定という表示と実際の運用が一致しているかを確認します。 

一方で、毎月同じ表示を更新している、終了日を過ぎると自動的に翌月末へ変更される、ユーザーごとに常に残り時間がリセットされるといった運用では、期間限定性の実態が疑われます。

キャンペーン延長が問題になりやすいケース

次のような運用は、消費者に「今購入しなければ損をする」と思わせながら、実際にはいつでも同条件で購入できる状態になりやすいため注意が必要です。

  • 毎月「今月末まで」を繰り返す
  • 終了直後に同内容のキャンペーンを開始する
  • 「本日限り」と毎日表示する
  • カウントダウンタイマーがアクセスのたびにリセットされる
  • 延長の判断をセール開始前から予定している
  • 終了後も価格を変更しない
  • 別名称に変えて同じ割引を継続する

セール名を変更しても、対象商品、価格、条件が同じであれば、実質的に継続したキャンペーンと評価される可能性があります。

延長する場合に確認したいこと

キャンペーンを延長する事情が生じた場合は、次の事項を記録しておきます。

  1. 当初のキャンペーン計画
  2. 当初の終了日
  3. 延長を決定した日
  4. 延長理由
  5. 延長後の終了日
  6. 延長を告知した媒体
  7. 過去の延長実績
  8. 終了後の販売価格

「好評につき延長」と表示する場合は、好評だったという説明に事実上の根拠があるかを確認します。あわせて、当初から延長を予定していなかったか、同じキャンペーンを常態化させていないかも確認します。 

短い広告でも条件を落とさない

SNS広告やバナーでは表示スペースが限られています。

そのため、メイン画像には「50%OFF」とだけ記載し、遷移先のLPで条件を説明する設計も見られます。

しかし、広告クリエイティブだけで強い有利性を認識させる場合、クリック後に条件を示せば常に十分とは限りません。

少なくとも次の条件は、価格訴求の近くで認識できるようにします。

  • 初回限定
  • 定期購入
  • 対象者限定
  • 対象商品限定
  • 割引上限
  • セール期間
  • クーポン適用条件
  • 送料の有無

景品規制の基礎は「景品表示法の景品規制とは?懸賞・抽選・キャンペーン・プレゼント企画の基礎を解説」をご覧ください。

割引率・割引額を表示するときの計算と表現

割引率や割引額は、比較対照価格が適切であることを前提として成立します。計算が合っていても、計算元の価格に根拠がなければ、表示全体の問題は解消しません。

割引率の基本計算

割引率は、一般的に次の式で計算します。

割引率=(比較対照価格-販売価格)÷比較対照価格×100

たとえば、通常価格10,000円の商品を6,000円で販売する場合、割引率は40%です。そのため、「40%OFF」または「4,000円引き」と表示できます。

ただし、計算が正しくても、比較の基準となる10,000円に販売実態などの根拠がなければ、割引表示として問題になるおそれがあります。

「最大」「約」「実質」の使い方

「最大80%OFF」と表示する場合、80%OFFになる商品がごく一部しかなく、広告全体から多くの商品が大幅割引になるように見えると、実態とのずれが生じます。

少なくとも、次の事項を明確にします。

  • 最大割引率が適用される対象
  • 対象商品の範囲
  • 対象商品数
  • 割引率の分布
  • 適用条件

「実質無料」も同様です。

ポイント還元、キャッシュバック、複数回購入後の特典などを含めて実質無料とする場合は、消費者が一度支払う金額、還元条件、還元時期、利用制限を明確に表示します。

セット価格の割引表示

「単品合計15,000円相当が、セット価格9,800円」と表示する場合は、各商品が実際に単品で販売され、その合計額が15,000円になることを確認します。

セット専用品や非売品に便宜上の価格を付けて合計し、大幅に割り引かれているように見せる表示は、実際よりも有利な価格だと誤認させるおそれがあります。

比較の基準となる単品価格に、販売実態や合理的な根拠があることが重要です。

LP・EC・SNS広告で確認すべき媒体別ポイント

価格表示の基本的な考え方は媒体によって変わりません。ただし、表示面積、画面遷移、更新頻度が異なるため、媒体ごとに誤認が生じやすいポイントがあります。

LP|条件説明の位置に注意

LPでは、ファーストビューの強い価格訴求と、ページ下部の条件説明が離れやすくなります。

確認事項は次のとおりです。

  • ファーストビューで定期購入条件が分かるか
  • 通常価格の根拠があるか
  • 2回目以降の価格が明瞭か
  • 最低購入回数が分かるか
  • 申込ボタン付近にも条件があるか
  • ページ内で価格表記が統一されているか

EC商品ページ|プラットフォーム独自の割引率も計算を

ECでは、システムが自動で「○%OFF」や取り消し線価格を表示することがあります。

広告担当者が意図していなくても、比較対照価格として表示される以上、元価格の根拠を確認しなければなりません。

また、モール独自のクーポン、店舗クーポン、会員価格、ポイント還元が重なる場合は、どの価格を基準に割引率が計算されているかを確認します。

SNS広告・ディスプレイ広告|限られたスペースで購入条件を表示

SNS広告やディスプレイ広告は表示スペースが限られるため、購入条件が省略されやすい媒体です。

たとえば「980円」と表示する場合、定期購入の初回価格であれば、「初回」「定期購入」などの主要条件を価格の近くに示します。

広告だけを見た段階で、単品を980円で購入できると誤解されない表示にすることが重要です。

メール・LINE|誤送信の対策が重要

メールやLINEは、配信後に内容を修正できない場合があります。

そのため、配信前にキャンペーン終了日、曜日、価格、クーポンコードなどを確認します。

対象者によって利用条件が異なる場合は、対象外のユーザーに誤って配信されないよう、配信リストや設定も確認することが重要です。

なお、広告表現については「薬機法ライティング®とは?|薬機法対応と訴求力を両立する広告表現の考え方」で解説しています。

価格表示の根拠資料を社内でどう管理するか

価格表示のリスクを下げるには、広告文言のチェックだけでなく、根拠資料を制作工程に組み込むことが効果的です。

制作開始前に確認する

よくある失敗は、LPやバナーが完成してから「通常価格の販売履歴がありません」と判明することです。

この場合、単に通常価格を削除するだけでは、ファーストビュー、割引率、キャンペーン名、広告文、導線全体を変更することになります。

根拠資料チェックシートを作る

案件ごとに、次の項目を一覧化します。

項目記入内容
商品名・プラン名比較対象が同一か確認できる名称
現在価格実際の支払価格
比較対照価格通常価格、希望小売価格など
根拠資料販売履歴、メーカー資料、調査資料
販売期間開始日、終了日、合計期間
最終販売日最後に比較対照価格で販売した日
割引率計算式と結果
キャンペーン期間開始日、終了日
適用条件初回、定期、会員など
確認担当者広告主、制作、法務等
保存先社内フォルダや案件管理ツール

チェックリスト化は、担当者の経験だけに依存しない運用をつくるうえで有効です。

LP・EC・広告制作向け価格表示チェックリスト

公開前には、少なくとも以下を確認してください。

比較対照価格

  • 通常価格に実際の販売していた実績がある
  • 過去の販売期間と最終販売日を確認した
  • 比較対象が同一の商品・サービスである
  • メーカー希望小売価格の公表資料がある
  • 市価や他社価格の調査記録がある
  • 将来価格には合理的で確実な販売計画がある

販売価格・割引率

  • 実際の支払価格と広告表示が一致している
  • 割引率の計算が正しい
  • 税込み・税抜きが統一されている
  • 送料、手数料を含むか明確である
  • 「最大」「実質」の条件が明確である
  • セット商品の単品価格に実態がある

キャンペーン期間

  • 開始日と終了日が決まっている
  • 終了後の価格が決まっている
  • 自動延長を前提にしていない
  • 延長時の承認フローがある
  • 過去のキャンペーン履歴を確認した
  • カウントダウン表示が実態と一致している

条件表示

  • 初回限定であることが価格の近くにある
  • 定期購入条件が明瞭である
  • 2回目以降の価格が分かる
  • 最低購入回数と総額が分かる
  • 対象者・対象商品・対象地域が分かる
  • 小さな注釈だけに重要条件を任せていない

よくあるご質問(FAQ)

二重価格表示とは何ですか?

二重価格表示とは、実際の販売価格と、それより高い通常価格、メーカー希望小売価格、市価などを併記し、価格差を示す表示です。「通常価格10,000円のところ5,000円」のほか、「50%OFF」「5,000円引き」のように割引率や割引額を示す場合も、比較元となる価格の根拠を確認する必要があります。二重価格表示自体が禁止されているわけではなく、比較対照価格や条件が正確であることが重要です。

「通常価格9,800円のところ4,980円」は違法ですか?

表示だけで直ちに違法と決まるわけではありません。9,800円が同一の商品について最近相当期間にわたり実際に販売されていた価格か、4,980円が実際の支払価格か、セール期間や適用条件が正確かを確認します。販売実績のない価格を通常価格として使っている場合や、実際には常時4,980円で販売している場合は、有利誤認表示として問題になる可能性があります。

景品表示法の8週間ルールとは何ですか?

過去の販売価格を比較対照価格として使う際に、その価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえるかを判断するための考え方です。一般には、セール前8週間の過半の期間、かつ通算2週間以上販売されていたか、最後の販売日から2週間以上経過していないかなどを確認します。販売開始から8週間未満の場合は、販売期間の過半かつ2週間以上の販売実績が一つの目安になります。

新商品に通常価格と発売記念価格を表示できますか?

販売開始直後で通常価格による販売実績がない場合、その価格を過去の通常価格として比較することは難しくなります。将来の販売価格を比較対象にする方法も考えられますが、発売記念期間後に実際にその価格へ変更する合理的で確実な販売計画が必要です。単に割引を強く見せるために将来価格を設定することは避け、価格改定の社内決定や販売計画を記録しておく必要があります。

メーカー希望小売価格なら自由に比較できますか?

自由に使えるわけではありません。メーカーがカタログ、公式サイト、価格表などで小売業者向けに公表している希望小売価格であることを確認します。広告主が独自に設定した価格や、オープン価格の商品に便宜上付けた価格をメーカー希望小売価格として表示することは適切ではありません。また、古いカタログの価格を使う場合は、現在も有効な価格か確認してください。

セール期間を延長すると景品表示法違反になりますか?

合理的な理由による一度の延長が、直ちに違反になるとは限りません。ただし、「本日限り」「今月末まで」と表示しながら、実際には毎回延長して同じ価格で販売している場合、期間限定の有利性に実態がないと判断される可能性があります。延長理由、決定日、延長後の終了日、終了後の価格を記録し、常態化していないか確認することが大切です。

カウントダウンタイマーは使えますか?

実際のキャンペーン終了時刻と連動し、終了後に条件が変更されるのであれば使用を検討できます。一方、アクセスのたびに残り時間がリセットされる、終了後も同じ価格が続く、ユーザーごとに架空の期限を表示するといった運用は、実在しない緊急性を生じさせる可能性があります。タイマーのシステム設定だけでなく、終了後の販売運用まで確認してください。

ECモールが自動表示する割引率も広告主が確認すべきですか?

確認が必要です。ECモールやカートシステムが自動的に取り消し線価格や割引率を表示しても、その元価格を登録したのは出店者や広告主である場合が多いためです。システムによる自動表示だから問題がないとは限りません。商品登録時の元価格、実際の販売履歴、クーポン適用後の価格、モール独自のセール条件を横断して確認します。

まとめ

二重価格表示やセール価格表示で問題になるのは、価格を安く見せることそのものではありません。

広告が消費者に伝えている「通常より安い」「この期間だけ有利」「他店よりお得」という印象を、販売履歴、メーカー資料、市場調査、キャンペーン計画などで説明できるかが判断の中心です。

実務では、次の3点を押さえてください。

  1. 比較対照価格が何を意味するのか明確にする
  2. 価格、販売期間、適用条件の根拠資料を保存する
  3. 広告原稿と実際の販売運用を一致させる

特に、8週間ルールや期間限定表示は、原稿だけを見ても確認できません。広告主、制作会社、EC担当者、法務・審査担当者が、販売データやキャンペーン履歴を共有する必要があります。

個別の表示は、商材、媒体、表示位置、注釈、購入条件、広告全体の印象によって評価が変わります。公開前に公的資料と社内ルールを確認し、判断が難しい価格表示については、弁護士や景品表示法・広告規制の専門家へ相談してください。

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参考情報・引用元

本記事は、以下の公的機関・公式資料・関連資料を参考に、広告実務の観点から整理しています。
個別の広告表現の適否は、商材、媒体、表示内容、根拠資料、広告全体の印象などにより判断が異なるため、必要に応じて公的資料や専門家への確認を行ってください。

免責事項

本記事は、法令、通知、ガイドラインその他の公的資料を、各資料の参照日時点で確認したうえで作成しています。
内容の正確性には十分配慮していますが、法令・行政運用の変更や個別事情により判断が異なる場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の広告表現の適法性を保証するものではありません。
実務への適用にあたっては、最新の公的資料をご確認のうえ、必要に応じて所管行政機関または専門家へご相談ください。誤り等が判明した場合は、確認のうえ訂正・更新します。

通常価格と販売価格を併記した二重価格表示のイメージ図

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